Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
ぴあ 総合TOP > 舞台『怖い絵』尾上松也インタビュー「固定観念にとらわれないダークヒーロー像を」

舞台『怖い絵』尾上松也インタビュー「固定観念にとらわれないダークヒーロー像を」

ステージ

インタビュー

ぴあ

舞台『怖い絵』出演の尾上松也 撮影:源 賀津己

続きを読む

フォトギャラリー(4件)

すべて見る

絵画の隠された意味を解説した美術書シリーズを手がけた中野京子が監修を務め、鈴木おさむの作・演出で舞台化する『怖い絵』。原作で紹介された作品がステージ上に登場し、劇中で描かれるドラマと連動する本作では、絵画に込められたメッセージを紐解きながら、とある事件の罪が暴かれていくという。その中心でミステリアスな存在感を発揮するのが、主演の尾上松也だ。投資家にして絵画コレクター、世の中の悪に罰を与える復讐執行人を演じる稽古前の想いに耳を傾けた。

「怖い絵」コレクションに向き合った時のオタクぶりに注目

──この作品に何を期待し、どんなモチベーションで出演を決められたのでしょうか?

鈴木おさむさんの手がける作品、という点に期待しました。ラジオでご一緒させていただきましてから、ずっと「何かご一緒にできたら」とお話していましたので叶って嬉しいです。

──松也さんから見た、鈴木おさむ作品の魅力って?

どんな作品にも、いい意味でオカルト感がありますよね。世界観が個性的だな、と。この『怖い絵』もまだ途中段階の台本ではありますが、拝読した限りでは僕だったらまったく考えもつかないようなところにセリフやお芝居が飛んでいくようなところがいくつもありまして。その発想力が、おさむさんが放つ唯一無二の魅力なのではないでしょうか。

──松也さん演じる絵田光という人物も、ひと筋縄ではいかないキャラクターですね。

怖い意味を持つ絵画を集めるのが好きな、お金持ちの投資家ですね。その「怖い絵」に隠された謎を解き明かしながら、依頼者の復讐を手伝うダークヒーローのような存在です。彼がどうして怖い絵をコレクションして、復讐を手伝っているのか。きっと理由はあるのですが……劇中でどう描かれるのか、実はまだ僕自身もよくわかってはいないんです。ですが手元にある台本から察するに、投資家・絵画コレクター・復讐執行人と3つも“顔”を持っている人物って……変ですよね(苦笑)。

──3つ揃うと癖がすごそうですね(笑)。

そういう意味では僕もスニーカーやキャンドルを集めていることもあって、コレクターの気持ち……ものすごくわかります。普段の喋り方から一転して、コレクションの話になると声がワントーン上がる気持ち悪さを自覚しているので(苦笑)。きっと僕が演じる絵田光もオタクでしょうから、収集している“怖い絵”に向き合った時の変化が自然に出てしまうようなリアリティを出せたらいいですね。

──『怖い絵』フライヤーのイメージから、シリアスな主人公なのかしら……と思いきや、オタク全開でコミカルな方向へ振るのでしょうか? ドラマ『ミステリと言う勿れ』『まったり!赤胴鈴之助』などでお見かけする、最近の松也さんみたいに。

“ダークヒーロー”というと、クールな人物像が思い浮かぶかもしれませんが、台本を読む限りでは、そうした固定観念にとらわれることのないキャラクターのような気がしました。おさむさんのイメージするダークヒーローの形に近づけたら、と思います。

描かれた「背景」を踏まえると、絵画やアート鑑賞に新たな発見が

──途中までお読みになった台本の感想をお願いします。

とにかく、僕の演じる人物がたくさんの絵を紹介しているんですよ……セリフ量も圧倒的に多くて。「怖い絵」が描かれた背景を説明しながら事件の真相に迫るような推理を展開するので、お客さまも印象に残る絵画をたくさんご覧になれるかと思いますよ。

──松也さんご自身は日ごろ、絵画とどのように向き合っていらっしゃるんでしょうか? お休みに美術館へ行くようなタイプではなく、『怖い絵』という美術書があることも舞台のオファーをいただいてから初めて知りました。家に絵画は飾ってありますが友人の作品が多く、気に入っている特定のアーティストがいるわけではないんですよね。

──中野京子さんが手がけた原作の『怖い絵』は読まれました?

劇中とリンクする「怖い絵」の説明を拝読しました。それまでいまいち絵画の鑑賞方法がよくわからなかったのですが、その作品にどんなストーリーがあるのか、どういういきさつがあって描かれた作品なのか、「背景」を踏まえて観るだけで新たな発見があって、アートにおもしろさ・興味深さを感じることができました。

──原作の中で松也さんの印象に残った「怖い絵」をひとつご紹介いただけませんか?

僕が大きなインパクトを得たのは、≪切り裂きジャックの寝室≫という作品です。19世紀の英ロンドンに現れた連続殺人犯として知られる切り裂きジャックの部屋を、ウォルター・シッカートという画家が描いたのですが……どうにも鳥肌が立つような、不気味な絵画なんですよ。

──どんな「背景」がある作品なんですか?

シッカートは切り裂きジャックが住んでいたとされる部屋にわざわざ引っ越して絵を描くほど、事件にとても執着していたそうです。のちに親族が「シッカートこそ切り裂きジャックだった」と発表する。そしてジャックから送られて来た手紙とシッカートのDNAを鑑定したところ、一致した……と。いろいろな説があって確定ではないのですが、もし本当だとしたら恐ろしいですよね。もしシッカートが犯人ではなかったにせよ、連続殺人に関わっていたことを鑑賞者に想像させるような不穏でミステリアスな感じが絵画から漂っていて。

──作品の背景を知って鑑賞すると怖さ倍増ですね。ちなみに≪切り裂きジャックの寝室≫は劇中に登場するんでしょうか?

登場します。『怖い絵』シリーズでは代表的な作品みたいですよ。こういうところに着目して、エンタメミステリーに仕上げようとするおさむさんの発想力も……面白いですよね。楽しいこと・面白いことを常に探り出そうとして、ジャンルを問わずいろいろな物事に目を向けていらっしゃるところが尊敬できますし、「ご一緒させていただいたら何が生まれるんだろう?」と近くで見ていたい感覚になります。

──鈴木おさむさんのもと、今回は初共演の比嘉愛未さん・佐藤寛太さん・崎山つばささん・寺脇康文さんのキャスト5人と少人数で濃密にひとつの作品をつくっていくことになると思います。松也さんは座長として、どういったカンパニーにしようと考えていらっしゃいますか?

どんな作品でも、僕が主演をさせていただく時は「スタッフ・キャストが楽しいと思える現場」を最優先に心がけるようにしていますね。役を務め上げること以外に、座長には現場の雰囲気を決める責任がついて回る。僕の場合はいつも基本的にふざけて、ピエロに徹するのですが……そういう雰囲気をお好みじゃない方がいらっしゃったら、臨機応変に立ち居振る舞いを変えます(苦笑)。とにかく、作品がよくなるようチーム一丸になること。その意識を持っていただけるような現場づくりをしたいですね。



取材・文:岡山 朋代 撮影:源 賀津己



舞台『怖い絵』

■日程・会場
・東京公演
3月4日(金)~3月21日(月・祝) よみうり大手町ホール
・大阪公演
3月24日(木)~3月27日(日) COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール

■チケット情報:https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2189022

フォトギャラリー(4件)

すべて見る