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劇中の名曲・ヒット曲はどうやって選ばれた? 監督が語る『SING/シング:ネクストステージ』

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『SING/シング:ネクストステージ』 (C)2021 Universal Studios. All Rights Reserved.

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大ヒットアニメーション映画『SING/シング』に続く最新作『SING/シング:ネクストステージ』が18日(金)から公開になる。本作は前作から5年の歳月を経て完成したが、脚本と監督を務めたガース・ジェニングスは、前作以上に時間と手間をかけ、世界中の観客から愛されたキャラクターたちの“次なるステージ”を描くことに全力を注いだようだ。

ジェニングス監督は、『銀河ヒッチハイク・ガイド』『リトル・ランボーズ』などの実写映画を手がけてきた英国の映画監督だが、『ミニオン』シリーズや『ペット』などメガヒット作を連発するイルミネーションを率いるクリス・メレダンドリからラブコールを受けて、アニメーション映画を手がけることになった。それが 2016年製作の『SING/シング』だ。

劇場主のコアラ、バスター・ムーンは劇場の再起をかけてオーディションを開催し、そこには音楽の才能はあるのにトラブルを抱えた様々なメンバーが集まった。恥ずかしがり屋のゾウの少女ミーナ、ヤマアラシのパンクロッカー・アッシュ、夫と子たちを愛するブタのロジータ、歌うことが大好きなゴリラのジョニー……彼らはそれぞれが問題を抱えながら歌うことで道を切り拓き、潰れるかと思われたバスターの劇場も再建された。

「よく考えてみれば、前作の物語の結末でやっとキャラクターたちは劇場に集まって初めて歌ったわけです。言い換えれば、前作では彼らの“第一歩”を描くことしかできなかった」とジェニングス監督は振り返る。そこで監督とスタッフは再集結し「前作の物語の自然な延長上にどんな物語があるのか?」を掲げて、創作を開始した。

「今回の映画をつくる上では、彼らが前作の結末の後、どこに行くのか? 彼らはどこまでやれるのか? を見届けることが良いのではないかと考えたわけです。彼らの夢や願いは、彼らをどこまで運ぶのだろうか? そうなった時に彼らは一緒にいるのか? それともはなればなれになるのか? そこから考え始めました。だから制作の初期段階から、今回の映画の姿がハッキリと見えていたわけではありません。でも彼らが自分たちの力を試すようなストーリーになることはハッキリとわかっていました」

歌うことで自分の進むべき道を見つけ出した仲間たちは『SING/シング:ネクストステージ』でさらに前へと進む。地元で人気者になったバスターと仲間たちは、エンターテインメントの中心地レッドショア・シティにあるクリスタル・タワー劇場での契約をとりつける。夢にまで見た大舞台を前にバスターと仲間たちは準備を始めるが、彼らが契約した内容には“15年間、姿を消している伝説のロック歌手をキャストに迎える”という条件があった。刻一刻と迫る初日、次から次へと起こるトラブル、そして居場所さえ検討もつかない伝説の歌手クレイ・キャロウェイの行方……バスターと仲間たちの新たな物語が始まる。

最新作ではエンタメの本拠地のような巨大都市が舞台で、劇中には巨大なビルやステージ、ミュージカルセットが次々に登場し、個性豊かなキャラクターが画面いっぱいに動き回る。ひとつのカットの中で様々な動きやギャグ、踊りが描かれ、劇中のどこかワンカットを抜き出して観ただけでも楽しめるが、それらがつながってシーンになった時にはちゃんとひとつの流れやリズムがある。ジェニングス監督が一番時間をかけたのが、この部分だ。

「実写映画であれば俳優とリハーサルをしたり、カメラを用いて試行錯誤ができますが、アニメーションでは画コンテと編集でそれを行なっていくしかありません。でも、この映画の編集を担当してくれたグレゴリー・パーラーは天才ですし、画コンテを担当する5人のチームも天才なんですよ! 僕たちはまず“この場面がどのようなリズムであるべきか?”を探すことに一番時間を使います。そこで描かれるキャラクターと物語が非常にシンプルなものであったとしても、そのキャラクターがどのような状態から、どのような過程を経て、そこにたどり着くのか? そのカットはどこから始まって、どこで終わって次のカットに行くべきなのか? ”これだ!”と思えるものが見つかるまで時間がかかるんです。

そのシーンが描かれる際のリズムを見つけ出すこと。これが映画制作の中で最も時間と労力を投じる部分です。正しいリズムを見つけて、次のカットにつなげる。そこがこの映画で最もがんばった部分でしょうね」

音楽があることで、感情表現を大きく飛躍させることができる

アッシュの声を演じたスカーレット・ヨハンソンとガース・ジェニングス監督

本シリーズのもうひとつの主役ともいうべき“音楽”も、キャラクターの状態・感情・リズムを最優先にした上で選曲が行われたという。本作もU2、プリンス、エルトン・ジョン、ザ・ウィークエンドなどの名曲が次々に登場するが、これらの楽曲はすべて「そのシーンを観た時に感じるものを、その楽曲は伝えることができるか?」という点で選出されたという。

「すべての楽曲は、ストーリーとキャラクターから始まって、映画のためのものでなければならないと思っています。ですから、その曲の知名度については実はまったく考えていないんです。候補の中には何億回と聴かれた曲もあれば、あまり知られていない曲もある。でも作品に残るかどうかの基準は、そのシーンを観た時に感じるものを、その楽曲は伝えることができるか? この一点のみです。すべてはキャラクターとそこで表現される感情が最優先されます」

キャラクターの感情、表現、動き、ストーリーを語るリズムを徹底的に追求し、そこにマッチする楽曲を厳選する。手間と労力のかかるプロセスを経て映画は完成した。タイトルも"シング”で、様々な音楽が流れるため、有名曲が本作の主役のように思えるかもしれないが、主役は登場するキャラクターのストーリーと感情だ。その上でジェニングス監督は「映画と音楽が切り離せないものだと観客に感じてもらえたらうれしい」と笑みを見せる。

「もし仮にこの映画に音楽がなかったとしても、キャラクターと物語は成立しています。この映画は歌だけでストーリーを語る作品ではないし、日常の中で急に歌い出すミュージカルでもなくて、キャラクターが生活の中で実際に歌を歌うことで音楽が登場するわけですから。

でも、この映画のストーリー、キャラクター、楽曲は密接につながっていてほしいですし、ストーリーのリズムと楽曲の選択には時間と手間をかけました。

この物語は音楽がなくても成立するのかもしれないですが、音楽があることで感情表現を大きく飛躍させることができます。たとえば劇中で、あるふたりのキャラクターの家の前の階段に腰掛けて歌う場面が出てきます。ここにひとつの曲があることで、ふたりのキャラクターの強いつながりを表現することができるわけです。この映画にとって大事なのは、音楽が“ストーリーを語る美しい言語”になっていることだと思っています」

楽しくて、華やかで、笑えて、時にはその迷いや不安が胸に迫ってくる……『SING/シング:ネクストステージ』のキャラクターは前作に続いて観客から愛されることになるだろう。そして選び抜かれた音楽は、キャラクター同士の、そして時にキャラクターと観客の関係を深く、強くするはずだ。

コアラのバスターと仲間たちの晴れの大舞台=ネクストステージが明日、ついに開幕する。

『SING/シング:ネクストステージ』
3月18日(金)全国ロードショー
(C)2021 Universal Studios. All Rights Reserved.

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