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中島健人のエネルギーの元は?「辛いことや失敗したことをチャンスに変えて」

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愛する人がそばにいる。シンプルなことのように思えるのに、それは奇跡のようなこと――。

カメラマン見習いの青年とファストフォード症候群を患った女性との恋愛の軌跡を描く『桜のような僕の恋人』が3月24日よりNetflixにて全世界同時独占配信される。
宇山佳佑の小説を原作に、深川栄洋監督がメガホンをとった本作。ファストフォード症候群を患う有明美咲を松本穂香が、そんな美咲に恋をする主人公の朝倉晴人を中島健人が演じる。

表現者として新しい一歩を踏み出せた

「自分が書店で見つけた小説が、世界配信というプラットフォームで映像化されるなんて思いもしなかった」という中島は、全てを懸ける思いで挑んだ、と力強く語った。

最初に本を手に取ったとき、実写化されるならいつか自分がこの役を思ったのだろうか。問いかけに、「そうですね、美咲役で」とにこやかに冗談を口にしたあと、イメージはしていた、と話した。

「もし実写化していたらどういう絵になるんだろう、という目線で小説を読んでいました。ただ、自分がイメージする晴人と、監督が作る晴人が少し違ったのが意外でしたね。僕はさわやかなイメージだったんですけど、監督が作る晴人は弱気な感じだった。その考え方のギャップがワクワクしました」

本読みでそのギャップはすぐ埋められた。監督からも厳しい演技指導も受けたことで、表現者として学ぶことが多く、演じ方でも変化があったという。

「たとえば、涙のシーンってものすごく難しいんですよね。単純に涙の雫が落ちればいいというわけじゃない。本当にこの人はこの場面で思わず泣いちゃったんだな、と観ている人に伝わるのが一番美しい涙のシーンであり、それを追求するのは本当に難しいんですよ。いかに自然に立ち回るか、というのはこの現場で学んだ気がします。
この作品が、自分の表現者としての背中を後押ししてくれているのは間違いない。監督がものすごく厳しかったので、こだわりのある繊細な表現はテイク数も重ねましたし、洗練されていった部分も大きいんだと思います」

今回は監督の発案で、晴人が美咲と会っていないシーンでは、台本でも美咲の部分は空欄だったという。それもお芝居に「最高の影響」を与えていた。

「僕の場合は、余計な情報を演じる前に入れたくないんです。共演される方の情報もあまり入れないようにしています。役としてのイメージと、その人のイメージを直結させたいので、何か媒介しちゃうと、結構にじんじゃうんですよね。
空欄については、監督が決めてくださったスタイルだったので、本当にいらない情報だったんだろうな、と思いますし、僕が知らない美咲さんの時間軸はもちろん知らないほうがいい。そんなに丁寧に作られた台本ってなかなかないと思います。
作品作り、環境づくりに注してくださったのもそうですし、監督や、プロデューサーの方々にも感謝しかないです。自分は何も考えずにゼロの状態で挑むことができたので」

晴人との共通点は「恋愛でエネルギーが出るところ」

キラキラとした現代の王子様を体現しているような役から、少し隙のある、うつむきがちな影のある青年役まで、これまでさまざまな人物を演じてきている中島。今回の晴人に自身が共感する部分はあったのだろうか。

「まずは美咲さんとの出会いで、晴人が人間としての成長ができたというところですね。恋が晴人の背中を後押ししたという点に関しては、自分もきっと恋愛をするとものすごくエネルギーが出るタイプなので。
美咲さんという太陽みたいな、エネルギッシュな雰囲気が出ている人と出会えば舞い上がって、もっと仕事をがんばろうとか、自分の人生を豊かにしよう、というふうにきっと自分も思うんだろうな」

少し離れた視点で見てみるとどうだろう。病を患っている恋人。もし中島が晴人だったら、美咲だったらどうするだろうか。

「晴人だったら、傷つけないようにそっと寄り添う、かな。
美咲さんの立場だったら……恋愛している相手がいるのであれば、素直に病のことを言うかもしれません。ある程度、けじめをつけないといけないかもしれないし、話すことで献身的に支えてくれるのかもしれないし。
ああいう病を患ったら、自暴自棄になっちゃうかもしれないですね。だから、周りの方に常日頃から感謝していく時間が増えるんじゃないかな、と思います」

撮影期間は3カ月。その間、アイドルの中島健人と、役者・中島健人を行き来することになる。晴人としての気持ちが途切れる危険性もあった。が、中島は「この作品に関しては本当に途切れさせたくなかった」と真剣なまなざしで語った。

「それぐらい思いが強かったというか。切り替えちゃいけないと思ってたんですよね。
役者の先輩はやっぱり切り替えが大事って言うんですけど、そのロジックがこの作品についてはちょっと通用しないというか。だから、常日頃から春の曲を聴いたりしていてました。
撮影中の春のSEASONに流れていたAwesome City Clubさんの『勿忘』もそうですし……そののちの僕の主演ドラマのオープニング曲になったんですよね、Awesome City Clubさんの曲が。
あと、Mr.Childrenさんもよく聴いていました。そうしたら、そのミスチルさんがこの映画の主題歌になるっていう。ちょっと運命を感じますよね。 そういう音楽だったりでできるだけ晴人を自分のそばから離さないような努力をしていましたね」

中島健人にとって、エネルギーになっていること

中島にとって「大きく成長できた仕事だ」という本作。仕事で成長するために心がけていることは「いかに現場を楽しむか」ということ。その楽しみ方を見つけるのも難しいように感じるが……。

「辛いこと、失敗したことがあったら、それはチャンスだと思ったほうがいいかも。そういうエピソードって、いつか自分が輝いたときに話せるし、それが笑い話になって誰かの糧になるっていうところまでたどり着くと楽になるんですよね。失敗すれば必ずいいことがこれからあるって考えると楽観的になる。 そういう気持ちを持つにはちゃんと自分の時間を大切にすることも必要なんですよね。常に追われているとやっぱり余裕がないので、物事をピンチとして捉えてしまう。その時間の確保の仕方が難しいですけどね。それぞれのスタイルがあると思いますし」

取材中もずっと笑顔で、時には冗談も交えて周りを和ませる。美咲からはエネギッシュな雰囲気が出ていると話していたが、中島自身からもエネルギーが発せられているように思う。逆に、中島がエネルギーをもらっていることはなんなのだろうか。

「ジャニーズウェブで『Ken Tea Time』というブログをやっているんですけど、今年で毎日更新5年目ぐらいなんですよ。それを読んでくださっている皆様のために頑張れるな、と思うし、ファンの皆さんももちろん、あとは家族かな。いつも応援してくれているので、その家族のために、未来を作っていこう、というのはいつも思いますね。

モチベーション面で言うと友人の存在は大きいです。20代前半は価値観の範囲が広いから、周りにいろんな人がいたんですけど、28歳になった今は自分と価値観が近い人が自然と集まってきたんです。そういう友人たちに刺激を与えたいからもっと仕事をがんばろう、とか、ちょっと今までにない感覚は出てきたかも。 穂香さんや去年、ドラマで共演した人もそうですし、いいご縁が増えたな、と思います」

変化と成長を重ねて挑んだ『桜のような僕の恋人』。Netflixで全世界配信となる。

「ジャニーズとして世界配信の映画オリジナルに出演するのはたぶん初めてかな。自分がその先陣を切らせていただいたのはとても光栄です。
それに2019年あたりからアカデミー賞に配信作品のノミネートが出そろっていて、映画界の構図が変わってきているんですけど、だからこそ今、配信映画をさらに映画業界に対してしっかりとメッセージ性を強く持って発信していって、業界自体が変容していったら、より多様性のあるエンターテイメント構図になってくるんじゃないかな、と。

日本人としても、世界配信というプラットフォームを通してこの作品を背負って世界に飛び出していけるのは、自分にとって新たな未来を踏み出すチャンスだと思っているし、それがこれから出てくるジャニーズの後輩、映画にチャレンジしていくたくさんの俳優さんの希望になったらいいな、と思います」

「演じる人間、表現者としての基盤をこの作品で作ろうという気持ちでした」という中島。物語としてのパワーだけではなく、中島健人が作り上げた「朝倉晴人」の魂の声が伝わってくる。全てをかけるつもりで挑んだという作品では、これまでとはまた異なる中島健人が観られるはずだ。

『桜のような僕の恋人』はNetflixで2022年3月24日から配信。

取材・文/ふくだりょうこ

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