Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
ぴあ 総合TOP > 「人生は生きるに値する」 劇団四季新作オリジナルミュージカル『バケモノの子』にかける熱い思い【稽古場取材会レポート】

「人生は生きるに値する」 劇団四季新作オリジナルミュージカル『バケモノの子』にかける熱い思い【稽古場取材会レポート】

ステージ

ニュース

ぴあ

劇団四季オリジナルミュージカル『バケモノの子』稽古風景 撮影:阿部章仁

続きを読む

フォトギャラリー(13件)

すべて見る

劇団四季の新作オリジナルミュージカル『バケモノの子』が4月30日(土)より開幕する。その稽古場取材会が3月22日に開催され、劇中の一部シーンを披露するとともに、出演キャストの田中彰孝、伊藤潤一郎、脚本・歌詞の高橋知伽江、演出の青木豪、劇団四季の吉田智誉樹代表取締役社長がインタビューに応えた。

原作の『バケモノの子』は2015年に公開された、細田守監督によるアニメーション映画。2015年邦画興行収入ランキング1位に輝いた大ヒット映画で、細田監督率いる「スタジオ地図」の代表作のひとつだ。人間たちが暮らす街・渋谷と、その裏側のバケモノたちの住む異世界・渋天街を舞台に、母を亡くした9歳の少年九太が強さを求めてバケモノの熊徹に弟子入りし、絆を深めていく物語。劇団四季が「国産ミュージカルとして最大級の長期公演に挑む」と意気込む話題作だ。

公開稽古では作品冒頭、渋天街を治める宗師が神への転生を宣言し、次期宗師候補の熊徹と猪王山が対立するシーンからスタート。騒然とした混乱の中にも新時代への予感があわさり、心が沸き立つオープニングだ。熊徹役の伊藤潤一郎のパワフルな低い声に対し、同じく低音ながら猪王山役の芝清道の声は思慮深さのある渋い声。ふたりの対比も面白い。

続けて、熊徹の弟子になった九太がバケモノたちから修行の一環として料理を習う場面では楽しいダンスも満載で、ミュージカルならではの魅力をアピール。さらに熊徹と九太が修行を通し絆を深めるシーンは、観る者の感情に訴えかけるバラードナンバーを聴かせ、バラエティに富んだ作品の表情をキャスト陣が見せた。

熊徹役は、これまでの経験を活かして丁寧に

左から、熊徹役Wキャストの伊藤潤一郎・田中彰孝、高橋知伽江(脚本・歌詞)、青木豪(演出)、吉田智誉樹 劇団四季代表取締役社長 撮影:阿部章仁

合同インタビューでは様々な質問が飛び出したが、ミュージカル版だからこその本作の魅力については、脚本・歌詞の高橋知伽江が「生さぬ親子の絆という背骨のしっかりしたストーリーなので、脚本に対しての不安はなかった。ただ劇団四季がミュージカル化することを考えると、殺陣のシーンは映画にもたくさんありますが、ミュージカルとしての重要な要素のひとつであるダンスを意識して取り入れ、エンターテインメント性をもっと出したいと考えました」と話し、演出の青木豪が「映画では例えば押し黙る表情をアップにすることでその人の感情の高まりを伝えるところを、ミュージカルでは歌で表現する。それを僕が演出としてどう視覚化するかという点と、演劇的にお客さんの想像力に訴えかけて広げていくにはどうするかという点を主軸に作っています」と話すなど、作品の構造について言及。また青木は、美術プランについて問われ「知伽江さんからいただいた台本には、熊徹の家と猪王山邸、さらにそのふたつが同居しているシーンがあったり、渋谷と渋天街が同居するシーンがあったので、“同居している”ということを見せるのに〈二重盆〉はどうだろうと美術の石原敬さんのアイディアがあり、僕も面白そうだなと思って採用した」と具体的に解説もした。

役の魅力を問われた熊徹役候補のふたりは、田中彰孝が「熊徹は『ライオンキング』のムファサ(父王)のような役。僕は『ライオンキング』のシンバ役が長かったので、こういう役に憧れが強かった。年齢的にムファサや熊徹の方に近くなり、憧れから入ったものが、だんだん自分の身体に染みついてきている状態。稽古序盤は憧れを演じようと作りすぎてしまっていたが、それをそぎ落とすことを心がけて稽古をしています」と語り、伊藤潤一郎は「熊徹というのは、この作品を見た人みんなが好きになってしまうようなキャラクター。それを演じられるワクワク感がいまだにある。僕は四季では父親役や乱暴者だけれど気のいいアンちゃんといったキャラクターを多く演じてきた。そういう経験が今回のチャンスに繋がったのだと思うが、吉田社長には「アドバンテージを取った試合はそこで油断してしまうことが多いので、丁寧にやっていけるといいですね」と言っていただいた。稽古場では大胆に、でも家に帰ったら冷静に「それでいいのか」と自問しながら丁寧に作っていきたい」とそれぞれ熱く意気込んだ。

「生きていていいんだよ」という作品になれば

2018年の『恋におちたシェイクスピア』に続き、劇団四季で2度目の演出をする青木は「僕も小学校時代から四季を観ていた。自分が演劇において育ててもらったところに、今呼んでもらっている状況」と四季での創作を喜び、「この作品にはたくさんのテーマがあるが、渋天街のみんなで子どもを育てていく、人を育てるのはひとりではないというのもテーマのひとつだと思う。僕にとって芝居や映画は、それを見ることで「ああ、明日も頑張ろう」と活力をくれる、“生かされる場”だった。四季の理念である“人生は生きるに値する”ということを、演劇が僕に教えてくれました。そんな、「生きていていいんだよ」「ここに来れば大丈夫」という作品になればいいなと思います」と描かれるテーマについて語り、作品をアピール。和やかな雰囲気の中にもキャスト、クリエイター陣の熱い思いがひしひしと伝わる取材会だった。

公演は4月30日(土)、JR東日本四季劇場[秋]にて開幕する。

取材・文:平野祥恵

フォトギャラリー(13件)

すべて見る