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坂東玉三郎、“次代の阿古屋”中村梅枝・中村児太郎に期待

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坂東玉三郎(撮影:岡本隆史 / 提供:松竹株式会社)

「十二月大歌舞伎」が12月2日から26日まで東京・歌舞伎座で上演される。これに先駆け、出演者の坂東玉三郎が去る11月8日に取材に応じた。

「十二月大歌舞伎」昼の部では、尾上松也ら出演の「幸助餅(こうすけもち)」、中村壱太郎が7役を担う「於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)お染の七役」を上演。夜の部はAプロとBプロが用意されており、Aプロでは玉三郎が遊君阿古屋を勤める「壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)阿古屋」、尾上松緑、市川中車出演による「あんまと泥棒」、中村梅枝と中村児太郎が藤の精を勤める「二人藤娘」が披露され、一方のBプロには、梅枝と児太郎が阿古屋に挑む「壇浦兜軍記 阿古屋」、松緑と中車の「あんまと泥棒」、そして玉三郎による「傾城雪吉原」がラインナップされた。

琴、三味線、胡弓の三曲を阿古屋自らが演奏することで知られる「阿古屋」は、通称「琴責め」と言われ、演じられる俳優が極めて少ない義太夫狂言。六代目中村歌右衛門より教えを受け、1997年から阿古屋を勤めてきた玉三郎は、梅枝と児太郎が同役に初挑戦することとなった経緯について、「私がやらせていただくことになったとき、成駒屋さん(六代目歌右衛門)は体調を崩されていて、やっとお話が伺えたという状況だったんです。自分で演じてみせてあげられて、かつ(演技を)見てあげられるときに受け取ってもらいたいと思って、今回上演することを決めました。歌舞伎座でこの大役を勤めることは、梅枝さんと児太郎さんにとって大変なことだと思うんです。なので、AプロとBプロに分けて3人で分担してやっていくことにしました」と説明する。

夏頃から稽古を始め、取材前日にも稽古をしたことを明かし、玉三郎は「お二人とも特に胡弓がお上手。年齢的には梅枝さんが歳上なのですが、楽器を前にすると梅枝さんは若い娘方という印象で、児太郎さんは落ち着いた雰囲気があります」と回答。また、「阿古屋を演じるうえで大事なのは、2つのことが同時にできるかどうか。阿古屋の役になりきった状態で三曲をしっかりと奏でられるか、ということですね。それから、“源平に関わってしまった傾城の心”を想像することも大切。想像で役を作り、お客様に伝えるのが俳優の仕事ですから」と自身の経験を踏まえて語ると共に、「かつての私もそうでしたが、はじめの稽古ではできていても、ほかの俳優さんが稽古に参加したり、稽古場から劇場に移ったり、周りの状況が変わると急にうまくできなくなってしまうことがあるんです。ですが、それでもやらないと先に進めないんです」と若い2人に発破をかける。さらに阿古屋という大役を継承していくことにも言及し、「稽古をすれば阿古屋を演じられるチャンスがあると思ってもらうことが大事。そうしないと幅が広がらなくなってしまいます。阿古屋に限らず、どの役もそうですが、誰々でなければ勤められないという固定観念はないほうがいいのかもしれません」と見解を述べた。

Bプロで岩永左衛門を勤めることについて記者から質問が飛ぶと、玉三郎は「皆様、驚かれたことと思います」と微笑みながら、「『蜘蛛の拍子舞』や『日本振袖始』で後シテを経験しましたので、今回はそこまで大変ではないと思います。人形振りについては、文楽の吉田玉男さんにお話を伺おうと考えております」とコメント。その後も玉三郎は、以前「お染の七役」を勤めた中村七之助や、今回同作に挑戦する壱太郎、そして梅枝や児太郎ら、次代の歌舞伎界を担う女方への期待を語り、終始穏やかな表情で取材に応じた。

「十二月大歌舞伎」は12月2日から26日まで歌舞伎座にて。チケット発売は本日11月12日にスタート。

「十二月大歌舞伎」

2018年12月2日(日)~26日(水)
東京都 歌舞伎座

昼の部

「幸助餅」「於染久松色読販 お染の七役」

夜の部

Aプロ:「壇浦兜軍記 阿古屋」「あんまと泥棒」「二人藤娘」
Bプロ:「壇浦兜軍記 阿古屋」「あんまと泥棒」「傾城雪吉原」

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