こまつ座「貧乏物語」開幕、栗山民也・保坂知寿らが上演に向けた思い語る
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こまつ座 第141回公演「貧乏物語」より。(撮影:宮川舞子)
こまつ座 第141回公演「貧乏物語」が昨日4月5日に東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAで開幕した。
これは、井上ひさしの戯曲「貧乏物語」を栗山民也の演出で立ち上げるもの。本作は、日本のマルクス経済学の先駆者であり、大正時代のベストセラー「貧乏物語」の作者である河上肇の評伝劇だ。劇中では、治安維持法違反の容疑で逮捕され、服役中の肇が不在の中、河上家で暮らす女たちの物語が描かれる。肇の妻・ひで役に保坂知寿、肇の娘・ヨシ役に安藤聖、女中の加藤初江役に山崎薫、河上家に居候する元お手伝いの田中美代役と竹内早苗役にそれぞれ枝元萌と松熊つる松、そして隣家の新劇女優・金澤クニ役に那須凜がキャスティングされた。
初日を経て、栗山は「今夜、無事に初日の幕を開けることができた事に感謝と言いたいのですが、皆が集まる広場である劇場にミサイルが撃ち込まれたという十数日前の事実が、芝居を見ている間、頭の中を激しく巡っていました。一人では何もできないことの苛立ちから、私たちにできる芸術の力で、この忌まわしく冷酷でめちゃくちゃな地獄に向かって、人間の声で繰り返し語り続けていかなければならないと思います。この『貧乏物語』の発端は、戦争にあります。これは第1次世界大戦と第2次世界大戦の狭間に起こる物語です」とコメントした。
保坂は「それぞれが困難に立ち向かいながらも信念を貫く女性達の生き様は、この時代に於いても、きっと皆様の元気と勇気に繋がると思います。まだまだコロナ禍ではありますが、皆様をお迎えすべく、万全の対策で、河上宅でお待ちしています」、安藤は「『貧乏物語』の稽古に励む間に世界がガラリと変わってしまいました。私にはとても衝撃的で、大変な悲しみでした。『貧乏物語』にはかつての日本が描かれています。表現、自由、日常、そして生きるとは、どういうことなのか。戦争を知らない私が稽古中に考え体験したことを、劇場でお客様と共有することが、井上先生が書かれたヨシの台詞にある、“人のつとめ”なのではないか、と思っています」とそれぞれ思いを述べる。
那須は「今の時代も昔も、豊かになっているようで変わらない、心の貧しさを感じることが多くあります。このお芝居を見て、本当の豊かさとは、本当の人との関係とはなんなのかを感じていただけたら嬉しいです」と語った。上演時間は約2時間で、公演は4月24日まで。
栗山民也コメント
井上さんの「貧乏物語」が書かれたのが24年前、その物語の中を流れる一方的な情報規制やフェイクの垂れ流しなどの背景が、今のとても信じられない不条理な世界情勢と驚くほど重なって見えます。
今夜、無事に初日の幕を開けることができた事に感謝と言いたいのですが、皆が集まる広場である劇場にミサイルが撃ち込まれたという十数日前の事実が、芝居を見ている間、頭の中を激しく巡っていました。一人では何もできないことの苛立ちから、私たちにできる芸術の力で、この忌まわしく冷酷でめちゃくちゃな地獄に向かって、人間の声で繰り返し語り続けていかなければならないと思います。
この「貧乏物語」の発端は、戦争にあります。これは第1次世界大戦と第2次世界大戦の狭間に起こる物語です。
保坂知寿コメント
こまつ座公演「貧乏物語」が幕を開けました。
それぞれが困難に立ち向かいながらも信念を貫く女性達の生き様は、この時代に於いても、きっと皆様の元気と勇気に繋がると思います。
まだまだコロナ禍ではありますが、皆様をお迎えすべく、万全の対策で、河上宅でお待ちしています。
安藤聖コメント
「貧乏物語」の稽古に励む間に世界がガラリと変わってしまいました。私にはとても衝撃的で、大変な悲しみでした。「貧乏物語」にはかつての日本が描かれています。表現、自由、日常、そして生きるとは、どういうことなのか。戦争を知らない私が稽古中に考え体験したことを、劇場でお客様と共有することが、井上先生が書かれたヨシの台詞にある、“人のつとめ”なのではないか、と思っています。「貧乏物語」に携わる全ての皆様に、私の沢山の気持ちを込めて演じさせていただきます。
那須凜コメント
貧困や抑圧の時代を力強く生きる女性たちのお話が開幕致しました。
今の時代も昔も、豊かになっているようで変わらない、心の貧しさを感じることが多くあります。
このお芝居を見て、本当の豊かさとは、本当の人との関係とはなんなのかを感じていただけたら嬉しいです。
こまつ座 第141回公演「貧乏物語」
2022年4月5日(火)~24日(日)
東京都 紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
作:井上ひさし
演出:栗山民也
出演:保坂知寿、安藤聖、山崎薫、枝元萌、松熊つる松、那須凜
※山崎薫の「崎」は立つ崎(たつさき)が正式表記。