「戦争は女の顔をしていない」が原案のロシア映画「戦争と女の顔」7月公開
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「戦争と女の顔」
2019年に第72回カンヌ国際映画祭ある視点部門で監督賞、国際批評家連盟賞を受賞したロシア映画「Beanpole(英題)」が「戦争と女の顔」の邦題で公開決定。7月15日より東京・新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で順次封切られる。
スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチが第2次世界大戦に従軍した500人以上の女性に聞き取りを行った証言集「戦争は女の顔をしていない」を原案とした本作。主人公は終戦直後の1945年、荒廃したレニングラード(現:サンクトペテルブルク)の病院で心的外傷を抱えながら働く元兵士の看護師イーヤだ。ある日発作のせいで面倒をみていた子供を死なせてしまったイーヤのもとに、子供の母親であるマーシャが戦地から帰還する。イーヤの戦友であるマーシャもまた戦争のトラウマを抱えていた。心身ともに疲弊した2人は、自分たちの生活を再建するための闘いに意味と希望を見出そうとしていく。
新人のヴィクトリア・ミロシニチェンコがイーヤ、同じく新人のヴァシリサ・ペレリギナがマーシャ役で主演。アレクサンドル・ソクーロフのもとで映画を学んだカンテミール・バラーゴフが監督、「ラブレス」「裁かれるは善人のみ」を手がけたウクライナ出身のアレクサンドル・ロドニャンスキーがプロデューサーを務めた。アカデミー賞では国際長編映画賞のロシア代表に選出。IndieWireによる世界中の批評家が選ぶ2020年のベスト映画では6位、ベスト国際映画では2位に入るなど高く評価された1作だ。
現在も続くロシアによるウクライナ侵攻を受け、ロシアのカバルダ・バルカル共和国出身のバラーゴフは国外へ脱出。息子がウクライナの大統領ウォロディミル・ゼレンスキーの経済顧問をしているロドニャンスキーが手がけた作品は、ロシア政府によって国内での放映が禁止されているという。このたびの日本公開に際し、2人から反戦のメッセージが届いた。
バラーゴフは「戦争と、それを招いたロシア政府の政治的決断に強く反対している。だから私はロシアを去らなければならないと感じた。この戦争は、ただ普通に人生を送りたい何百万という人々にとっての悲劇だ。彼らの多くにとっては、この戦争を乗り越えること、これからの人生を送ることが難しくなるかもしれない。ましてや、不可能になるかもしれない。これは『Beanpole』で描かれていることと一緒だ。戦争より悪は存在しない」と語っている。ロドニャンスキーのコメントは下記に掲載。
アレクサンドル・ロドニャンスキー コメント
私は今までロシア大統領選で投票をしたことがないが(ウクライナのパスポートを持っているので)、耐え難いほど恥じている。そして、とてつもなく深い悲しみにいる。戦争に言い訳などはない。どんな主張があったとしても。私はよく覚えている。ソ連が私たちにアフガニスタン戦争の絶対的な必要性を説明したときのことを。それが悲劇的な間違いだったと認めるまで、10年の月日を費やし、1万5000人のソ連兵士と100万人近くのアフガニスタン人の命を犠牲にしたことも。今日、ベトナム、イラク、アフガニスタン戦争など自国の戦争について言い訳できるアメリカ人はほとんどいない。そして、またしてもこの戦争は痛ましい過ちだ。国家の経済が崩壊し、私たちの国が世界的な孤立の中停滞し、かつてないテクノロジーの格差が深まるから、という理由ではなく、この過ちにおける恥は消え去ることがないからだ。これは私たちの子供や孫の代にも残る。私たちは黙ってはいられない。戦争に「NO」を。
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