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世界遺産・国立西洋美術館が約1年半ぶりにリニューアル・オープン ル・コルビジュエが構想した開館当初に近い姿に

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国立西洋美術館 外観

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2020年10月より休館していた国立西洋美術館が、4月2日(土)より約1年半ぶりに再開館した。開館当時の姿に近づけ、設計者であるル・コルビュジエの思い描いた美術館像がイメージしやすくなっている。

1959年に完成した国立西洋美術館は、20世紀建築や都市計画に多大な影響を与えたル・コルビュジエの設計。彼が提唱した「近代建築の5つの要点」を表現した建築は、ほかの16の建築とあわせて「ル・コルビュジエの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献 ―」として2016年に世界遺産に登録された。

ちなみに、近代建築5つの要点とは、ピロティ、屋上庭園、自由な間取り、水平に連続する窓、自由な立面(ファザード)のこと。現在ではどの要点もとりたてて新鮮さはないが、コルビュジエが子供のころの建物には存在しない、斬新なものであった。

アントワーヌ・ブールデル《弓をひくヘラクレス》1909年

今回のリニューアルにおいて一番の注目ポイントは前庭。本館と外の道路の境界線上に配置されていた植栽を最小限にとどめ、柵を透過性のあるものに変更、道路と広場に繋がりが感じられるようになり、大きな開放感が生まれた。

オーギュスト・ロダンの《考える人》や《カレーの市民》などの野外彫刻は、当初置かれていた配置に近づけた。その結果、建物の正面が見えるようになり、また、あみだくじのような床面の目地がしっかりと目に飛び込んでくるようになった。この目地の寸法はル・コルビュジエが人間の身長を基準にして編み出した尺度「モデュロール」に基づいた寸法で作られている。

ちなみに、この床の目地は、ル・コルビュジエの弟子であり、国立西洋美術館新館の設計を担当した前川國男が手掛けた、国立西洋美術館のすぐ前にある東京文化会館の窓のサッシの割付と幅や位置が呼応しているという。また、床面には来館者を誘導するためのグレーのラインがリニューアルに合わせて復活している。

オーギュスト・ロダン《考える人(拡大作)》 1881〜82年(原型)、1902年〜03年(拡大)、1926年(鋳造)
国立西洋美術館 外観 床面の長方形は「モデュロール」に基づいた寸法で作られている
床面には、鑑賞者を誘導するためのラインも引かれている

リニューアルオープンにあたり、これまで有料だった本館中央の吹き抜け空間「19世紀ホール」は、当面の間無料で開放される。建物を支える柱と梁、ゆるやかなスロープなど、ル・コルビュジエの作品のエッセンスが詰まった場所だ。三角形の天窓からは、優しい光が降り注いでいる。

19世紀ホール
19世紀ホール天井
常設展 展示風景

19世紀ホールのスロープを登ると常設展となる。国立西洋美術館は、第二次世界大戦中にフランスに接収されていた実業家・松方幸次郎のコレクションの日本返還にともなって誕生した。常設展では、この松方コレクションのほか、新収蔵作品やピックアップ作品を交えた展示となっている。

右:ピエール=オーギュスト・ルノワール《横たわる浴女》1906年 左:モネ《睡蓮、柳の反映》 1916年

モネの《睡蓮、柳の反映》は、画面の上半分が大きく損傷を受けている作品。第二次世界大戦中の疎開時に強いダメージを受け、あまりの破損の大きさにフランス政府の返還リストに含まれず、長い間忘れられていた存在だった。2016年にフランス政府から松方家に返還され、2017年に国立西洋美術館に寄贈されている。痛ましい佇まいであるものの、松方コレクションの存在や、この美術館の設立理由などさまざまなことを気づかせてくれる。

リニューアル後の企画展の第一弾は、6月4日(土)からはじまる『自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで』であるが、それまでの間、常設展スペースで小企画展『調和に向かって:ル・コルビュジエ芸術の第二次マシン・エイジー大成建設コレクションより』が、版画素描展示室では『新収蔵版画コレクション展』が開催されている。

そのなかでも、『調和に向かって:ル・コルビュジエ芸術の第二次マシン・エイジー大成建設コレクションより』は、世界有数のコルビュジエのコレクションを所蔵する大成建設の寄託作品を中心に展示されており、画家としてのル・コルビュジエの側面を見ることができる貴重な機会だ。

ル・コルビュジエ《奇妙な鳥と牡牛》1957年
左:ル・コルビュジエ《静物》1953年  右:《牡牛XVⅢ》1959年

ル・コルビュジエのイメージにより近づいた国立西洋美術館、その姿をゆっくりと眺めておこう。

取材・文:浦島茂世

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