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美弥るりか、花乃まりあ、剣幸が母娘3代の物語をつむぐ 【Musical『The Parlor』インタビュー第2弾】

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左から、Musical『The Parlor』で共演する花乃まりあ、美弥るりか、剣幸  撮影:源賀津己

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演出家・小林香による新作オリジナルミュージカル『The Parlor』が2022年4月29日からよみうり大手町ホールほかで上演される。

ジェンダーギャップ指数が120位と発表された日本で、小林が「女性たちの物語を描きたい」と企画した本作。曽祖母の時代は談話室、祖母の時代は美容室、母の時代は喫茶室と、ある家族の女性たちが連綿と守り継いできた部屋「ザ・パーラー」を舞台にした、母娘3代の物語だ。

今回は、出演する美弥るりか、花乃まりあ、剣幸の3人にインタビュー。作品への思いをはじめ、宝塚歌劇団の思い出なども語ってもらった。

同じところで育ってきたからこそ

――まずは、完全新作のミュージカルに出演されるにあたっての意気込みを教えてください。

花乃まりあ(以下、花乃)  小林香さんとは一度お仕事させていただいたことがあり(2021年上演のオフ・ブロードウェイミュージカル『The Last 5 Years』)、とても学びの多い時間を過ごさせていただいたので、ぜひまたご一緒したいと思っていました。今回香さんが長年温めてこられたテーマを描いた作品に出させていただけることは、とても嬉しいなと思っています。また、このような素晴らしい先輩方とご一緒できると分かったとき、とても緊張したものの、お稽古が始まって間もないですが、リラックスさせていただいていています(笑)。家族の役を演じられることがすごく嬉しいなと思って、毎日ウキウキしながらお稽古しております!

Musical『The Parlor』メインビジュアル

美弥るりか(以下、美弥)  私も一度香さんとはご一緒していて(2020年『SHOW-ISMS』)。そのときは本当はやるはずだった作品が、コロナの影響でいろいろなことがあり、ぎゅっとダイジェスト版のような形で上演することになったんです。コロナ禍になってすぐでしたし、マスクをしながら演じたり、歌ったりするのが初めてでした。みんなが手探りの状態での稽古。感染対策として雑談をしたり、作品について深くセッションするような時間もなくて。舞台って、長い時間を皆さんと稽古で共有して、作品に対してセッションしたいし、お人柄に触れて、その方の人生やお考えを知って、もっと好きになって……そういうことが尊いと思っていたのですが、あのときはそういうことが何もできなかったんです。

そこから舞台のいろいろな常識が変わっていきながらも、一歩を踏み出していって、少しずつ光が見えてきた中で、新作をやる、しかも香さんがずっと描きたかった物語をやるというお話をいただきました。

美弥るりか 

脚本を読ませていただきましたが、自分自身のことともリンクしそうだし、誰もが持っている心の葛藤とかが織り込まれていて。宝塚を卒業して2年過ぎたぐらいですが、私自身もこの役に挑戦できたら、すごくいい経験になるだろうなと思いましたね。それから、何度もいろいろなところで言っていますが、私は剣さんの月組トップさん時代の大ファンで!私が剣さんと同じ板に立つ日が来るなんて、あの頃の自分に言ってあげたいと、毎日思っています。剣さんのお人柄は本当に優しく、神様みたい。私はその大きな心に甘えています。まだお稽古が始まったばかりですが、親子三世代のような今の日々をすごく幸せに思っています。とにかく嬉しいです。

剣幸(以下、剣) 同じところで育ってきたからこそ、親子、孫という関係性を一から構築しなくても、雰囲気が同じなのかな。香さんが稽古場で「3人並んでいたら家族みたいね」と言ってくださったのがすごく嬉しくて。香さんの作品には何回か出させていただいています。最初は私が50代のとき、70代のおばあさんの役だったのね。2度目は『Indigo Tomato』という作品で、その中でもおばあさん役をやって、今回もおばあさん役。年齢も追いついてきたので、今や回想シーンの方が大変です(笑)

新作を書くときに香さんは膨大な資料と時間を費やし、それを提供して状況を細かく説明してくださいます。そのなかで、普通に暮らしている人間たちの傷を描きながらも、そこから再生していく過程も織り込む。その温かさが大好きで、香さんが新作をやるならどんな役でも出させてほしいなと思っていました。こうやってかわいらしいみんなと家族としてやっていけることが、幸せで楽しいです。

宝塚歌劇団を離れ初めて共演する3人

――それぞれの印象を教えてください。

花乃  私は剣さんの現役時代の舞台を生で拝見したことは残念ながらないんですけど、勝手にご縁を感じているのは『ME AND MY GIRL』という作品で、私もサリー役をやらせていただいたことがあって。剣さんの当時の映像を何度も拝見していて、ビルとサリーはこのおふたり(1987年初演時月組トップコンビの剣幸とこだま愛)から生まれたんだと。ビルとサリーには特別な思い出があります。私の宝塚人生においても、一観客としても。ビルが全人類の男性で一番大好きというくらい。

実際に剣さんにお会いして、本当にビルみたいで、この世のものとは思えない温かさを感じるんです。お稽古場で初めて目が合ったときも、心がブルブルしちゃって。この包容力と温かさに、私も思い切って飛び込んでお芝居させていただきたいと思います。

花乃まりあ 

美弥さんは同時期に在団していたのでいつも舞台を拝見していました。ただ、全くお会いする機会がなかったので、こうしてご一緒させていただいているのは不思議な気持ちです。この美しさからなのか、浮世離れしたお役とてもが多かったじゃないですか。それでかなりミステリアスな印象を抱いていたんですが、お会いすると、本当に飾らないお人柄だなと思いました。全ての人をフラットにみてくださるんです、この大きな目で!

今回は、美弥さんが6歳のときのお母さん役でもあるので、一番可愛い美弥さんを近くで見ています。ミステリアスだった美弥さんの、とても人間らしいハートフルな部分も見れて、嬉しいなと思っています。

美弥  花乃ちゃんとは在団中はご縁がなかったんですが、とにかく可愛いことで有名だったんですよ!。舞台を拝見したら、サリーのような強い女性もでき、格好良さと可愛さを兼ね備えた子だなという印象でしたね。卒業後もひとりの表現者として、前に進んでいる感じが格好いいなと思っています。ご一緒できて嬉しいです。

剣さんについては、いくらでも語れますが、宝塚の在団中から、男役という垣根を越えて、人間を演じていらっしゃるところが魅力だと思っています。日々、本当に幸せです。

 宝塚の娘役は、女性が演じる男を相手にしなければならないから、確固たる娘役の型がないとやっていけないんですね。でもそれだけだと、娘役の枠から出られないこともあります。花乃ちゃんはやさしくて柔らかいお芝居が素敵で自然体。そして、温かさや可愛さもあって、稀有な人だなと思います。

美弥ちゃんは、彼女が現役のときから、宝塚の中では収まらないだろうなと思っていました。もちろん宝塚のスターさんなんだけど、それだけじゃない魅力があって、幅広くいろいろなことができる。「人間を演じよう」という度量の大きさは唯一無二だと思いますね。

こういう人たちと家族を演じられる楽しさを感じています。みんなベクトルが多分同じなんですよね。舞台の作り方にしても。みんなでお稽古していても同じ空気が流れていると思うし、一体感が持てるのは、このおふたりだからこそなのかなと思います。

Musical『The Parlor』出演者(上段左から、美弥るりか、花乃まりあ、剣幸、下段左から、植原卓也、舘形比呂一、北川理恵、坂元健児)

剣「(役柄は)ゴッドハンドの美容師です」

――みなさんそれぞれの役についてはどう考えていらっしゃいますか?どう演じていきたいですか?

花乃  私は今回、美弥さん演じる朱里と異父兄弟にあたる灯(あかり)という役と、剣さん演じる阿弥莉(あみり)の娘である千里という二役をやらせてもらいます。

灯さんは、やはり自分が生まれ育った環境に、あまり疑問とかを持たずに生きてきた人。過去にあったことも知らないーーそれは彼女の責任ではないけれどーーとても彼女なりにまっすぐ育ってきた人で、多分、井の中の蛙の部分がある。そんな彼女が一歩、パーラーに足を踏み入れたことで世界が広がっていくことが描かれています。千里さんは亡くなってしまっているという設定なんですけど、本の中では「ポカポカの陽射しみたいな人」と書かれています。

今は一生懸命役を作っている最中なので、たくさんのことをお話できないのですが、ふたりを演じ分けることが一番頑張らなくてはいけないことだと思います。その上で、千里さんと灯さんにも受け継がれていて、阿弥莉さんとも朱里さんにもつながっている“根っこ”の部分を大切に作っていけたらいいなと思っているところです。

美弥  私は円山朱里というゲームクリエイターの役です。彼女は、小さい頃に母を亡くし、その悲しみから目を背けるようにして、アメリカに旅立つ。そして、実家に帰ってきたことで、人と関わることを避けていたのに、どうしても人と関わることになってしまい、自分が目を背けていた問題点とも向き合うことになって......。彼女のなかでの人生の変化を出していきたいですね。私は今まで個性的で濃い役をいただくことが多くて(笑)個性的な役を演じるときのスイッチのようなものが自然と入ってしまう癖があるので、自分がもっとリラックスした状態で、朱里の人生を演じられるようにまずはなりたいなと思います。

剣幸

 実際には、私の演じる阿弥莉の母の代から4代続いているパーラーのお話です。その母親の時代というのは、男性は男性だけの社会で、女性はお手伝いさんの感覚だったと思います。そこで初めて談話室というものをつくって、人と語り合うというところから、パーラーの歴史が始まった。私の時代にはそれを美容室にした。カットで、その人の人生を少しでも変えて幸せにしてあげよう。そして、娘(千里)は喫茶室にした。でも、その娘は6歳の子どもを置いて、死んでしまう。そこから自分の人生がガラっと変わって、幼い朱里を育てるために、夢も忘れ、選択肢が無くなったと思い、そろそろパーラーを閉めようかというところから物語は始まります……で、ゴットハンドの美容師をさせていただいています(笑)

花乃  ハサミを回していらっしゃいますよね。

 回す必要ないんだけどね、拳銃をまわすようにできたらいいなと思って。

美弥  私もそれ見た!見逃してないですよ!

 もともと帽子を回したりするのが好きでね。

花乃・美弥  きゃー!ビルだ!(笑)

自分にとっての常識を見直すきっかけになれば

――楽曲についてはどのような印象をお持ちですか?

花乃 まだ数曲しかやっていないんですけど、懐かしさを感じるようなメロディの中に、ちょっと聞きなれないリズムや音が散りばめられているなと思って。受け継がれていくものと新しいものが交わっていく、この作品のテーマにあった曲だなと思っています。早く全曲のお稽古をしたいなと思っているところです。

美弥  温かさとお洒落さがすごく融合した曲だなと思いました。ただ、本当にリズムは難しくて、まだこなせるまでには時間がかかりそうです。でもきっと、それが初めて心と歌詞が一致した時は、みなさんの心にスッと入るような曲になるのではないでしょうか。まだ聞いていない曲があるので、楽しみです。

 ホントにお洒落だよね。日本人の方が日本語で分かりやすく書いた曲というわけではなく、今までに出会ったことのない音楽、という印象です。それが新しい風となって作品の中に入り込んでいくのではないかなと思っています。挑戦ですね。

――最後に、ここだけはみてほしい注目ポイントとメッセージをお願いします!

左から、花乃まりあ、美弥るりか、剣幸 

花乃 家族のつながりを演じることは私自身初めての経験で、きっと宝塚の先輩方とこういう関係性を演じることは2度とないだろうなと。そういった家族のつながりにも注目してほしいですし、何か考えるきっかけを作れたらいいなと思っております。楽しんで観ていただけたら嬉しいです。

美弥  大事件が起きるわけではないですが、だからこそそれをミュージカルで伝える面白さがあると思います。日々のみなさんの生活の中に散りばめられている感情がいろんなところにぽつりぽつりと現れてくるはず。自分にとっての常識や、自分が勝手に思っていた考え方などを見直すきっかけになったらいいな。じんわり心にしみこんでいくような温かいミュージカルにしていきたいと思いますので、ひとりでも多くの方にみんなで作り上げる作品を観ていただけたらなと思います。

 人生はどちらを取るかということで進んでいく。私ぐらいの年になると、選ぶことがなくなってきて、寂しいなと思うんですね。でも考え方によっては、どちらにいくかというのは、絶対自分で決められるもの。女性が前向きに、明るく元気になることと、絆がつながっていくことがテーマだと思います。作品を通じて、女性の勇気を感じていただけたらいいなと思います。



取材・文:五月女菜穂 撮影(メインビジュアル・キャスト組写真除く):源賀津己



★【Musical『The Parlor』インタビュー第1弾】主演の美弥るりかさんソロインタビュー記事はコチラ→https://lp.p.pia.jp/article/news/226029/index.html

Musical『The Parlor』チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2298761

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