堤真一×森田剛 ―本物の家族のように― 『みんな我が子』 -All My Sons-上演に向けて
ステージ
インタビュー
左から、森田剛 堤真一 撮影:源賀津己
続きを読むフォトギャラリー(5件)
すべて見るシアターコクーンの人気シリーズ「DISCOVER WORLD THEATRE」に、アーサー・ミラーの傑作戯曲『みんな我が子』が登場。演出には、同シリーズで『十二人の怒れる男』を手がけたリンゼイ・ポズナーが再登板する。舞台は第二次世界大戦後のアメリカ。ある平凡な一家に訪れた悲劇が描かれる。そこで父親ジョー・ケラー役の堤真一と、長男クリス役の森田剛に、本作に臨む思いを訊いた。
稽古場で演出家とリスペクトし合いながら
――本作はシアターコクーンが海外の才能と出会い、新たな視点で挑む演劇シリーズ「DISCOVER WORLD THEATRE」(以下DWT)の第12弾です。堤さんがDWTに参加されるのは5度目になりますが、本シリーズならではの魅力とは?
堤 僕がご一緒したおふたり(※ジョナサン・マンビィ、リンゼイ・ポズナー)は共に、イギリス人らしいリアリズムに徹した演出をされる方ですが、それぞれやっぱり違うんですよね。俳優としてものすごく勉強になりましたし、ひとつの作品のためにというか、もの作りの原点に立ち返ることが出来る。あとイギリス人と違って日本人の場合、演出家さんになかなか疑問をぶつけられない俳優もいるのですが、彼らは決して見落とさず、その都度「どうした?」と声をかけてくれるんです。日本人ならではの感覚で演出してくれていると思いますし、彼らにとってもこの企画がチャレンジだということがわかって。演出家と俳優が先生と生徒のような関係にならず、お互いリスペクトしながら進めていけるので、稽古がものすごく楽しいです。
――森田さんはV6解散後、初の舞台出演です。今後は俳優活動に重きを置いていかれると思いますが、中でも舞台とは森田さんの中でどう位置づけされているものなのでしょうか?
森田 やっぱり舞台は、勉強したいっていう気持ちが強いです。舞台でしか感じられないことがあると思いますし、単純に頑張らないと成立しないのが舞台。しかも今回は海外の演出家の方ということで、いろいろ勉強しながら、楽しめたらいいなと思っています。前回の『FORTUNE』では、演出のショーン・ホームズさんとたくさん話をした記憶があるので、今回もしっかり自分の意見を持って、早い段階でリンゼイさんに伝えていけるといいですね。また今回は堤さんを始め、とても個性豊かで、面白いキャストの方がそろっている。稽古場でお互いに表現したいこと、やりたいことを交換し合えたら、自然と勉強にもなって楽しめるのかなと思います。
本物の家族のようになんでも言い合いたい
――おふたりは今回が初共演でしょうか?
堤 「昔ドラマ(※02年の『ランチの女王』)では共演したことがあります。そのころの剛くんは、どっちかって言うと反抗期的な雰囲気を漂わせていて、まぁその役にはぴったりだったんですけど。あれからお互いに歳を取り、丸くなった今、どういう稽古になるのかがとにかく楽しみですね。
森田 堤さんとはドラマの共演以来ですが、なんかこうやってふざけたりするんですよね(笑)。でもその間も見抜かれている気がしますし、だからこそ嘘がつけないというか、堤さん自身、嘘のない方だと思っていて。改めて舞台での堤さんの役の捉え方、稽古の進め方を身近で感じられるのは、すごく贅沢なことだなと思います。
堤 今回は家族の物語ですけど、僕らも本当の家族のように、稽古中からなんでも言い合えるようになるといいよね。
森田 はい、僕もそう思います。
父親への思いが強い故に反動も大きい
――本作では、戦時下にとある工場を経営していた父親のジョー・ケラーを堤さんが、ジョーの息子で長男のクリスを森田さんが演じられます。
堤 正直僕はまったく共感出来ない人物です。ただこういうことって、今の世の中にもいっぱいあるんですよね。誰も責任を取らないし、なにも追及されない。それはものすごく恐ろしいことだなと。僕がこの人に唯一共感出来るのは、自らの罪は認めたということ。ずっと苛まれてきた部分はあったんだろうなと。ただ自分のやった行為とは別に、クリスや次男のラリーに対する愛情は間違いのないものだったと思います。
森田 クリスはすごく純粋な人だと思います。父への思い、母への思い、弟への思い、仲間への思い。それらは本当に真っすぐで、シンプルではあるんですけれども、そこを突き詰めた時に自分がなにを感じるのか、すごく興味がありますね。中でも男の子にとっては、父親の存在ってめちゃくちゃ大きいと思うんです。自分を見て欲しい、認めて欲しいって。ただそれ故に反動も大きかったのかなと思います。
――では最後に、本公演を楽しみにされている読者にメッセージをお願いします。
堤 家族というものをもう一度振り返るような、そんな作品になるかと思います。そこには必ずや心震わされるものがあると思いますし、さらには今社会でなにが起きているのか、気づかされるのではないかなと。そういったことからもなにか感じ取ってもらえたら嬉しいですね。
森田 こういう時代だからこそ、生きなきゃいけないとか、人とどう関わるかとか、シンプルながら大切なことがつまっている作品だと思います。そしてこの作品を通してどんな気づきがあるのか、自分自身とても楽しみです
取材・文:野上瑠美子 撮影:源賀津己
【堤】ヘアメイク:奥山信次(barrel) スタイリスト:中川原寛(CaNN)
【森田】ヘアメイク:TAKAI スタイリスト:吉本知嗣
衣裳協力:パンツ¥33,000(ユハ ☎︎03-6659-9915)
その他スタイリスト私物
『みんな我が子』-All My Sons-チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2298664
フォトギャラリー(5件)
すべて見る