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渋谷の一画を丸々借り切り! 渡辺謙&伊藤英明が『TOKYO VICE』ハリウッド式撮影の裏側を語る

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渡辺謙&伊藤英明

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『ヒート』『インサイダー』『アリ』など、ハリウッドの骨太な大作映画で知られるマイケル・マン監督が製作総指揮&監督(第1話)を務め、90年代東京のアンダーグラウンドをオール日本ロケで描いたドラマシリーズ『TOKYO VICE』が、いよいよ配信・放送ともにスタートとなった。いずれもハイクオリティなドラマ作りに定評のある日本のWOWOWと、ハリウッドのHBO Maxが手を組んだ日米共同制作の本作で、主演のアンセル・エルゴートと共演した渡辺謙と伊藤英明。“世界で最も撮影が難しい”とも言われる東京での撮影について、ふたりに語ってもらった。

コロナ禍での撮影には大きなプレッシャーが

――日米合作の本作ですが、日本オンリーの作品とは、どんな点で違いが?

伊藤 僕は初めての経験だったので謙さんに教わることばかりでした。

渡辺 結構好き放題やってたじゃない?(笑) 製作のプロセスはアメリカの作りです。ただ、違いは気にならなかった。僕らは現場に合わせていくだけなので大きな違和感はなかったですね。劇中の日本語に関しては、警察ややくざ、新聞社などの特殊な用語があるので、その点のアドバイスはさせていただきました。

伊藤 英語の台本にしても、日本語に翻訳されると生っぽくなくなるので、謙さんが訳のアイデアを出してくれて、とても助かりました。

渡辺謙

――1年半ほど前に東京・渋谷でのロケのニュースを耳にしましたが、コロナ禍での撮影は困難も多かったと思いますが、どうだったのでしょう?

渡辺 クランクインしたときは、まだマスク着用の必要もなく、PCR検査もされなかったコロナ禍の最初の時期でした。

伊藤 その後、半年くらい撮影が止まったんですよね。

渡辺 そうそう、それで再開してからが大変だったね。僕らを含めて、撮影の中枢にいる人間は3日に一度はPCR検査を受けていた。幸い、陽性者の数はそんなに多くなく、撮影自体が止まることはなかったけれど。俳優組合の規定で、感染者が出ると撮影を止めざるをえないし、僕らの代わりもいないので感染すると本当に撮影がストップしてしまう。なので撮影期間は人とも会わず、撮影のことだけに集中して生活をしていました。

伊藤 僕もそうですね。現場に入ると、ゾーンに分けられていて、接触してもよいスタッフと接触してはいけないスタッフが厳しく分けられていました。撮影前には抗原検査とPCR検査を受け、現場に入るときもさらに検査を受ける。その結果が出る瞬間がいちばん怖かったですね。謙さんが仰ったように、メインのキャストに感染者が出たらすべてがストップしてしまいますから。アメリカから来たスタッフや共演者にも迷惑をかけますからね。

渡辺 日本の作品の倍以上、撮影現場に人がいるからね。そういう意味ではプレッシャーがありました。

伊藤 とにかく規模が大きいですよね。渋谷でのロケにしても、日本では考えられないですけれど、ホテル街の一区画を丸々借り切って、控え室を作ったり。エキストラの方の数もそこはしっかり集め、なおかつ感染症対策も厳格に行なわれる。その規模の大きさに、圧倒されました。“謙さんはこういうところで闘ってるのか!”という驚きもありましたよ。

アンセル・エルゴートを実家に連れていって交流!

――アンセル・エルゴートとの共演は、いかがでしたか?

伊藤 僕の演じた刑事は、アンセルが扮する新聞記者ジェイクの要望に応じて、日本のアンダーグランドを教えていくのですが、アンセル自身も日本の文化をとても知りたがっていたんです。特に日本の日常生活の部分ですね。ですからプライベートでも、一緒にいろんなところに出かけました。休みの日には公園で一緒にバスケしたりしましたが、積極的に日本人と交流し、それを役に反映させる。役に臨む覚悟のようなものを感じました。

『TOKYO VICE』

渡辺 すごく真面目で勉強熱心だよね。マイケル(・マン監督)がリアリティを求めたことはアンセルにとっても刺激になったんだと思う。そういえば、正月休みが2週間くらいあって、アンセルに「どうするの?」と聞いたら、そのまま滞在して日本について学びたいと言っていて。行くところがあるのか尋ねたら“岐阜”という答えが返ってきて、“なんだ、英明の実家か”と(笑)。僕は長野だし、岐阜からはそんなに遠くないので、その後に寄ってもらいました。岐阜には何日いたの?

伊藤 僕のところには5日間くらいでした。

渡辺 その後、うちに2泊したのかな。僕の演じた刑事は英明の役に比べて、ジェイクとは距離がある。あまり仲良くなりすぎると、撮影の際に顔はシリアスでも尻尾が振れてしまうことがあるので、そこは上手に距離を保ちながら、楽しい休暇を過ごしました。

伊藤 アンセルには、とにかく日本のお正月を体験させてあげたかったんですよね。岐阜では、刀の鍛冶屋に案内したり、神社やお城を見に行きました。そのとき、僕は模擬刀をプレゼントしたんですけど、それを謙さんの家に忘れていったんですよね(笑)。

渡辺 休暇が終わって、車で東京に戻ったんですよ。アンセルに渡すための刀も持っていたから、“これで警官に止められたら銃刀法違反で捕まるよなあ、勘弁してくれよ”と(笑)。

伊藤 コロナどころじゃなかったんですね(笑)。

伊藤英明

渡辺 そういえば、熊谷のロケのときだったかな、3日間の。アンセルがホテルではなく、旅館に泊まりたいと言い出したんだよね。それも勉強熱心さの表われなんたけど、ここら辺にはちょうどいい旅館がないんですよ。で、アンセルが泊まると決めた旅館を検索してみたら、“うーん、ここ、大丈夫かなあ……”という旅館で(笑)。次の日会ったら“寒かった!”と言ってた(笑)。でも、とにかく役に挑む心意気は感じました。

――おふたりの役柄と、ジェイクとの距離感の違いについて、もう少し詳しく教えてください。どのようにして、ジェイクと対峙するご自身の役を作っていったのですか?

『TOKYO VICE』

渡辺 ジェイクとの距離感を考え、そこから逆算して役を作っていった部分はあります。というのも、僕が演じる刑事の手の内が見えてこない方が面白いんですよ。この刑事はなにを考え、どういう捜査をするのか?ということを観ている人に簡単に明かさない。ミステリアスというとかっこよく聞こえちゃうけど、それが物語の推進力になるし、そのためには手の内をすでに明かしているジェイクとの距離感は保たなければならないと考えました。

伊藤 僕の演じた刑事とジェイクは、お互いに利用し合おうとする関係性なんです。互いに手の内を見せ合っている部分が大きいので、カメラが回っていないときも、アンセルとは緊密であろうと思いました。アンセルも長期にわたって日本にいるわけだし、ホームシックにもなりますから、そういうことを感じさせないようにしましたね。そういう意味では、プライベートでは手の内を見せ過ぎたかもしれません(苦笑)。

エキストラの衣装も隅々までチェック!エネルギーあふれるマイケル・マン監督

――マイケル・マン監督の演出については、どんな印象を受けましたか?

渡辺 90年代の日本を描くということに関して、とにかく執念深かったね。スタッフも当時の衣装を血眼になって探す。

伊藤 とてもこだわる監督ですね。エキストラさんが200人くらいいても、ひとりひとりの衣装をチェックして、ダメとなったらやり直すんですよ。

渡辺 エネルギッシュだよね。誰も止められない(笑)。

伊藤 ユニオンの規定で8時間働いたら休めると聞いてたんですよ。僕は向こうのユニオンに入ってないけれど、アンセルが入っているから、彼とのシーンが多いし休めるかな……と思ってたけれど、3日間ぶっ続けで撮影に駆り出されたこともありました(笑)。監督は何度もテイクを重ねるんですけれど、照明のタイミングなど、ちゃんとリンクしていないとすぐにダメが出る。マイケルのエネルギーについていくのは大変だったけれど、貴重な体験だったし、楽しかった。

『TOKYO VICE』撮影中のマイケル・マン

――おふたりともミステリアスな刑事役ですが、どんなドラマをたどるのでしょう?

渡辺 どうなるんでしょうねえ(笑)。ひとつ言えるのは、このドラマはとにかく構成力が凄い。8話通して観て、“えっ!”という驚きがある。メインのキャラクターには、それぞれ背負っているものがあるんですよ。8話観てひとつの作品になる、そういう感覚でとらえてもらった方がいいと思います。

伊藤 監督もマイケル以外に3人いますし、それぞれの色もエピソードによって違ってきますよね。

渡辺 そう。それでも1本筋が通っている。ドラマの構成としても面白いし、ラストは“えーっ!?”と、なるんじゃないかなあ。脚本を読んで、自分がそう思ったから(笑)。そういう部分は本当に巧いですよね。

伊藤 個人的には、『ラストサムライ』を観たときのような衝撃はあると思います。アメリカの撮影システムで、日本を贅沢に映し出せる作品というのは、そうそうありませんから、僕も観るのを楽しみにしています。

取材・文:相馬学
撮影:源賀津己
ヘアメイク:筒井智美(渡辺謙)、佐藤光栄(伊藤英明)
スタイリスト:馬場順子(渡辺謙)、根岸豪(伊藤英明)

ハリウッド共同制作オリジナルドラマ『TOKYO VICE』
WOWOWにて毎週日曜午後10時より独占放送中 WOWOWオンデマンドにて配信中


(c)HBO Max / James Lisle HBO Max / Eros Hoagland

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