ポーラ美術館、過去最大規模のコレクション展『モネからリヒターへ ― 新収蔵作品を中心に』 20年にわたる美術館活動の集大成的展覧会
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左:ゲルハルト・リヒター《抽象絵画(649-2)》1987年 右:クロード・モネ《睡蓮の池》1899年 いずれもポーラ美術館蔵
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すべて見るポーラ美術館では、9月6日(火)まで会期中無休で『ポーラ美術館開館20周年記念展 モネからリヒターへ ― 新収蔵作品を中心に』が開催されている。クロード・モネやルノワールなどの印象派から、ゲルハルト・リヒターやアニッシュ・カプーア、杉本博司などの現代美術作品まで、ポーラ美術館の幅広いコレクションを諦観できる展覧会だ。
ポーラ美術館は2002年9月、神奈川県箱根町に開館。開館当初はポーラ創業家二代目・鈴木常司が収集した印象派絵画や19世紀後半から20世紀前半の絵画、化粧道具のコレクションなどを核として精力的に展覧会を行ってきた。近年は美術館の敷地内に野外彫刻や森の遊歩道、現代美術ギャラリーの設置や、20世紀以降の美術作品の収集を強化するなど、その活動を拡充させている。
同展はこれまでのコレクションや、新収蔵した作品を「光」をテーマに紹介する展覧会。印象派の画家たちから、現在進行系で活躍する作家まで、さまざまな形での「光」の表現を目にすることができる。
二部構成となる同展の第一部は、これまでのコレクションと、それを補強する形で加わった新収蔵作品を紹介。開館以来人気のルノワールやモネ、マティスなどの19世紀末から20世紀初頭のフランス絵画のほか、関根正二や松本竣介、岸田劉生などの日本人作家の作品も展示されている。
展覧会はルノワールの《レースの帽子の少女》の展示からスタートする。同作品はポーラ美術館の開館時から人気の作品だ。
マティスの《オリーブの木のある散歩道》は、マティスがシニャックの誘いでサン・トロペに滞在し、色彩と造形のヒントを得たあとに制作した新収蔵作品。この作品を描いた後、マティスはサロン・ドートンヌで作品を発表し、それがフォーヴィズムの発端となった。


第二部は、通常はコレクション展示を行う4つの展示室を使い、近代と現代を結ぶ新収蔵作品を展示する。白髪一雄をはじめとした戦後日本の前衛美術や、アニッシュ・カプーア、ドナルド・ジャッドら現代の作家まで網羅した構成となっている。

そして、この展覧会の見どころ、モネとリヒターを組みわせた展示室へ。ゲルハルト・リヒター《抽象絵画(649-2)》は、リヒターの代表的なシリーズ「抽象絵画」の代表作の一つ。巨大なキャンバスに、スキージ(へら)で塗り、そして削られた絵の具が複雑な層となっている。
ポーラ美術館の代表作のひとつ、モネの《睡蓮の池》と並べると調和しあっているように見えるから不思議だ。

また、リヒターの作品は、ハマスホイとも調和する。「ハマスホイとリヒター」と名付けられたセクションでは、デンマークの画家、ヴィルヘルム・ハマスホイの《陽光の中で読書する女性、ストランゲーゼ30番地》と、ゲルハルト・リヒターのフォト・ペインティングシリーズの一点《グレイ・ハウス》の2作品のみが展示されている。
室内を描いたハマスホイと室外を描いたリヒター、国も時代も異なる画家の作品だが、どちらも静謐で、呼応しあっているように見える。



また、杉本博司の最新シリーズ「Opticks」シリーズもポーラ美術館のコレクションに加わっている。本シリーズはプリズムを通した光をポラロイドフィルムで撮影し、デジタル技術で大判プリントに仕上げた連作だ。

ポーラ美術館は、2032年の開館30周年に向けて、さらなるコレクションの拡充を目指しているそう。この展覧会はこれまでの美術館活動の集大成であり、そしてこれからに向けての経過報告の展覧会でもある。ぜひ一度、ポーラ美術館の「いま」を確認しに、箱根に足を伸ばしてみよう。
取材・文:浦島茂世
【開催情報】
『ポーラ美術館開館20周年記念展 モネからリヒターへ ― 新収蔵作品を中心に』
4月9日(土)~9月6日(火)、ポーラ美術館にて開催
https://www.polamuseum.or.jp/
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