ラファエロからモネ、ゴーガンまで、巨匠たちの作品で西洋絵画の流れをたどる 『スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち』開幕
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展示風景より
上質で、幅広い西洋絵画コレクションを持つことで知られるスコットランド国立美術館から、巨匠と呼ばれる画家たちの作品が数多くやってくる展覧会『スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち』が4月22日(金)に東京都美術館で開幕した。7月3日(日)まで開催の後、神戸市立博物館、北九州市立美術館へも巡回予定だ。
スコットランド国立美術館は、スコットランドの首都、エディンバラに1859年に設立された美術館。ヨーロッパで最も壮大な景観を持ち、世界遺産にも登録されているエディンバラは、毎年夏に芸術祭「エディンバラ・フェスティバル」が開催されることで知られる芸術の都市だ。
そんな芸術色豊かな都市エディンバラにある美術館ではあるが、設立当初は作品の購入予算がなく、地元の名士たちの寄贈や寄託により上質なコレクションを築き上げてきたという。同展は、そんなスコットランド国立美術館が持つ、ラファエロやエル・グレコからスーラ、ルノワール、ゴーガンまで、「巨匠」と呼ばれる画家たちの作品を中心に紹介するものだ。また、スコットランドやイングランドの作家たちによる作品も合わせて紹介される。
展覧会は時代順に4章で構成されている。第1章「ルネサンス」ではラファエロの素描や、エル・グレコのキリスト像など、誰もが知る巨匠の作品を展示する。
ヴェロッキオ(帰属)の《小児キリストを礼拝する聖母(「ラスキンの聖母」)》は、19世紀の批評家で画家のジョン・ラスキンが所有していたことで知られた作品。ラスキンはラファエル前派らに多大な影響を与え、ホイッスラーと裁判で争うなどイギリス美術史のなかで大きな存在感を持つ人物だ。
第2章の「バロック」では、17世紀に活躍したレンブラントやベラスケスなどの油彩画や素描を展示する。
ベラスケスの《卵を料理する老婆》は台所や酒場の情景を描いた、ボデゴン(厨房画)と呼ばれる作品。老婆は熱した油のなかに生卵をそっと流しいれて揚げ焼きにするスペイン式目玉焼きを作っている。陶器、金属の器、ガラスのフラスコなど様々な物質の質感が見事に描き分けられている。
ルーベンスに学んだ画家ヴァン・ダイクは、イングランドの宮廷画家として招聘され、当地で多くの肖像画を残した。彼は、後のレノルズらに大きな影響を与え、英国で一大ジャンルとなった肖像画の世界に絶大な影響を与えている。
続く第3章は「グランド・ツアーの時代」。17世紀から19世紀にかけて、イギリスの裕福な貴族の子弟やコレクターらは、文化的教養を深めるため、長期間かけてヨーロッパを旅するグランド・ツアーを行っていた。
このグランド・ツアーが流行していた時代、フランスではブーシェらによる華やかな絵画を、イタリアではグアルディらが美しい風景画をそれぞれ描き、イギリスからの旅行者たちは熱心に収集していた。
そして、それまで画家を排出してこなかったイギリスから、レノルズやゲインズバラ、ラムジーらが肖像画家として台頭、活躍を開始する。この時期からようやくイギリスならではの絵画が芽吹き始めたのだ。
そして、第4章「19世紀の開拓者たち」では、ターナーやコンスタブル、ミレイやブレイクなどイングランド、スコットランドで活躍する画家たちが占める割合が増えていく。
そして、モネやゴーガンなどの印象派やポスト印象派の画家なども合わせて展示。時代が進めば進むほど題材や画風、価値観に多様性が現れてくるのも興味深い。
そして、展覧会の最後はフレデリック・エドウィン・チャーチの記念碑的な作品《アメリカ側から見たナイアガラの滝》で締めくくられる。この作品は、スコットランド出身の実業家によって美術館に寄贈されたもの。寄付や寄贈の作品を核に成長を続けた同館を象徴する一枚となっている。
各時代の著名な巨匠の作品を楽しみつつ、そしてイギリス美術史の流れも辿ることができる展覧会、さまざまな楽しみ方ができるはずだ。
【開催情報】
『スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち』
4月22日(金)~7月3日(日)、東京都美術館にて開催
※日時指定予約制
https://greats2022.jp/
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