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隼太からHAYATAへ 第0回 俳優・竪山隼太がカメラマン・HAYATAを目指すまで

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竪山隼太

十代で「ライオンキング」ヤングシンバ役に抜擢、二十代を蜷川幸雄率いるさいたまネクスト・シアターで過ごし、32歳になった今年、舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」のロン・ウィーズリー役を勝ち獲った俳優の竪山隼太が、もう1つの夢であるカメラマン・HAYATAを目指す本企画。舞台をはじめさまざまなメディアで活躍するプロのカメラマン・平岩享が先生となり、隼太は毎回多様な課題に取り組みながら、“隼太からHAYATAへ”の道を突き進む。

初回は、そんな竪山隼太のカメラへの思いと、本企画への意気込みを聞く。

取材・文 / 熊井玲 撮影 / 平岩享 ヘアメイク / オオトウアキ

カメラより先に、カメラマン・平岩享に興味を持った

──竪山さんが最初にカメラに興味を持ったのは?

もともと父親がカメラ好きで、どこへ行くときも「隼太、こっち向け」って言って写真を撮るような人でした。ただ仕事で撮られるのは、実はあまり好きではなくて。でもアーティスト写真は、自分を知ってもらうきっかけになるので新しくしたいなと考えていたときに、岩井秀人さんのアーティスト写真がすごくカッコいいと気付いて、撮影者クレジットにある平岩享さんに興味を持ちました。その話をマネージャーにしたら、マネージャーと平岩さんに実はつながりがあることがわかり、恐る恐る平岩さんに「写真を撮っていただけないでしょうか……」とご連絡したのが最初のきっかけです。

その撮影で平岩さんは、最初は望遠で、少し仲良くなったら近距離で撮ってくれましたが、全然撮られている感じがしなかったんです。かつ、写真を撮っている平岩さんがすごくカッコよくて。僕、カメラマンさんをカッコいいと感じたのは、平岩さんが初めてでした。それで「この人はすごいな。仲良くなりたいな」と思い、カメラを教わるというより、平岩さんと親しくなりたくて、よくご連絡するようになりました。

それが2020年くらいの話。コロナの影響でどこも配信に力を入れるようになっていた時期だったので、僕もさいたまネクスト・シアターのメンバーとして、動画を撮れる一眼を買うことにしました。でも動画って編集に時間がかかってすごく大変で、「やりたいのは動画じゃないかもしれない」と感じて。ただせっかくカメラを買ったので、カメラをやってみようかなと思い、YouTubeでいろいろ調べて撮ってはみたんですけどよくわからなくて、それで平岩さんにまた恐る恐る「カメラ教えてもらえないですか」って聞いてみたところ、「じゃあ弟子になりなよ」と言われ(笑)、平岩さんの撮影にアシスタントとして何度か同行させてもらいました。

──この連載がスタートする前にも、平岩さんのレッスンを受けたことがあったそうですね。

1回だけ、屋外での撮影に付き合っていただいたことがありました。そのほか、平岩さんが講師のカメラクラスのお手伝いに行ったり、自分が撮影したものを平岩さんに見ていただいて、意見をもらったりということはありましたね。

──撮影中は、頭の中にどんなことが思い浮かんでいますか?

写真は光だと思っているので、どういう光だったら被写体が綺麗に見えるのか、常にそのことばかり考えています。平岩さんには「被写体の表情を引き出す!」とよく言われますが、その余裕はまだ、ないと思います(笑)。

──撮影のときに使っている脳は、俳優のときに使う脳とは別のものですか?

全然違います。演劇だと、例えば舞台上に4人いる中に入っていく場合、その4人に対して同時に矢印(意識)を飛ばさないといけない。でもカメラは1対1で向き合えるのが良いと思います。

被写体自身の魅力が載った写真が撮りたい

──平岩さんはよく、ご自身にとってカメラはコミュケーションのツールだとおっしゃいますが、平岩さんの撮影姿勢を知ることで、俳優としてのお仕事に還元されることは?

あります。以前投資家さんの撮影に同行させていただいたとき、僕は投資のことなんて1ミリもわからなかったけど、平岩さんは投資家の方と対等に話をされていたんですね。その様子を見て、撮影を通して異業種の方と知り合える機会があるって良いな、でもそのためには自分がいろいろと勉強しないといけないんだなと感じて。僕も今後、もしかしたら投資家や弁護士や教師の役をやるかもしれませんし、そのときに自分が知らない世界とどう対峙するか、考えるきっかけになりました。

──この連載は平岩さんから出される課題を竪山さんが1つずつクリアして、プロカメラマン・HAYATAになることを目指していきます。竪山さんは最終的に、どんな写真が撮れるようになりたいですか?

その人自身の魅力が載っている写真が撮りたいです。僕は昔から人に興味があって、ポートレートが撮りたいという思いが強いんですけど、カメラをやってみたいと思ったのも、実は俳優仲間をもっとよく撮りたいという思いがあったから。すごく良い演技をする俳優なのに、プロフィール写真にはその良さが載っていないなと感じる仲間もいるので、まずは俳優仲間のプロフィール写真が撮れるようになりたい。そしていずれは、知り合いではない人たちの魅力も瞬時に引き出せるような写真が撮れるようになれれば良いなと思っています。

プロフィール

1990年、大阪府生まれ。2000年に劇団四季ミュージカル「ライオンキング」ヤングシンバ役でデビュー後、「天才てれびくんワイド」にレギュラー出演し子役として活動。2009年に蜷川幸雄率いる演劇集団さいたまネクスト・シアターで活動。最近の出演作に「Take Me Out 2018」「ガラスの動物園」(上村聡史演出)さいたまネクスト・シアター最終公演「雨花のけもの」(細川洋平作、岩松了演出)など。7月から舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」に出演する。