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書からスタートし、独自の抽象表現へ 約70年の活動の全貌を展観する『篠田桃江展』東京オペラシティアートギャラリーにて開催中

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幼少の頃より書に慣れ親しみ、戦後になってから書家として活動を開始。文字という形にはとらわれない独自の抽象表現、空間表現を確立した篠田桃紅(しのだとうこう)。昨年、107歳でその生涯を閉じた回顧展『篠田桃紅展』が4月16日(土)より東京オペラシティアートギャラリーで開幕した。6月22日(水)までの開催だ。

同展は、昨年107歳で逝去した篠田桃紅の活動の全貌を120点以上の作品や資料で振り返る展覧会。約70年という長い活動で、彼女の作品はどのように変遷していったのかをたどっていく。

篠田桃紅は1913年、中国は大連に生まれた。5歳の頃から父に書の手ほどきを受けた彼女は、独学で書に勤しむようになる。戦後になり、前衛書家として活動を開始。文字の制約から離れ、自由な形を作り出していった。

篠田桃紅《萩原朔太郎「波宜亭」より》1954年頃 個人蔵
展示風景より

1956年、43歳の篠田は単身でニューヨークへ渡る。抽象芸術の最先端だったこの地で篠田の前衛書は大きな注目を集め、約2年間の滞在で高い評価を獲得。帰国後の篠田の作品はさらに文字から離れ、太い線や面で構成される表現に至る。

《遠つ代》はニューヨークの個展で発表された作品のひとつ。墨の地に力強く引かれた銀泥の太い線は強い存在感をかもしだしている。

左:《行人》1965年 岐阜県美術館蔵 中央:《遠つ代》1964年頃 岐阜県美術館蔵 右:《舞》2001年 岐阜県美術館蔵4

また、1950〜60年代にかけて、篠田は丹下健三の手掛けた日南市文化センターの陶壁のほか、旧電通ビル(現存せず)のロビーをはじめ、さまざまな建築とのコラボレーションに積極的に取り組み、壁画や襖絵、レリーフなどを残している。

《「日南市文化センター陶壁・結ぶ」下図》1961年 鍋屋バイテック会社蔵

そして、年代を経るにつれ、篠田の線はより研ぎ澄まされたものとなっていく。

人よ(Ⅱ) 1988年頃 岐阜市県美術館蔵
左から《惜墨1》《惜墨2》《惜墨3》《惜墨4》1991年 岐阜県美術館蔵
《世々》 1998年左 中《時間》1998年 右《井筒》1998年  いずれも岐阜県立美術館蔵

《百》は篠田が100歳を目前にして描かれた2m近い作品。伸びやかな線と金地の背景が力強い。

篠田桃紅《百》2012年  鍋屋バイテック会社蔵

潔く引かれた水墨の線、その周りの余白、そして色との取り合わせの美しさなど、随所に新しい発見のある篠田桃紅。彼女の洗練された美の世界を、ゆっくりと触れることができる素晴らしい機会だ。

取材・文:浦島茂世

【開催情報】
『篠田桃江展』
4月16日(土)~6月22日(水)、東京オペラシティアートギャラリーにて開催
https://www.operacity.jp/ag/exh249/

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