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『ジャム・セッション 石橋財団コレクション×柴田敏雄×鈴木理策』、開催中 シリーズ第3弾では写真と絵画との関係を考察する

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アーティゾン美術館で『ジャム・セッション 石橋財団コレクション×柴田敏雄×鈴木理策 写真と絵画−セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策』が開催されている。アーティストが石橋財団のコレクションと向き合い、新しい展覧会を作り出す、「ジャム・セッション」シリーズは今回で3回目。今回のアーティストは写真家の柴田敏雄と鈴木理策だ。

“ジャム・セッション”は、活躍中のアーティストとアーティゾン美術館の学芸員、そして石橋財団のコレクションがコラボレーションする展覧会。年に1回のペースで開催されている。今回は写真家の柴田敏雄と鈴木理策の作品と、美術館の近代作品を同じ空間に配置することで、写真と絵画との関係を考えていく展覧会だ。

同展は6つのセクションで構成。セクションI「柴田敏雄──サンプリシテとアブストラクション」は、サンプリシテ(単純化)をキーワードにした作品を提示する。

柴田敏雄は、日本各地のダムやコンクリート擁壁、橋などの人工的構造物と自然との関わりを独自の視点で見つめる写真家。対象を大胆に切り取り、時には抽象的にも見える写真作品は、風景を抽象化して描いたモンドリアンの作品と不思議な調和を見せている。

左:柴田敏雄《山梨県南巨摩郡身延町》2021年 作家蔵、ピート・モンドリアン《砂丘》1909年 アーティゾン美術館蔵
左:柴田敏雄《福島県南会津郡但馬町》アマナコレクション 右:《宮城県栗原市》2016年 作家蔵

セクションIIは「鈴木理策──見ることの現在/生まれ続ける世界」。鈴木理策が訪れ、撮影したクロード・モネのジヴェルニーの池などの作品が並ぶ。

鈴木理策は故郷の熊野や、セザンヌが好んで描いたサント=ヴィクトワール山、花やポートレートなど多様なテーマで、「見ること」を考える作品を発表してきた。鈴木は、睡蓮の池を撮影したことで、水面に映り込んだもの、水面自体、水底にあるものの3つのレイヤーを描き分けていること気づいたという。

左:クロード・モネ《睡蓮》1903年 アーティゾン美術館蔵 右:鈴木理策《水鏡14,WM-77》、《水鏡14,WM-79》2014年 作家蔵
左:ギュスターヴ・クールベ《雪の中を駆ける鹿》1856〜57年頃 アーティゾン美術館蔵 右:鈴木理策《海と山のあいだE-34》2006年 作家像

セクションIIIは「ポール・セザンヌ」。柴田、鈴木が共に興味・関心を寄せてきたセザンヌの作品と両者の作品を展示する。柴田や鈴木がセザンヌに影響されつつも、両者が全く異なる表現に至っている点は非常に興味深い。

左:柴田敏雄《高知県土佐郡大川村》2007年 作家蔵 中:ポール・セザンヌ《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》1904-06々頃 アーティゾン美術館蔵 右:鈴木理策《サンサシオン 09,C-58》2009年 作家蔵

セクションIV「柴田敏雄──ディメンション、フォルムとイマジネーション」では、カンディンスキーが面を意識して描いた風景画や、大胆なフォルムで知られる空海の仏像を、柴田はダムの躯体や法面など、強調したフォルムや幾何学的なモチーフに着目した作品を並べている。

左:柴田敏雄《栃木県那須塩原市》2020年 作家蔵 右:ヴァシリー・カンディンスキー《3本の菩提樹》1908年 アーティゾン美術館蔵
中央:円空 仏像 江戸時代(17世紀) アーティゾン美術館蔵 
柴田敏雄《東京都西多摩郡檜原村》1994年 作家蔵

セクションV「鈴木理策──絵画を生きたものにすること/交わらない視線」は、見ること、見られることの関係性に着目する。マネ《自画像》と鈴木の連作《Mirror Portrait》が並んだ空間、そしてジャコメッティの作品と、鈴木が撮影した作品写真、そして鏡が並ぶ空間は、それぞれ「見る/見られる」の関係を深く考えるきっかけになる場所だ。

左右:鈴木理策《Mirror Portrait》のシリーズ 2016〜2017年 作家蔵 中央:エドゥアール・マネ《自画像》1978〜79年 アーティゾン美術館蔵
左:鈴木理策の撮影による《ディエゴの胸像》  中:アルベルト・ジャコメッティ《ディエゴの胸像》 1954-55年 アーティゾン美術館蔵
鈴木理策《りんご21》2021年 作家蔵

そして最後となるセクションVI「雪舟」は、柴田のダムをモチーフにした作品、鈴木の雪の作品、そして雪舟の《四季山水図》が並ぶ。二人の個性が山水画を挟むことでより際立つ展示空間だ。

手前:柴田敏雄《グランドターリーダム、ダグラス群》 1996年 作家蔵 中:雪舟《四季山水図》 室町時代 15世紀 アーティゾン美術館蔵 奥:鈴木理策《White 07,H-17》、《White 07,H-18》 2007年 作家蔵
雪舟《四季山水図》 室町時代 15世紀 アーティゾン美術館蔵

柴田・鈴木両名の作品240点、そして石橋財団コレクションより30点、合計280点の作品で構成される大ボリュームの展覧会。さらに、アーティゾン美術館では『Transformation 越境から生まれるアート』、『石橋財団コレクション選 ピカソとミロの版画』も 同時開催している。すべてをしっかり見ると1日がかりとなりそう。時間に余裕を持って美術館を訪れよう。

【開催情報】
『ジャム・セッション 石橋財団コレクション×柴田敏雄×鈴木理策 写真と絵画−セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策』
4月29日(金)~7月10日(日)、アーティゾン美術館にて開催
https://www.artizon.museum/exhibition_sp/shibatasuzuki/

取材・文:浦島茂世

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