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西川周作に重なったあの日の阿部勇樹、浦和レッズ、試練の30周年記念試合へ

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西川周作(浦和レッズ) (C)J.LEAGUE

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あの日を思い出す光景だった。5月13日・埼玉スタジアム2002のことである。『明治安田生命J1リーグ』第13節・サンフレッチェ広島戦を終えると、一部サポーターからブーイングが飛んだ。最初はピッチ中央で円陣を組みミーティングを行った広島に対して。続いては5試合連続ドローに終わった浦和レッズに対して。

DAZNのフラッシュインタビューを終えた西川周作主将は遅れて場内を一周した。北側ゴール裏では激しい檄が飛んだ。怒りをぶつけるサポーターに対して、西川は身振りを加えて真剣な表情で言葉をぶつけた。まるで7年前の阿部勇樹主将とサポーターのやり取りのようなシーンが繰り広げられた。

2015年3月4日・『AFCチャンピオンズリーグ』第2節・ブリスベンロアーに0-1で敗れた埼スタではブーイングが飛び交った。試合後のテレビインタビューの対応で遅れてあいさつに回った阿部にも厳しい言葉が飛んだ。サポーターへ詰め寄った阿部は人差し指を立てて、「まずひとつ勝とう! ひとつ勝つまで一緒に戦ってくれ!」と目に涙を浮かべながら鬼気迫る表情で呼びかけた。阿部とサポーターの激しいやり取りから3日後に開幕した『明治安田生命J1リーグ』1stステージ第1節では見事に勝利。浦和はそのまま無敗で駆け抜けて1stステージ優勝を決めたのだった。

あれから7年、浦和は「3か年計画」の最終年を迎えていた。『明治安田J1』制覇をターゲットにしたものの、開幕4試合勝利なしと出遅れた。『AFCチャンピオンズリーグ』グループFを4勝1分1敗で2位突破した浦和は6試合で20得点と課題だった得点力不足を解消したかに思われた。だが、帰国後初戦の『明治安田生命J1リーグ』第12節・柏レイソルは0-0に終わった。

そんな中迎えた広島戦は『030th Urawa Anniversary Week -ORIGINALS- Match of 3』と銘打ち、オリジナル10のクラブを埼スタで迎え撃つホーム3連戦の初戦として行われた。

ゴールシーンは突然訪れた。14分、ゴールまで30m、左サイド寄りの位置でFKを獲得。右SB馬渡和彰の放ったFKがワンバウンドし、そのままゴールネットを揺らした。250分間ゴールから遠ざかっていた浦和の突如のゴールシーンに埼スタが沸いた。だが、ここでVARのチェックを経て、主審が直接ビデオを確認するオンフィールドレビュ―が行われ、オフサイドポジションのCB岩波拓也がプレーに関与したと見なさされノーゴールとの裁定が下された。

その後も互いに持ち味を発揮する好試合を披露。広島が反撃に出る。27分満田誠がコンパクトに左足を振り抜いた強烈なミドルシュートはポストを叩き、42分ジュニオール・サントスの最初のシュートをCBアレクサンダー・ショルツ、続けざまのシュートはGK西川が好守した。後半に入って55分、CFアレックス・シャルクの早いリスタートに左ウイング関根貴大が反応、ゴール前で右ウイングのダヴィド・モーベルグに託すと得意のまたぎのフェイントから左足一閃。シュートは惜しくもGK大迫敬介に阻まれた。

70分途中出場の松本泰志にミドルシュートを打たれるも西川が好セーブ、こぼれ球に満田が反応したがオフサイドポジションにいた。72分には左SB明本考浩がボール奪取、途中出場のキャスパー・ユンカーがヒールで同じく途中出場の江坂任にボールを預ける。ゴール前で江坂のラストパスを受けたユンカーは右足を振り抜くが、またしても大迫のナイスセーブに遭った。74分江坂の強烈ミドルも、大迫の壁が立ちふさがった。

79分にはこの日最大のピンチが襲った。右サイドで森島司、藤井智也、松本とパスをつながれると、ファーサイドへクロスを上げられた。ゴール前に完全フリーで走り込んだのは前節2ゴールの柏好文。柏はダイレクトで右ボレーを蹴るも、シュートは枠外へ飛んでいった。

82分、CKのこぼれ球を直接蹴り込んだ松尾佑介のシュートも大迫が好セーブ。結局、互いのチャンスも互いのGKの好守により阻まれ、スコアレスドローに終わった。

試合後、ミヒャエル・スキッベ監督は「ものすごい試合だったが、0-0に終わってしまった。お互いにシュートチャンスがあり、両GKがすごい活躍をした試合だった。その中で最後の最後までゴールを目指し、ラッキーパンチが入ればと戦った。今日の試合はJリーグの中でも素晴らしい試合だったと思うし、レベルの高い2チームがハイレベルなサッカーをしたと思う」と内容を高く評価した。

一方、リカルド・ロドリゲス監督は「前半はすごくよかった。コンビネーションでの崩しもあり、相手のプレスをはがすことができた。ただ、はがしたあとのファイナルサードで精度が低かったり、少し焦ったような形になった。かなり距離がある中でのシュートなど、可能性があまり高くないシチュエーションでのシュートが多かった。勝点3を取れるくらいのチャンスがあり、相手にも同じくらいのチャンスがあった」と一定の評価をした。

5試合連続ドローの結果を受け我慢して継続することか、新たな道を探ることか、どちらが必要か問われると、指揮官はこう答えた。
「頭の中でどちらも考えている。我々に何が足りていないのか、勝てない理由はどこにあるのか。ファイナルサードの決定的な場面をより作るためにはどのようなフォーメーションで臨めばいいのか、個で打開していくためにはどうすればいいのか、コンセプトはどうなのかを考えている」

西川はフラッシュインタビューでこのようにコメントした。
「久しぶりのホームスタジアムに帰って来て、勝つ姿を見せたかった。勝てはしなったが、しっかり無失点で抑えるというのは長いリーグ戦を考えた時に非常に大事になってくると思う。今12試合で10失点、これを継続していきたい。次すぐに試合がくるので、しっかり勝つ姿を見せたい。今季は非常にいい状態、頭をしっかり整理した中でプレーできているので、自分の中でプレーを楽しみ、究極の余裕を求めながら今後もやっていきたい。本当スッキリ勝ちたいというのが正直な思い。いい内容だと思うが、勝つ姿勢をしっかり見せていきたい。僕がしっかり浦和のゴールを守っていきたい」

幻のゴールに終わった馬渡も難しい心境を明らかにした。
「優勝という目標から逆算すると非常に物足りない結果、じゃあただ勝てばいいかと言うとそういうわけではないと思う。じゃあ内容がいいから結果が出なくていいかと言うとそうでもないので、そこのバランス、チームが優勝を目指すといった中で結果も必要なので、難しいところ。去年からの積み上げがあり、メンバーが大きく変わる中、作り直しているところ。これから強いチームになっていくための過程もリカルドは大事にしていると思う。そのバランスを監督も考えていると思うので、出ている選手が責任を持って、勝利プラス内容を突き詰めていかないといけない。現状では批判も仕方ないと思う」

中盤の底で支えた平野佑一も複雑な心境を口にした。
「ホントに難しい。上を見てやっていくしかない。失点数は少ないし、負けてはいない。前で歯車が合えば入ると思う。ボールが入る流れもスムーズだと思う。あとは(新加入の)外国人とのコンビネーションを継続してやっていきたい。正直、すごく悔しい。勝たないといけないスタジアムだし、内容が悪くても絶対に勝点3を狙ったゲームだったので。でも結果はもう変えられないので、次の2戦に勝てば2勝1分で、今日の引き分けが大きいものになる。次はさらに勝点3を意識してやっていきたい」

これで浦和は2勝6分4敗・勝点12の16位。次戦は7勝3分2敗・勝点24の3位横浜F・マリノス、週末には9勝1分3敗・勝点28で首位を走る鹿島アントラーズを迎え撃つ。12試合で11得点と得点力不足にあえぐ浦和とは対照的に横浜FMはリーグ最多の23得点、鹿島はリーグ2位の21得点を叩き出している。

横浜FMは今季初の3連勝。前節は湘南ベルマーレとの神奈川ダービーでシュート数21本に対して13本と下回ったもののスコアは4-1。『ACL』で見せた勝負強さを発揮している。6ゴールのアンデルソン・ロペスを筆頭に、4得点の西村拓真、3得点の仲川輝人とエウベルなど、どこからでも得点が奪えるアタッキングフットボールはさらに進化している。

首位鹿島は強力2トップが問答無用の決定力を見せ付けている。上田綺世が8ゴールで得点ランキングトップタイに立てば、鈴木優磨が6得点の3位タイで続く。出し手と受け手のふたりだけで完結するゴールシーンは圧巻である。

果たして、浦和は強敵との連戦となる『030th Urawa Anniversary Week -ORIGINALS- Match of 3』で浮上のキッカケを掴むことができるのか、それとも横浜FMと鹿島に返り討ちに遭うのか。『明治安田J1』第11節・横浜FM戦は5月18日(水)、第14節・鹿島戦は21日(土)・埼スタでキックオフ。チケット発売中。試合の模様は横浜FM戦と鹿島戦はテレ玉にて生中継。

またクラブ創立30周年を記念した『浦和レッズ 30周年アニバーサリーブック 1992-2022』が5月17日(火)に発売。リカルド・ロドリゲス監督、西川周作のスペシャルインタビューに平川忠亮×関根貴大のスペシャル対談、福田正博、岡野雅行、ギド・ブッフバルト、永井雄一郎、鈴木啓太、田中達也、長谷部誠、坪井慶介、田中マルクス闘莉王、阿部勇樹のレジェンドインタビューの豪華ラインナップとなっている。

取材・文:碧山緒里摩(ぴあ)

チケット情報
https://t.pia.jp/pia/search_all.do?kw=%E5%9F%BC%E7%8E%89%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%83%A02002

浦和レッズ 30周年アニバーサリーブック 1992-2022
https://book.pia.co.jp/book/b605534.html

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