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駒田一×伊礼彼方×東山義久 エンジニア役鼎談【『ミス・サイゴン』連続インタビュー第2弾】

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左から東山義久、駒田一、伊礼彼方  撮影:近藤誠司

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コロナ禍による全公演中止から2年、『ミス・サイゴン』カンパニーが再び動き出した。『レ・ミゼラブル』のクリエイティブチームがオペラ『蝶々夫人』の物語をベトナム戦争下のサイゴンに置き換えて描き、1989年にロンドンで誕生して以来世界中で上演されている超大作。日本初演30周年記念公演となる今回、初演から出演し続ける“ミスター・サイゴン”市村正親とともにエンジニア役を務める、駒田一(2014~)、伊礼彼方(初役)、東山義久(同)に意気込みを聞いた。

同じようにやっていても絶対同じにならない

――2年前、お三方は既に一緒にお稽古されていたそうですが、お互いのエンジニアを見てどんなことを感じられましたか?

駒田 本当に三者三様で、刺激をもらっていましたね。エンジニアに合ってる要素をそれぞれが醸し出していて、なるほど、だから選ばれたんだなと。具体的なことを言うとね、プレッシャーになっちゃうと思うから言わないし、僕についても良いことだけ言ってほしいんだけど。ははは!

東山 いや(笑)、具体的に言おうにも、一緒に稽古できたのは本当に数日でしたから。僕の日記にも書いてあるんですけど、《生き延びたけりゃ》を一さんだけちょっとやって、明日から本格的に稽古するよっていうタイミングで中止になったんですよ。

駒田 そっか、そうだったね。

東山 オーディションの課題曲のひとつでもあった大ナンバーを、僕らはまだやってないという(笑)。ほかのシーンも、まだどこから出てどこに行くっていう段取りを追っている段階でした。

伊礼 そうでしたね。エンジニアは段取りが多いから、今回も覚えることで手一杯で、覚えた頃にはもう初日がやってくるんじゃないかな(笑)。誰かの真似をしないようにとか自分のオリジナリティを出そうとか、そんなことを考える余裕もないような気がします。

東山 “真似しないように”の前に、“真似しなきゃダメ”なことがたくさんありますからね(笑)。

駒田 そうだね、そこは僕もちゃんと教えます(笑)。でもその段取りすら、同じようにやっていても絶対同じにならないのが面白いところで。このタイミングでここからあそこまで走るって決まっていても、その走り方に自然とオリジナリティが出る、そういうことなんだと思います。

あの時代のベトナムにはエンジニアのような人がたくさんいた

――改めて始まろうとしているお稽古に向けて、今の意気込みの程は。

伊礼 同じ役を演じるのって、やっぱり同世代が多いじゃないですか。でも今回、市村さんとは30歳以上、一さんとも20歳近く離れている。持っている引き出しも思考も違う先輩方の芝居を見て盗める、インスピレーションをもらえると思うと、僕はワクワクして仕方ないですね。

駒田 稽古場って、先輩がもがいてる姿も見られるもんね(笑)。

伊礼 そうなんですよ! 最初から完璧にできるんだろうなと思っていた先輩が、失敗しながらゼロから役を構築する姿を見せてくださると、勇気や希望をもらえます。やっぱり芝居って、いくつになっても最初からできるなんてことはないんだなって。

駒田 僕はそのことを、それこそ市村さん、そして松本白鸚さんといった先輩方から教わりました。できなくて当たり前なんだから、恥をかくことを恐れちゃいけない。だから僕は今回も、分からない時は「分かりません!教えてください!」って堂々と言っていきますよ(笑)。演出家や共演者からヒントをもらって、同じ役の人からも盗んで盗んで、その中から自分なりの役を形成していくのがお芝居なんだろうと思います。

東山 自分なりの、僕の色のエンジニアを演じなければ4人いる意味がないって思うと、大きな責任を感じますね。当たり前ですけど、お三方と共演はできないわけで、僕の回をご覧になる方にとっては僕が4人のエンジニアの代表みたいなもの。つまらないと思われたら僕のせいですから(笑)、責任は4分の1どころか、4倍になるような気がしています。

伊礼 いや、本当にそうですね! 4人一緒に出られたらどれだけ気が楽か(笑)。市村さんや一さんが作ってこられた『ミス・サイゴン』に泥を塗ってしまうようなことがないよう、良いところはとことん吸収しながら、自分なりの表現を見つけていくのが僕らの仕事なのだと思います。

――これから見つけていこうとされているエンジニアのキャラクター像について、現時点での印象で構いませんので少し教えていただけますか?

駒田 僕は『レ・ミゼラブル』で演じたテナルディエについて、演出のジョン・ケアードさんから「あの時代のパリにいた庶民の代表なんだ」と言われたことがあって。エンジニアも、そういう男だと思ってます。きっとあの時代のベトナムには、エンジニアみたいな人がい~っぱいいた。そう考えると、時代背景をもっと知ることで、その中でどんなふうにどれだけ苦しんだかという裏の部分は、もっともっと掘り下げられるんじゃないかと思いますね。

伊礼 前回の稽古で、ベトナム戦争について勉強する時間がありましたよね。悲惨な映像をたくさん観て、僕は受け止めきれない気持ちになりました。人を傷つけてでも自分は生き延びてみせる、という心境になっても仕方ない状況だったのだと思います。正直、肌感として感じることはできないですけど、色んな映像や先輩方の姿から想像を膨らませていきたいなと。

東山 映像を観た時、演出家の方が「当時の匂いや温度を感じてほしい」とおっしゃっていて。実際、観たことで歌詞などから想像していた以上に、エンジニアが自分の中で色づいていくのが分かりました。ただ僕は、一度最後のシーンまで行って自分の“出口”を見つけてから、だったらここを通って行こう、というふうに作っていくタイプ。だから今の時点でキャラクター像を具体的にイメージすることは難しいんですが、お二方がおっしゃったことに加えて、夢を持ってるところがエンジニアのすごさだと思います。そのバイタリティは、大事にしたいですね。

どの場面も“エンタテインメント”として成り立っている

――三者三様のエンジニア、楽しみにしています。最後に、皆さんが思うこの作品の魅力や観るべき理由、オススメの楽しみ方などをお聞かせください。

東山 まずは今回、30周年というタイミングでこういう大役をやらせていただけること、本当に光栄に思っています。僕が思うこの作品の魅力は、悲しい物語でありながら、どの場面も“エンタテインメント”として成り立っているところ。僕はダンサー出身ということもあるので、まあエンジニアに踊る場面はないんですが(笑)、よりエンタメ寄りの見せ方ができたらと思っています。色々な観方をしていただいていいんですが、音楽や役者のパフォーマンスを楽しむ、というのもアリじゃないかと思いますね。

伊礼 この作品のキャラクターは全員、明日がどうなるか分からない状態で生きています。それって、もちろんもっと悲惨ですが、今の僕らと似たような感覚ですよね。だから彼らの物語に、コロナに打ち勝ちながら生きている僕ら役者、さらには劇場に来られているご自身も重ねて観ていただけたら、今を一緒に生きていることに感謝できるんじゃないかなと。観終わったあと、「来られて良かった、ありがとう」と思っていただけるように演じたいと思っています。

駒田 ふたりとも、いいこと言ったなあ。これも白鸚さんのお言葉なのですが、「悲しみを勇気に、苦しみを希望に変えるのが僕たちの仕事」、生業です。コロナ禍の前からその通りだと思ってましたけど、みんなが危機感やストレスを抱えている今こそ、押し売りするのではなく「いかがですか?」って、そっと提供できたらいいなと思っていて。『ミス・サイゴン』は東山さんも言った通り、話は悲惨ですが、それが素晴らしい音楽、装置や照明、そしてすごいパワーを持った出演者によってミュージカル化された作品です。伊礼さんが言ったように、足を運んでくださったお客様に「来て良かった」と思っていただけるように、僕らの生業の意味を背負って舞台に立ちたいですね。

取材・文=町田麻子
撮影=近藤誠司

★『ミス・サイゴン』連続インタビュー第3弾は“ミスター・サイゴン”こと市村正親さん。5/20(金)AM7:00公開です!

<公演情報>
ミュージカル『ミス・サイゴン』

2022年7月29日(金) ~8月31日(水) 東京・帝国劇場
※プレビュー公演:7月24日(日) ~7月28日(木)
9月以降全国ツアー公演あり

※8月公演分チケットは5月21日(土) 10:00より一般発売開始!

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