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隼太からHAYATAへ 第2回 構図のヒントは、これまで体験してきたことの中にあるのかもしれない

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2nd Trialで竪山隼太が撮影した那須凜。

十代で「ライオンキング」ヤングシンバ役に抜擢、二十代を蜷川幸雄率いるさいたまネクスト・シアターで過ごし、32歳となった今年、舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」のロン・ウィーズリー役を勝ち取った俳優の竪山隼太が、もう1つの夢であるカメラマン・HAYATAを目指す本企画。舞台をはじめさまざまなメディアで活躍するプロのカメラマン・平岩享が先生となり、隼太は毎回多様な課題に取り組みながら、“隼太からHAYATAへ”の道を突き進む。

初回の「50mmレンズを制する」に続き、第2回は「構図を見つけよう!」をテーマに、室内での空間の切り取り方に挑戦。モデルには、第1回にも協力してくれた、竪山の朋友・那須凜だ。

なお撮影は、「課題発表→1st Trial→平岩先生のアドバイスタイム→2nd Trial→撮影した写真を見直して平岩先生の講評」という形で進行した。

構成 / 熊井玲 ヘアメイク / オオトウアキ

第2回の課題「構図を見つけよう!」

平岩「今回のこの連載のテーマはプロのカメラマンへの道です。ということで、プロの現場っていつも自分が撮りたい場所で撮れるわけではありません。『限られた条件の中で、いかに面白い画を探して、どう撮るか?』ということもカメラマンに求められる条件の1つです。今回は構図にこだわり、その場にあるものを利用して隼太くんの頭の中のイメージを広げる練習をしてみました。写真の面白さの1つは自分の頭の中にあるイメージをすぐに表現できてしまうことなのです」

1st Trial

まずは制限時間内でどのような構図を見つけられるかに挑戦。部屋の隅で平岩先生がじっと見守る中、竪山は「ここに座ってもらえる?」「ここに立ってほしいんだけど……」と那須に声をかけ、“撮りたい図”を探した。

竪山「オオトウさんのヘアメイク、凜の衣装を見て白壁が合うと思いました。また、いすを使って何か面白い写真が撮れないか、探しました。蜷川さんの『リチャード二世』で無人の車いすを囲んで、形だけの権力を象徴した舞台美術を思い出し、円状に配置し、凜が無対象の誰かとしゃべっている画が撮れないか考えました。やっぱり構図は難しい! まだまだ勉強が足りてないなと実感しました。被写体と背景の物の配置によってストーリーを感じさせる写真が撮りたいのですが……。写真1枚で物語を創造できるような写真が撮りたいです」

2nd Trial

自由に撮った写真をパソコン上でチェック。竪山の頭の中にあるイメージがなかなかフレームに収まらなかったようで、チェックする竪山の表情もどこか浮かない。2nd Trialタイムに入ると、まずは平岩先生がカメラを構え、ベスト構図を探る。そしてピンとくる構図が見つかると、「隼太くん、ここ!」と竪山を招き入れ、同じ構図で竪山も撮影に臨んだ。シャッターを押すたび、「ああ、ここだ!」「なるほど!」と素直な声を上げる竪山の姿に、部屋にいる誰もが思わず笑顔になった。

竪山「やっぱりすごいです。光のグラデーションの切り取り方。もう何か、ブランド物の服の写真みたいですよね。凜も良い表情をしてくれてます。また同じいすを使う場合でも、1列に並べてみる写真。いすの間からのぞき込むような写真。いすを倒した、パンクな写真と、同じいすを使ってもいろいろな顔が見えてきます。平岩さんのディレクションも、上から撮ったり下から撮ったり、凜に座ってもらったりと無駄がないんですよね。はー、カッコいいなあ」

Review

平岩「今回はソファーやいすがある白い壁の会議室での撮影でした。まず壁に立ったり座ったりしてもらい、被写体の位置を画角の端に置くことで写真の変化を感じてもらいました。次に自分の撮影する位置を変えたり、カメラの高さを上から下からと撮影することで、構図がどう変わるかをシャッターを押しながら体験してもらいました。最後に、いすを使った撮影をしてみました。いすの形を変えていくことで表現の幅を広げてみる。自分が好きな画角を探す旅は普通の会議室でもできるのです」

モデル・那須凜が語る、隼太とHAYATA

那須「いすなど身近なものを使って、アイデア次第でこんなにカッコいい写真が撮れるんだなということに驚きました。撮影しながら世界観が決まっていくのは、舞台をやっているような気持ちになったし、最後はちょっと、クリエイティブ雑誌の表紙をやっているような気持ちになったりして(笑)。

もともと写真を撮られるのは苦手で、顔が固まっちゃうんですよね。でも1年前に隼太さんに誘ってもらって平岩さんに撮影していただく機会があり、そのときに自分が解放されていく感じがして。そのとき『撮られるのも悪くないかも』と隼太さんと話したことをよく覚えています。今日も、最初の数分しか緊張はありませんでした!」

第2回を終えて

竪山「平岩さんはいすを倒してランダムに配置しました。そのとき、蜷川(幸雄)さんの舞台『私を離さないで』のワンシーン、教室のシーンがふとできたんです。使われていない教室を表現するためにいすをぐじゃぐじゃにし、ワイヤーで固定して、舞台美術にされていたことを思い出しました。構図がうまくなるヒントはもしかしたら今まで僕が体験してきたことの中にもあるかもしれません。限られた条件の中で、最適解を出す技術。平岩さんからこの先もガンガン盗みたいです」

プロフィール

竪山隼太(タテヤマハヤタ)

1990年、大阪府生まれ。2000年に劇団四季ミュージカル「ライオンキング」ヤングシンバ役でデビュー後、「天才てれびくんワイド」にレギュラー出演し子役として活動。2009年に蜷川幸雄率いる演劇集団さいたまネクスト・シアターで活動。最近の出演作に「Take Me Out 2018」「ガラスの動物園」(上村聡史演出)、さいたまネクスト・シアター最終公演「雨花のけもの」(細川洋平作、岩松了演出)など。7月から舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」に出演する。

平岩享(ヒライワトオル)

1974年、愛知県生まれ。フォトグラファー。時代の顔となるポートレートを数多く撮影。岩井秀人が代表を務める株式会社WAREのサポートメンバー。近年はドローンを使った動画など、新しい手法にも取り組んでいる。

那須凜(ナスリン)

1994年、東京都生まれ。2015年、劇団青年座に入団。劇団公演のほか、「ザ・ドクター」「モンローによろしく」「貧乏物語」などに出演。7・8月にはシス・カンパニー公演「ザ・ウェルキン」に出演。第29回読売演劇大賞で杉村春子賞を受賞。