Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
ぴあ 総合TOP > AA= 上田剛士が語る、これからの10年にむけた決意表明 「音楽に対しては正直でいたい」

AA= 上田剛士が語る、これからの10年にむけた決意表明 「音楽に対しては正直でいたい」

音楽

ニュース

リアルサウンド

 上田剛士のソロユニット、AA=が10月20日、デビュー10周年を記念してのアニバーサリーライブ『THE OIO DAY』を開催。10年間の完成形と原点をみせた。そして同ライブでは新曲「SAW」を披露し、会場で先行リリース。11月7日からは同曲の配信がスタートしている。今回リアルサウンドでは上田剛士にインタビューし、節目となった『THE OIO DAY』でのライブ、新曲「SAW」について、そしてこれからの10年について語ってもらった。(編集部)

新しくスイッチが入った感はある 

ーー先日の『THE OIO DAY』についての感想からお聞かせください。

上田剛士(以下、上田):とりあえず、やりたいと思ったことはやれたな、と思ってます。

ーードラマー3人(金子ノブアキ、ZAX、YOUTH-K!!!)が勢揃い、というのはやりたいことだった?

上田:そうですね。3人のスケジュールを調整してリハーサルをやるのが一番大変でした(笑)。なので、ぶっつけ本番みたいなところもあったんですけど、それも含めて楽しかった。

ーー3人が並んで叩くと、それぞれの個性がはっきり出ますね。

上田:そうですね。ドラマーそれぞれをそういう環境で比べるってことがあまりないので。リハの時それぞれのドラムセットを見て、あっこうなってるんだ、結構違うねと。細かいセッティングとかね。

ーー剛士さんから見て、それぞれの個性はどう映ってます?

上田:それはもう、小野島さんにライブ評で書いていただいたような感じで(「3人ともパワフルでエネルギッシュなドラマーだが、グルーブと繊細さも兼ね備えた金子、エモーショナルで情熱的で人間味さえ感じさせるZAX、テクニカルで手数が多くタイトなYOUTH-K!!!」)、それがそのままお客さんにも伝わったんじゃないかなと思いますね。それぞれの個性、面白さが。それによって自分(上田)の音がこういう風に変化しているとか、変化しない部分はこれだとか、そういうのが伝わったんじゃないかなと。

ーー前半を金子ノブアキ、中盤をZAX、後半をYOUTH-K!!!がそれそれプレイしたわけですが、この割り振りはどうやって決めたんですか。

上田:順番に関しては3人で話して決めて、みたいな。

ーーへえ。じゃ剛士さんが決めたんじゃない?

上田:オレはどうしようかって聞かれて、それでみんなでどうしようどうしようって(笑)。最終的にはAA=に登場した順番通りがいいか、みたいになりました。

ーーZAXが叩いた中盤のパートは「Dry Your Tears」とか「HUMANITY 2」とか、ただハードに押しまくるだけじゃないニュアンスを持った曲が多かったですよね。そこを屈指のパワードラマーであるZAXが任されたというのは興味深かったです。

上田:ああ、そういう意味ではZAXは非常に懐が深いんですよ。もちろん彼の売りのひとつはパワーで押し切るところなんだけど、実は全然それだけじゃない男なんで。むしろライブの場合は流れの方が大事なんで、そういう意味ではZAXで良かったんじゃないかと思います。

ーーなるほど。改めてライブを終えて、10年間の総括、そして今後の方向性などについて、改めて感じたことなどは。

上田:その時その時でやりたいことやってるんで、そういう意味では一個一個の積み重ねなんです。『(re:Rec)』を作ってツアーをやって、今回フルメンバーでのライブをやれたので、結果的に10年間の集大成的な感じになりましたし、新しくスイッチが入った感はありますね。これから新しいチャレンジをいろいろしていきたいな、という気持ちにはなってます。

ーー具体的には?

上田:うーん……やっぱりサウンド面ですね。何か新しいものを取り入れてやっていきたい。40代の10年間、AA=でずっとやってきて、こないだ50歳になって。次の10年間をどうするか、なんです。

ーー50歳から60歳の10年間、ということですね。特にAA=のような音楽をやってる人が50代をどう過ごすか。世界的にもそうそう前例がないだろうし。

上田:そうですねえ。やっぱりその時その時の自分にとってリアルかどうかが、作っていてすごく大事だと思うんです。昔やってた音楽をなるべくキープしてやろう、という意識はあまりないので、自分が出す音と言葉が、今の自分にとってどれぐらいピントが合っているか。それはこれまでの10年とこれからの10年では違うだろうな、と思います。

ーーライブでやった10年前の曲も、10年前そのままというわけではないですよね。

上田:そうですね。

ーー10年間の時差を注入して少しずつ変化してると思うんですが、それは一言で言ってどういう変化なんでしょう。

上田:一番はやっていて気持ちいいかどうかなんですね。最初は宅録でスタートして、ライブでやっていくうちに自然に変化していったところもあるし、ひと味足りなくて意識的に変えたところもあるし。

ーー自分の気持ち良さのポイントみたいなものが変化してきたという実感はあるんですか。

上田:20代、30代、40代、50代……それぞれで違うと思いますね。

ーーでも一貫しているものもある。

上田:と、思います。ただ自分の中でそうはっきりと意識しているつもりもない。自分のその時その時に一番気持ち良くフィットするもの、というか。

ーー曲を作っていて、これは自分らしくないから止めよう、とボツにした曲などはあるんですか。

上田:つまらなくて止めるって感じですね。最初はいいと思っても、作っていくうちに面白くなくなって止めちゃう。自分らしいか、らしくないかっていうよりは、そっちの方が大事ですね。結果的に自分が楽しかったり、いいと思ったものは、どこかに自分らしいものがあると思うんです。

ーーその共通項ってなんでしょう。

上田:うーん……自分的には「わかりやすさ」のような気がしますね。メロディにしろサウンドにしろ。自分にとって何かわかりやすい部分があること。そこが自分らしさじゃないかな。

ーー「わかりやすい」とは「ポップ」ってことですか?

上田:それもあると思いますね。でもメロディってだけじゃなく、言葉の場合もあるかもしれないし……ノイズみたいな音だったりすることもあるかもしれない。自分の曲や音楽の、ここがポイントになっているという部分は、どこかしらわかりやすいところがあると思います。

ーーつまり自分がわかってるだけじゃなくて、人が聞いてもわかりやすい……。

上田:いや、自分がそう思ってるかどうかですね。

ーー人がどう聞くかはあまり関係がない。

上田:(笑)。そうですね。でもなんとなく(人にも)伝わってるような気はします。

ーーこないだの『#5』みたいなワンマンレコーディング作品だと、なかなか客観的な視点って持ちにくいじゃないですか。

上田:そうですねえ……。

ーーそこはどうジャッジしていくんですか。

上田:ああ、そこはもう……ある意味考えてないかもしれないですね(笑)。それよりも自分の作りたいものを作っちゃってる感じです。客観的に聞かれて何か指摘されて「ああ、そうだね」って気づくことはあるかもしれないけど。でもそれも含めて自分の作品だと思うんです。なのでそこはあまり気にしてないですね。

ーーいったん作ってしまえば、その作品がどう聞き手に伝わっていくか、どういう作用を及ぼすか、ということに関してはあまり関心がない?

上田:……ない方かもしれないですね。もちろん楽しんでもらえればいいと思うけど、それを自分の作品に反映させることはあまり考えないですね。

表現の欲求には忠実でいたい

ーーなるほど。今回の新曲「SAW」なんですが、どういう狙いがあって作ったんでしょうか。

上田:とりあえず一番形になっていて、この時期に間に合わせることができた曲、ということですね。ライブをやるにあたってこういう曲がほしかった、ということもあります。自分の今の感覚に合っていること、特にビートアレンジの部分ですかね。

ーー今回のシングルの曲がこれからのAA=の方向性、とも言い切れないところがあるわけですか。

上田:わかんないです。ほかの曲もまだそこまででき上がってないので。

ーー曲作りは常にしている。

上田:もちろんです。

ーーどんなことを考えながら……。

上田:やっぱり今の自分にピントが合っているものを作りたいなと思ってます。

ーー「今の自分」とは?

上田:うーん、言葉にすると難しいですけど……いろいろ曲を作ってきて「今この曲は違うな」と感じることがあるんです。今の自分を表現するならこういう曲だな、と。それもいくつか作ってみないと、自分の中でピントが合ってこなかったりもするので、今はそれを選別しているところです。

ーーじゃあアルバムを作る時、事前にコンセプトをきっちり決めて、それに合うような曲を作っていく、という作り方はしない。

上田:あんまりないですね。全然ないわけでもない。それが見えてる時はそうするけど、という感じです。AA=でいえば『#2』とか、こういうアルバムにしたいというテーマがあって作ってたけど。テーマがある方が作りやすいですけど、無理やり(コンセプトを)作ると変なことになるので、その時の気分でやってます。

ーー今回の新曲は前向きな決意表明というか、ここからAA=はこうやっていくんだぜ、というマニフェストと捉えました。

上田:うん。ちょうど区切りでもあるし、そういう気分になってますね。

ーーそうやって口に出すことで活動のあり方も変わってくる。

上田:変わると思いますね。声に出して言うことは重要かもしれない。そういう意味では言葉にして表現するのは得意じゃないので、音に込められたらいいなと思います。

ーー「得意じゃない」といいつつ、歌詞にはいつもしっかりと意味とメッセージを込めてますね。単なる言葉遊びだけで終わらせない。

上田:そうですね……言葉遊びというか、意味がわからない言葉を羅列するみたいな歌詞も、表現として全然いいと思うんです。でもそれだけだと何もなくなっちゃうんで。そこには何かしら自分のメッセージというか「自分」が入ってくるとは思うんです。そこが自分が発するものとしては重要かな。

ーー曲もそうだし、SNSでの発言を拝見しても、今の世の中の流れとか風向きとか雰囲気とか、社会的なことや政治的なことも含めて、敏感に感じてるんじゃないですか。

上田:そうですね。なかなか……難しい時代だなとは思いますね。日本のことにとどまらず……トランプに代表されるような価値観が、これからしばらくは続くじゃないですか、おそらく。世界的にも広がってるし。そういうことは変革の時だから起きてるんだろうとは思ってるんですけどね。そうじゃない方向に世界が向かうために様々な軋轢や混乱が起きている。そこをどう私たちは乗り越えていくか、というのは興味ありますね。

ーーそういうことをSNS等でちゃんと口に出して言いますよね。

上田:そうですね。言い出すとキリがないので、なるべく言わないようにはしてますけど。

ーーでも一切口に出さない人も多いから、すごく姿勢が際だっている。

上田:ああ……そうですかねえ。

ーー海外だとテイラー・スウィフトのような人もきちんと発言して、すごく影響力があったりする。でも日本でそういう発言をすると必要以上に問題になったり反発されて、それが成り立ちにくい。

上田:成り立ちにくいですね! なぜでしょう。国民性? 成熟度? もう少し自然にそういう発言ができるようになるといいと思いますけどね。何年か前に、アーティストやミュージシャンは政治の話をするなみたいな議論もあったじゃないですか。フジロックに政治を持ち込むな、とか。意味わからないじゃないですか。その発想自体が理解できない。政治って特別なものじゃない。生きて生活してることは非常に政治的なことでもあるし。なので自分の生活とか人生とか、より良いものにしようと思ったら、政治的な部分も必ず入ってくる。それのない人生は存在しないと思うので。

ーーその通りですね。

上田:政治だけを特別な、難しいものにしちゃうのは違うんじゃないか。もっと自然でいいんじゃないかと思います。僕自身は全然自民党支持者ではないけど、でも僕の音楽を聞いてる人で自民党支持者もいるかもしれない。そこはグラデーションがあると思うんです。安倍首相を支持しなくても、賛同できる部分もあるかもしれないし、安倍さんを支持してても、ここは受け入れられないね、という部分があるかもしれない。それが全部あって世の中、というか社会が成り立ってるわけだから。そこで非常に狭い、極論的な方向に行ってしまうのは危険だしつまらないと思うんです。

ーー日本人はそうした風潮への恐れがすごく強い気がします。なのでみな突っ込まれないように無難に、好いた惚れたの話題しかテーマにしなくなっちゃう、みたいな。

上田:うん。でも自分がそれをやるとすごくリアリティがなくなっちゃうんで(笑)。

ーー今の自分にとってリアリティがあるのは、自分の生活に関わってくる政治や社会のこと。

上田:そうですね。大きく言っちゃうと、自分の生き方とか人生とか。そういうことになってきますね。政治のこともそこに入ってくる。そこで黙るつもりもないし、逆に自分の思想みたいなものを広げるツールとして音楽を使うつもりもないし。ただ、リアルでいたいなと思ってますね。音楽に対しては正直でいたい。こういう音が好き、こういう表現が好き、こういう言葉を載せたい、という。そういう欲求には忠実でいたいと思いますね。

ーーそういう姿勢はこの先10年たとうが60歳になろうが変わらないということですね。

上田:変わらないと思います、そこは(笑)。

ーー一方でキャリアを重ねると弾き語りのソロを始めたり……。

上田:あっ、それはないですね(笑)。

ーー最近そういうボーカリストが多いけど。

上田:多いすね。でも自分はそうならない確信がありますね。

ーーそれは音楽に最終的に求めるものの違いということでしょうか。いろんなものを削ぎ落としていった時に何が最後に残るのか。

上田:たとえばギター1本でそれを表現するのは主にライブの場だと思うんですけど、自分が削ぎ落としていくと最終的に残るのはそれじゃない気がしますね。

ーー何が残りますか?

上田:スタジオでスピーカーの前でごちゃごちゃ何か作ってるというのが、最終的に残る自分の姿な気がします。

ーーライブでお客さんを前に演奏するのではなくて……。

上田:スタジオで録音機材を前に何かやっている姿。たとえライブをやらなくなっても、音楽を作り続けているだろう、という。今もライブの予定がなくてもスタジオにいるのが好きですからね。

ーー技術が進化すれば、機材を使わなくても、思うだけで音楽ができる時代が来るかもしれないですね。肉体がなくなっても脳みそさえあれば音楽が作れるようになるかもしれない。

上田:そうですね。今はAIの時代で、実際に人工知能が音楽を作る時代になっているし、それはそれなりにある程度のクオリティまでは全然いくんだろうし、人間の作るものを超えることもあるかも知れない。ただ自分の中では、「自分の音を作り上げていく」ことが一番求めてるものなんで。そういう意味では、最終的にはスピーカーの前で何かを作ってるんだろうなって思いますね。

(取材・文=小野島大/写真=三橋優美子)

■リリース情報
DIGITAL SINGLE「SAW」
2018年11月7日(水)配信リリース
価格:¥250(税込) 
配信サイト一覧

■ライブ情報
『AA= VERSUS LIVE 〜X-FADER #666〜』
東京:2019年2月2日(土)/w BALZAC
新代田FEVER 17:30 / 18:00

京都:2019年2月9日(土) /w BALZAC
京都MOJO 17:30 / 18:00

■関連リンク
オフィシャルサイト
OIO Special Web Site
レーベルサイト