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守田悠人監督が作品に込めた思いとは? 「PFFアワード2020」審査員特別賞『頭痛が痛い』オフィシャルインタビュー公開

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守田悠人監督

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「PFFアワード2020」で審査員特別賞を受賞した映画『頭痛が痛い』が6月3日(金)より、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開となる。この度、脚本と監督を務めた守田悠人のオフィシャルインタビューが公開された。

本作の主人公は自傷行為や恋愛感情のないセックスを繰り返し、家庭に不和を抱える不登校気味の高校生・鳴海と、エゴだとわかりつつ、いつも人のことを考え、救急セットを持ち歩く同級生・いく。それぞれの「死にたさ」を擦り合わせようとするふたりによるシスターフッドロードムービーである。

守田監督のインタビューは下記の通り。

――本作制作のきっかけをお教えください。

本作は2018年、大学4年の時に作ったんです。当時、高校生がライブ配信中に線路に飛び込むという事件が起きて、彼女の過去の配信映像だとかがネット上で拡散されました。その一連を見たときに自分の中に漂ってきたものをうやむやにしたくないと思ったんです。10年後の自分がこのテーマで撮れるかわからないですし「今しか撮れない」と思って撮りました。

――タイトルの「頭痛が痛い」に込めた想いは?

「ちぐはぐな痛み」を描きたくて作りました。例えば、自分のしんどさを伝えたい時に「今、頭痛が痛くてしんどいんだよ」と言っても、「『頭痛が痛い』って言葉の使い方が間違っている」と言われて、まともに取り合ってもらえない。でも、こっちとしては今の自分のしんどさを他の言葉で形容できない、「頭痛が痛い」としか言えない、という、他人とのわかりあえなさや矛盾した痛みを含んだタイトルがいいなと思ったんです。

――いくと鳴海がさっきまでいたのに、次の瞬間いなくなっているというシーンがあって、命の儚さなどを感じましたが込めた想いはありますか。

ジャンプカットはラスト手前の、屋上に立つ誰かの足が不意に消えるというシーンにもリンクさせています。雑踏のなかでさっきまでそこに居た誰かが不意に消えていても認識できないのと同じように、人がこの世から消えてゆくことを認識できないですし、そのスピード感についていけない、処理が追いつかない、という感覚で使いました。

――いくの家のシーンがなかったりと、いくの境遇の描写が省かれている理由を教えてください。

「誰でも抱えうる憂鬱を持っている子」という風にしたく、原因を描いてそれと紐付けたくなかったというのが一番の理由ですね。

――いくの「私は死にたいんだと思うと、妙に腑に落ちて楽になる」というセリフがありますが、監督もそう思ったことがあるんですか?

僕もありますし、厳密に言うと僕はちょっと違いますが、みんなそれぞれ憂鬱に対処する儀式みたいなものがあるんじゃないかなと思っています。僕の身の回りにいる人で、毎日「死にたい」と言いながらすごく健康的に生きている人がいて、めちゃくちゃカッコいいと思うので、それを肯定するためにこのセリフを書いたんだと思います。



――いく役を阿部百衣子さん、鳴海役をせとらえとさんをキャスティングした理由をお教えください。

阿部さん、せとらさんに共通するのは、オーディションで「この人のことを知りたい」と思ったからです。オーディションの際に、全員の方に「死にたいと思ったことはありますか?」という質問をしたのですが、阿部さんの答え方は「皆あるんじゃないんですかね〜」と自分に当てられた焦点をすり変えているような交わし方をされたので、阿部さんという人間に興味が湧きました。

せとらさんは、入ってきた瞬間の挙動が印象的で、ヒョウ柄のボトムスとすけすけのシャツを着ていたのも相まって、映画のオーディションに来る人ではない異様な感じがしました。それまで漠然としたイメージだった鳴海が、実際にせとらさんを見て、この子が鳴海だったんだと思ったんです。

――女子高生ふたりだけでも映画は成り立ったとは思いますが、フリージャーナリストの直樹の役を作った理由をお教えください。

いくが遺書という爆弾をばら撒きますが、受け取った側にどう作用するかを描くと、爆弾に奥行きが出るんじゃないかなと。それで正義感が空回ってほしい、そういう存在がほしい、と直樹のキャラクターを構築しました。

――撮影時のエピソードを教えてください。

いくのラブホでの援助交際のシーンはしんどい描写だったんですけれど、本番でカメラを回している最中に、いくの姿を見ながら「あ〜」と声が漏れてしまい、NGを出したことがありました。

――本作の見どころは?

主演のふたりのお芝居や、両者が持つそれぞれの強さ、いくと鳴海の関係性を見てほしいです。

――読者にメッセージをお願いします。

自主映画で至らない部分もたくさんありますが、2018年の自分ができる限りリアルを全部吐き出して作った映画なので、ぜひ劇場で観ていただきたいです。

『頭痛が痛い』
6月3日(金)公開