山下智久「You Make Me」「Right moves」MVから感じる、“解放”された自由な表現力
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『UNLEASHED』、“解放”ーー山下智久の存在を体現したようなタイトルだ。『TVガイドPERSON』vol.75(東京ニュース通信社)のインタビューで「俺は何者でもない。ただ、“自由人”でいたい」と語っている彼そのものである。ドラマや映画などでの俳優業も順調な中、昨年には亀梨和也とのユニット・亀と山P名義で『背中越しのチャンス』をリリース。多くのファンは様々な音楽番組に出演し、生き生きとパフォーマンスする山下を喜ばしく見守っていたことだろう。一方で、彼の音楽活動本格再開を望む声も高まっていた。そして今年9月からは待望のツアーがスタートし、11月28日についにソロアルバムを発売する。ソロでのオリジナルアルバムとしては2014年以来となる。
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久々のソロ作とあり、ジャケット写真や収録内容が明らかになると、アルバムへの期待がさらに高まっていった。そして本日朝、収録曲「You Make Me」「Right moves」のMVが突如オンエアに。それぞれ異なる山下の表情を楽しめる映像が地上波番組で放送され、SNSなどでは早くも多くのファンからの喜びの声が上がった。
ラジオではすでにオンエアされていた「You Make Me」「Right moves」の2曲。両曲ともに山下が作詞に携わっている。得意とする英語を存分に生かした全編英語詞の「You Make Me」はサビがはっきりしているJ-POP的な構成とは異なり、トロピカルハウス調のサウンドも含め洋楽テイストの1曲だ。自然な発声の山下のボーカルやアコースティックギターの音色も心地良い。〈Crazy over you〉と狂おしいほどに相手を思う歌詞には山下の色気が溢れる。ラブソングという一言ではくくれない曲だ。
また、〈人生一度きり〉〈忘れてないぜ上昇志向と好奇心〉という歌詞が印象的な「Right moves」。仕事ばかりで疲れ切ったリスナーを鼓舞すると同時に、山下自身の決意もこもったような楽曲だ。「You Make Me」に比べ、よりダンサブルな曲調が幸福感を生む。しかし、単なるダンスチューンといったものではなく、彼の落ち着いた歌声が楽曲に深みを出しているのだ。
そしてアルバム発売を控え、本日公式ホームページ内で先に挙げた2曲のMVも公開された。薄暗いビルを舞台にした「You Make Me」。軽やかに階段を駆け上り、何ものにもとらわれずしなやかに身体を使ってダンスを披露する山下は、これまでになく“自然体”な表情を見せているように思う。長い手足を優雅に使い、シャツをなびかせて美しいコンテンポラリーダンスを踊る山下。逆光で表情が見えないシーンでは、思いを伝えようとするかのように力強い舞いを見せるのも印象的だ。改めて俳優業で培ってきた表現力の豊かさを感じた。
一方「Right moves」では、疲れた顔で日々通勤し、働く男女が登場する。そんなオフィスで働く人々を横目に、山下は軽やかにダンスを披露。忙しなく日々を過ごす社会人たちに「本当にそれでいいの?」と問いかけているようだ。こちらを向いて指を差す振りつけは、まるで目が合ったかのような感覚に陥って思わずドキリとしてしまう。暗いオフィスを自在に動き回る山下はサラリーマン風のスーツ姿でありながら、どこまでも“自由”であることを感じさせる。狭いオフィスの中でも軽快にターンを決める姿は爽快感があり、キレの良いダンスも見事だ。
この2曲からは純粋に歌やダンスを楽しむ山下の姿が浮かぶ。4年前のアルバムの後に様々な経験をし、山下の世界が広がったことを強く感じるのだ。「Weibo」に公式アカウントを持ったり、熱心に英語を勉強したりしていることはもちろん、俳優としても役柄の幅を広げてきた。そうした活動が音楽にも反映されているように思う。きっと他の収録曲ではまた違った顔を見せてくれるのだろう。以前、インタビューで「もっといろいろなことを、もっと自由にできる時代になる。僕も自由な発想で、仕事をしていけたらいいなと思っています」と語っていた(参考:山下智久「自分のためだけでは限界がある」独占インタビュー)。何ものからも“解放”されて自らの思いをより自由に表現する、山下のアーティストとしての魅力はまだまだ奥深い。(村上夏菜)