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早川千絵が「PLAN 75」の制作経緯語る「若者と高齢者が分断されている」

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早川千絵

「PLAN 75」のシニア限定試写会が本日6月2日に東京・日本シネアーツ試写室で行われ、監督の早川千絵が登壇した。

第75回カンヌ国際映画祭でカメラドール スペシャルメンション(特別賞)を受賞した本作は、近未来の日本を舞台とした物語。75歳以上の高齢者に死を選ぶ権利を保障し、支援する制度“プラン 75”に人々が翻弄されるさまが描かれる。主人公・角谷ミチを倍賞千恵子が演じ、プラン 75の加入促進窓口を担当する市役所職員・岡部ヒロムに磯村勇斗、プラン 75加入者への電話連絡を担当するコールセンタースタッフ・瑶子に河合優実が扮した。

早川は本作を制作した理由について「ここ数年の間に『自己責任』という言葉をたくさん耳にするようになって、社会的に弱い立場にいる人への風当たりが強くなってきているなと思っていたんです。政治家や著名人が差別的な発言をする様子を目にして、憤りを感じていました。それが1つの理由です」と述懐。そして「私が子供の頃は長生きがよいことであると教えられたんですが、ここ最近は歳を取ることに対する不安ばかりがメディアであおられるようになった。高齢化の問題が解決に向かわない憤りが政府に向かうのではなく高齢者に向かっている。若者と高齢者が分断されている危機感があったんです」と続け、「近い将来プラン 75のような制度ができてもおかしくないんじゃないかと、問題提起したい気持ちからこの映画を作りました」と真摯に伝えた。

また早川は「あるときから75歳以上は後期高齢者と呼ばれるようになりました。人生の最後の最後ですよと言われているような気がして、そのネーミングを聞いたときに、とても嫌な気持ちがしたんです」と回想し、「人によって状況も違うのに、国が一律で年齢を区切ることに違和感があった。だから、この映画を作るときにあえて75歳以上という設定にしました」と語る。

イベント中には、本作を鑑賞した観客から「プラン 75に対して、若者の気持ちが揺れ動いていて、救われた気がした」「自分が仮にプラン 75を選択したら、息子たちは許さないのではないかと思った」と感想が飛ぶ場面も。早川は「若い2人、ヒロムと瑶子は、自分が対応したお年寄りがどういう運命をたどるか考えずに仕事をしている。でもあるとき、お年寄りと触れ合うことによって、初めて『本当にこの人たちは死んでもよいんだろうか?』ということに気付きます。その気付き、心の揺れがこの映画のある種の希望になっていると思っています」と言及する。

「真っ向からプラン 75という制度を否定する映画にはしたくなかった」と話す早川。「きっとこういった制度を求めている人もいると思います。その気持ちを否定したくない。ただ一方で、人は生きているだけで尊いという気持ちを込めたいという思いもありました」と本作に託したものを明かした。

「PLAN 75」は、6月17日より東京・新宿ピカデリーほか全国でロードショー。

(c)2022『PLAN 75』製作委員会 / Urban Factory / Fusee