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【おとな向け映画ガイド】人魚のような綾瀬はるかと泳げない長谷川博己『はい、泳げません』

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イラストレーション:高松啓二

今週(6/10〜11) の公開映画数は16本。うち全国100館以上で拡大公開される作品が『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』『はい、泳げません』『劇場版 からかい上手の高木さん』『ALIVEHOON アライブフーン』の4本。中規模公開、ミニシアター系が13本です。そのなかから、長谷川博己と綾瀬はるか共演の『はい、泳げません』をご紹介します。

『はい、泳げません』

カナヅチの大学教授が一念発起、スイミング・スクールに通いだし、まるで人魚のような女性コーチと出会います。演じるのは長谷川博己と綾瀬はるか、となると、たぶん、泳げるようになるまでの感動ドラマを涙、笑い、ロマンスありで描いた映画、と想像されると思います。まちがってはいませんが、少し趣がちがいます。確かに、水をこわがる男性というのはコミカルですが、そこが狙いではなく、挫折から立ち直ろうとする主人公たちの再生のドラマ。「泳ぐことと人生を重ねあわせている映画」(綾瀬はるかのコメントから)です。

原作を書いたのはノンフィクション作家、高橋秀実。泳げなかった高橋さんが、40歳をすぎてからスクールに通った経験を綴ったエッセーです。「子供の頃から、私はプールがこわくて仕方がなかった」と書かれています。私事ですが、私もプールにはよい思い出がありません! 中学1年の夏だったか、泳げるまで毎日学校のプールに通いました。息つぎができないので、たぶん、息をとめて泳ぎ、途中で何回か、犬かきのような感じで息をして死ぬ思いで課題の25メートルをクリアしたのを覚えています。

渡辺謙作監督も「はい、泳げません」のひとりだったそうです。原作を読み、これは映画になると考え、エッセーから物語へ大胆に改作。監督が脚本を担当し、カナヅチの主人公像を作り上げました。ただ泳げるようになりたかった、では弱い。スイミングスクールに通おうとまで思ったモチベーションが重要。「通わなければならないという強迫観念をどう持たせるか」に心を配ったと監督はいいます。スイミングスクールでの悪戦苦闘と、プールの外での、主人公のトラウマにからむサイドストーリーがうまく組みあわさって、ドラマは展開していきます。

長谷川博己演じる小鳥遊雄司(たかなしゆうじ)は哲学を教える大学教授。論理的で、カタブツ、まず頭で考えるタイプ。結婚経験(元妻役は麻生久美子)もあるのですが、いまは独身。シングルマザーの理容師・奈美恵(阿部純子)と恋愛中です。綾瀬はるかはコーチ・薄原静香役。彼女もまた、過去のトラウマを克服できていません。長谷川と綾瀬、映画では初めての顔合わせですが、大河ドラマ『八重の桜』では夫婦役。それ以来の共演です。

5割近くがプールのシーン。長谷川は実は泳ぎが達者で、下手に泳ぐ練習が大変だったといいます。水泳でもっとも大切な、息つぎを習得する過程なんて、見ているとなるほど、と思わせます。水中の撮影は2種類のカメラを効果的に使っています。どっしりとした水中カメラでは画質のきれいな映像を、機動性のあるGoProで動きのある映像を収めています。

逆にスポーツ万能に見える綾瀬はるかの方が水泳はそんなに得意ではないとのこと。原作者が通ったスクールのコーチでもあった高橋桂さんが水泳指導を担当。綾瀬とは以前CM撮影で泳ぎを教えたこともあるそうで、映画での水泳シーンはうっとりとするほど見事なものです。

泳げるようになるか心配する主人公に
「大丈夫。私が必ず泳げるようにします」。
「もし僕が溺れたらどうなりますか」ときかれたら、
「私が助けます」ときっぱり答える。
子どもの頃、こんな綾瀬はるかさんのようなコーチがいたら、人生は変わっていたろうな、そう思います。

(C)2022「はい、泳げません」製作委員会