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早川千絵監督が作品に込めた思いを語る 倍賞千恵子主演『PLAN 75』日本外国特派員協会 記者会見を実施 

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『PLAN 75』日本外国特派員協会 記者会見

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第75回カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション「ある視点」部門に出品され、カメラドール 特別表彰を授与された映画『PLAN 75』が6月17日(金)に全国公開される。公開に先駆け、6月7日に早川千絵監督、出演者のステファニー・アリアン、水野詠子プロデューサーが登壇し、日本外国特派員協会での記者会見が行われた。

本作は超高齢化社会に対応すべく75歳以上が自ら生死を選択できる制度<プラン75>が施行され、その制度に大きく翻弄される人々の姿を描いた衝撃作。脚本・監督は、本作が長編初監督作品となる早川千絵。是枝裕和監督が初めて総合監修を務めたオムニバス映画『十年 Ten Years Japan』の一篇『PLAN 75』を再構築、キャストを一新し、長編映画化した。そして本年度カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション「ある視点」部門への正式出品、カメラドール特別表彰授与という快挙を成し遂げた。

6月7日に行われた日本外国特派員協会での上映と記者会見には、早川千絵監督とマリア役のステファニー・アリアン、そして本作の企画立ち上げから携わっているローデッド・フィルムズの水野詠子プロデューサーが参加した。

司会者から改めてカメラドール特別表彰を授与されたことが言及されると、会場は拍手喝采に包まれた。カンヌ国際映画祭での思い出を尋ねられた早川監督は「今回、フランスとフィリピン、そして日本との合作なのですが、コロナ禍ということもあり、プロデューサーたちに直接会うことが出来ませんでした。カンヌで初めて、全員で集まれたことが何より嬉しかったです」と振り返り、ステファニーも「日本以外の国際映画祭に参加したのは初めてのことだったので、とても嬉しかったです。あっという間でしたが、非常に楽しい経験になりました」と笑顔を見せた。

また、水野プロデューサーは「私が早川監督と初めてお会いしたのは、2014年に早川監督がシネフォンダシオン部門に参加し、『ナイアガラ』がカンヌ国際映画祭で上映された時でした。密かなミッションとして、本作で再び一緒にカンヌに戻ってこられたらと思っておりましたので、その夢が叶ったことがまずは大きな喜びでした」と積年の思いを遂げることが出来た喜びを明かした。

是枝裕和監督が総合監修を務めた映画『十年 Ten Years Japan』で製作した短編を再構築する際に苦労した点を質問された早川監督は「もともと『PLAN 75』という長編映画を作ろうとしていたのですが、『十年 Ten Years Japan』に参加する事が決まり、その企画を映画化しました。短編の時は、問題提起をすることまでは出来たのですが、再び長編にする際にはそれだけでは足りないのでは?と思い、脚本を何度も何度も書き直しました」と語った。企画当初から水野プロデューサーとジェイソン・グレイ プロデューサー(共同脚本も担当)と共に時間を掛け、方向性を探り続けたという。

そして、「2019年にコロナ禍になり、もう現実がフィクションを超えてしまったと感じ、現実でこんなに厳しい状況が続いているのに、更に人々の不安を煽るような作品を作るべきなのだろうかととても悩みました。この作品で何を言うべきか?とテーマや要素をどんどん削ぎ落としていって、何か希望のようなもの……私たちがどのようにこれから社会を望むかという願いを込めるのかが大事だと気付いて、今の形になりました」と作品が変容していった経緯を明かした。脚本の執筆に足掛け3年を費やし、10稿以上も書き直したという。

さらに尊厳死について意見を求められると、早川監督は「この映画は大前提として、安楽死、尊厳死の是非を問うものではありません」と断言し、「人が死に対してどういう姿勢で臨むかというのは個人的なので他人が何か言うことではないと思っています」と自身の考えを説明。また、水野プロデューサーは「生きていること自体が尊いというメッセージを伝えたい。すべての命を全肯定したいと思って、この作品を作ってきました」と作品に込めた真摯な想いを訴えた。

フィリピン人同士の絆やコミュニティの描かれ方について尋ねられたステファニーは、「私は日本に移住して10年なのですが、この作品に参加したことで、フィリピンに住んでいる家族と密に連絡を取るようになったり、フィリピンの生活を振り返るきっかけになりました。監督はリアリティを持って、私たちフィリピン人のことを作品に反映してくれました。何かしようとしたら、フィリピン人のみんなが母親のように手助けしてくれる。家族のような付き合いになる部分をしっかりと描いてくれましたね」と嬉しそうに語った。

最後に、なぜ映画監督を志したのか?という質問を受けた早川監督は「小学生4~5年生の時に観た『泥の河』が原点でしょうか。自分の抱えていた言葉にならない、できない感情が映画の中で描かれていて、この映画を作った人は私の気持ちを分かってくれている!と思いました」と明かし、「映画のすばらしさは、世界を自分と同じ眼差しで見つめている誰かがいる。その誰かが世界のどこかに居る。時代や場所、時間は違うかもしれないけれど、そういったものを超えてコミュニケーションが取れるところだと思います」と映画という存在の魅力について熱く語り、記者会見を終えた。

『PLAN 75』
6月17日(金)公開