ヨナス・ポヘール・ラスムセン、「FLEE」の鍵はアミンとの友情
映画
ニュース
ヨナス・ポヘール・ラスムセン
「FLEE フリー」のオンライン舞台挨拶が6月10日に東京・新宿バルト9で行われ、監督のヨナス・ポヘール・ラスムセンが参加した。
本作では父を当局に連行され、生まれ育ったアフガニスタンから家族とともに脱出したゲイの男性アミンの半生が映し出される。アミンや周囲の人々の安全を守るためアニメーションで制作された。
ラスムセンは「自分の作品がこうやって日本まで届けられたんだな……と実感できて、とても光栄に思います」と挨拶し、「今、アミンは映画に出てきた家にパートナーとともに住んでいます。幸せに暮らしてはいますが、そうはいっても人生いい日もあれば悪い日もある。でも、この映画を通して自分の物語を語ることができたこと、それを世界中で多くの人が受け止めて葛藤を理解したことはアミン自身にとってとても大きな意味を持っているんだと思います」とアミンの現在について明かした。
劇中ではラスムセンとアミンの出会いの場面も描かれる。ラスムセンは「アミンとの友情は、この映画を作るうえで鍵となっています。彼自身の声で初めて語る言葉を、彼は僕に向けて語ってくれました。それは育んできた友情と、信頼があったからだと思うんです」と振り返った。
さらにラスムセンは、ロシアのウクライナ侵攻により世界の難民の数が増加していることについて、「もちろん制作しているときはこうなるとはまったく思っておらず、シンプルに自分の友人についての物語を作りたいという思いだったんです」と語りながら、「でもそんな中で、この映画を通して、私たちが“難民”と呼んでいる方々が、1人の人間であることを改めて思い出していただけたら」と伝える。
本作の英語吹替版では、リズ・アーメッドがアミン、ニコライ・コスター=ワルドウがラスムセンに声を当てた。配役を自身で行ったというラスムセンは「アミン自身の声にたくさんのストーリーテリングが詰まっています。だからこそ、それを別の方の声で……というのは、最初は少し違うのではないかと思っていました。でも、英語のバージョンを作ることでよりたくさんの方に届けることができるのならと考え直したんです」と述懐する。
イベントでは、日本のアニメーションに関する質問も。ラスムセンは「たくさんの素晴らしい作品や監督が浮かびますが、やはり宮崎駿監督ですね。デンマークでも宮崎監督の作品はいくつも上映されています。僕には娘が2人いるんですが、2人とも『となりのトトロ』の大ファンなので我が家はトトロだらけなんです(笑)」と打ち明けた。
最後にラスムセンは、「この映画は、世界のいろいろな場所で多くの方に受け入れていただいてきました。その理由が、良質なフィルムメイキングであると思っていただけているのであればうれしいです。そして、この映画が普遍的な物語だからではないかと思います」と述べ、イベントを締めた。
第94回アカデミー賞の国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞、長編アニメーション賞にノミネートされた「FLEE フリー」は全国で公開中。
※一部記述を修正しました。
(c)Final Cut for Real ApS, Sun Creature Studio, Vivement Lundi!, Mostfilm, Mer Film ARTE France, Copenhagen Film Fund, Ryot Films, Vice Studios, VPRO 2021 All rights reserved