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物語は後半戦に突入 中島健人『ドロ刑』第6話、東野圭吾を思わせる感動エピソードに

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リアルサウンド

 被害総額1,500万円にも及ぶ、65件の窃盗で逮捕された被疑者・鳥飼和子(余貴美子)の“引き当たり捜査”を命じられた斑目(中島健人)だったが、実際は美希(石橋杏奈)の補佐という名の雑用係に意気消沈する。煙鴉(遠藤憲一)から「逃亡の危険も伴う」と忠告された斑目は、完全に鳥飼のペースに乗せられ、うまく利用されてしまうことに。しかし斑目は、空き巣の常習犯が万引きで逮捕されたということに妙な違和感を覚えるのだ。

 11月17日に放送された日本テレビ系列土曜ドラマ『ドロ刑 -警視庁捜査三課‐』第6話。プロが手口を変えるのは腕が衰えるなどの事情があるという、煙鴉から以前受けたアドバイスが活かされ、それが事件解決への糸口となる。結論から言ってしまえば、義理の娘のことを思って病に倒れた夫の罪を被る被疑者という、どことなく東野圭吾ミステリーを思わせる感動エピソードの様相を呈していた。先週の斑目と“白昼の蝙蝠”との友情譚につづいて、ポップでコミカルな筋書きの本作にとって、そのようなドラマ性はかなりバランスが良い。

 今回のエピソードには2つの聞きなれないワードが登場した。ひとつはストーリーの軸となる「引き当たり捜査」。そしてもうひとつは、鳥飼の話を聞いた斑目が仮説として立てた「クレプトマニア」という言葉だ。前者はいわゆる「実況見分」と呼ばれるもので、犯罪捜査規範第104条に明記されている通り、実際に犯行が行われた場所に被疑者を連れて行き、供述内容に相違が無いかなどを確認するというものだ。

 よく刑事ドラマで耳にする「現場検証」とは令状の有無という違いがあり、あくまでも「実況見分」は任意によるものだ。それゆえ斑目たちが訪ねて歩く事件現場の家々にも捜査協力の依頼が“任意”という形で行われていて、誰かしらが許可を出す流れがあったのだろう。しかし、行く先々で罵声を浴びせられたり水をかけられたりする鳥飼。ここには犯罪者に対して向けられる世間の目という意味合いも込められているだろうが、それと同時に、家族であっても決して同じ方向を向いていないという点が、鳥海の家族にあった不協和と重なって見える。

 また「クレプトマニア」とはいわゆる「窃盗症」という精神疾患のひとつとして定義されていて、DSM-5(精神障害の診断と統計の手引き)による診断基準では金銭的価値のためでなく窃盗の衝動に抵抗できなくなることであったり、それから得られる緊張感や達成感を求めてしまう、いわば「窃盗」という行為を欲して「窃盗」を繰り返してしまうということだ。劇中で美希が語るように「盗んだものへの執着がない」という特徴もあり、近年社会問題とされている高齢者の万引きなども、その一例としていわれているのだ。

 ところで今回は、すでに逮捕拘留されている窃盗犯の内情に迫るというプロットということもあって、煙鴉からのサポートもアドバイスもなく物語が進んでいった(美希を襲った男の情報を得るだけに留まった)。斑目が13係の心配を何故してくれるのか問うと、煙鴉は「ちゃんとしてほしいからだよ。お前らには」と答える。そしてラストには「GOOD BYE」のメッセージを斑目に残す。煙鴉は斑目と13係の成長を見守りながら、自分のことを捕まえてほしいと思っているようにも見える。いずれにせよ、ドラマも後半戦に突入し、大きく動き始めたようだ。(久保田和馬)