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リセット・オロペサ いま一番勢いがあるソプラノの十八番にしびれる

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リセット・オロペサ Ph. Fabrizio Sansoni

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知名度はまだヨンチェヴァにおよばないかもしれないが、勢いではけっして負けていないのが、スペイン系アメリカ人のソプラノ、リセット・オロペサだ。

ここ最近だけでも、英国ロイヤル・オペラなどで歌ったヴェルディ《リゴレット》や《椿姫》、ウィーン国立歌劇場やチューリッヒ歌劇場でのドニゼッティ《ランメルモールのルチア》等々で、劇場が驚くほどの圧倒的な成功を収めている。

たとえば、英国ロイヤル・オペラでの《リゴレット》のジルダ。オロペサの艶と輝きがある声は、どの音域でも声質が一定で、常に自然に響きわたり、すみずみまでコントロールが行き届いている。そこに声にニュアンスや色彩ばかりか、場面に応じて温もりや冷たさまでが載せられ、さまざまな感情が浮き上がる。彼女の歌唱を得て、ジルダの悲劇がどれほど深まったことだろうか。カーテンコールもオロペサの圧勝だった。

だから世界中が放っておかない。先々まで世界の一流と呼ばれる歌劇場でばかり、主役を歌うスケジュールがぎっしりと詰まっている。そんな合間を縫って来日してくれるのだから、ほんとうにうれしい。

しかし、正確にいえば、オロペサは初来日ではない。2018年の夏にイタリアでインタビューした際、日本が好きで、ご主人と何度か訪れた旨を語っていた。もっとも、あくまでもプライベートの旅行だったそうだが。そして和食好きを強調したうえで「私の声は豆腐のようだ」と言っていた。味つけ次第でいかようにも変化する、ということらしい。

事実、オロペサはヘンデルなどのバロック・オペラからロッシーニ、ドニゼッティ、ベッリーニ、ヴェルディ、そしてフランス・オペラまでレパートリーが広いが、作品のスタイルに合わせて声を柔軟に変化させ、表現すべき感情に合わせて声に色彩をたくみに添えることができる。

また、コロラトゥーラと高音に聴かせどころがある、比較的軽いレパートリーを歌うことが多いオロペサだが、同様のオペラを歌うほかの歌手とくらべ、声量のダイナミックレンジが圧倒的に大きく、どの音域でもすみずみまでコントロールが行き届く。その結果、どんな役も一流料理人が手をかけた豆腐のように、理想的な味わいになるのである。

もともとはフルートを吹き、歌は勉強する気がなかったというオロペサだが、大学入学後は本格的に声楽を学び、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場のオーディションで優勝したのが2005年。はじめて舞台に立ったときは、まだ22歳だった。

それからかなりのキャリアを積んでいるが、まだ40歳にも満たない。稀有な才能に適切な経験が重なって、いま花盛りのオロペサ。プログラムに並んだ曲は《リゴレット》も《椿姫》も《ランメルモールのルチア》も、オロペサを聴くなら歌ってほしい役であり、いまならオロペサでこそ聴きたい役である。しかも、ルカ・サルシという最高のバリトンを相手に二重唱まで味わえる。またとない贅沢な機会である。

リセット・オロペサ&ルカ・サルシ 
~華麗なるオペラ・デュオ・コンサート~
指揮:フランチェスコ・ランツィロッタ 演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
9月23日(金・祝) 15:00
9月25日(日) 15:00
東京文化会館
https://www.nbs.or.jp/stages/2022/singer/03.html

文:香原斗志(オペラ評論家)

■チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2208543

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