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北村龍平監督×笹路正徳×鹿沼絵里×古尾谷雅人が参加 『丑三つの村』トークショーイベントレポート

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『丑三つの村』サントラ発売記念トークショーイベント

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2022年6月14日、新宿ピカデリーにて、1983年公開の映画『丑三つの村』のオリジナル・サウンドトラック発売記念として、一夜限りのリバイバル上映イベント&トークショーが開催された。

かねてから本作の熱狂的ファンだった映画監督の北村龍平監督の熱意の元、監督自らの手によりサウンドトラックを発売することになった。また、映画公開当時はR指定だったために映画館で観ることができなかったことから、「どうしても映画館で観たい!」という北村監督の想いにより、ついに当時も公開した新宿ピカデリーでの一晩限りの上映会を実現することとなった。

この日は、当時音楽を手掛けた笹路正徳も来場。今では聞くことのできない当時の音楽制作エピソードも飛び出した。さらに、主演の古尾谷雅人の妻で女優の鹿沼絵里、息子で俳優の古尾谷雅人(2代目)も参加し、ここでしか聞けない貴重な話が盛りだくさんの充実したトークイベントとなった。

北村龍平監督(以下、北村):急な告知で平日にこんなたくさんの方が来てくれて嬉しいです。
中学生の頃にこの映画が気になっていたのですが、僕の出身の大阪では梅田ピカデリーで上演していました。当時はこの映画は成人映画扱いだったので、入れてくれなかったんです。映画館でゴネたんだけど入れてくれなかった。仕方ないのでパンフレットだけを買って帰り、1年後に発売になったビデオを父親に買ってもらってテープが擦り切れるまで観ました。
その後、サントラマニアの聖地のお店、「すみや」で予約して待っていたら、廃盤になったと連絡があった。サントラがいつ出たのかわからないまま39年が経ち、いつまで待っても出ないので自分で出すしかないと思い、笹路さんに激熱なラブレターを書いたのが1年前です。笹路さんとズームで対談して盛り上がった勢いで、劇場で観たいとお願いしてついに夢が叶いました。
笹路さんはユニコーン、スピッツ、ブリリアントグリーンなど名だたるアーティストを手掛けたプロデューサー。今日はありがとうございます。

笹路正徳(以下、笹路):こんにちは。大画面で見るとやはり違いますね。映画ができた時に現像所の試写室でみたのとは随分印象が違っていました。

北村:ラスト20分は、なかなかえげつないシーンです。これを正月第二弾で公開したとはすごい。家でベータで見た時から音楽がすごいと思っていました。これを3日で作曲し、2日で録音なんて信じられない!

笹路:当時自分は28歳だったが、今見ても新鮮。今この映画に音楽をつけてもこうならないと思う。映画音楽はシーンにストレートに音楽をつける場合と、違う要素をつける場合あるが、この作品は後者だと思う。

北村:殺戮シーンには音楽がついてないですよね。そのおかげで緊張感が出てドラマチックな曲が最後にガーンとくる。斬新でワンアンドオンリーだと思います。

笹路:村を閉鎖的な空間にしたいという思いがあったんです。大きな世界の出来事にしなかった。狭い村の感じを出したかった。

北村:生々しいシーンだけどシンセサイザーが異空間を出している。最後、継男が殺戮の準備するところなど、すごくかっこよかった。

笹路:盛り上げてやり過ぎないように、青春の苦しみがある中での盛り上げに見えるように心がけました。

北村:古尾谷さんの演技は、クレイジーな人殺しではなくて、いろんな情念があって、それをサウンドが不思議な形で増幅している。壮絶な演技です。

『丑三つの村』サントラCDジャケット

北村:今日はここでスペシャルゲストを呼んでいます。主演の古尾谷雅人さんの奥様・鹿沼絵里さんと息子の古尾谷雅人さんです。

鹿沼絵里(以下、鹿沼):息子はちょうどあの時おなかにいたんです。“鬼の子”です。映画が1月に公開して1月に生まれました。家で、映画に出てくる耳をおなかにつけるシーンの練習にされました。あの頃、撮影から帰る度に、今日は1人殺した、2人殺した、と聞かされていました。

北村:最後のショットガンが当時モデルガンで売っていた。モデルガンを2つ買ってカスタマイズしようとしたんだけどできなくて。その後、発売されていたのだけど手に入らなかったんです。

鹿沼:家に、劇中で使ったゲートルがまだあるんです。良かったら監督にあげます。

古尾谷雅人(以下、古尾谷):自分は映画館では観たことがなくて。クライマックスは好きなシーンなので、かっこいいな、と思って今日観ていました。

鹿沼:(旦那は)狂気になる役と向き合って大変だった。田中監督とロケ地で月をみて飲んだ話を楽しそうにしていました。監督にとっても旦那にとっても、お互いに節目の映画だったんではないかと思います。今日久しぶりに観てみて、「彼はすごいな」、とまた思いました。私からみて、旦那は無駄な芝居がない。目の動き一つにしても違和感なくて、本当に人を殺しそうな危機感があって。すごい俳優だったと思う。

北村:(継男が)死ぬ前の、唄いながら銃をくわえる顔が、少し笑いながら切なさとやり切った感とかいろんなものが表現されてる。あの曲が好き。普通だとあんなロックな曲はかけないのではないかと思います。

笹路:80年代はシンセサイザーとロックが新鮮な時代だった。普通な感じにはしたくなかった思いはありました。映画がロックな映画だったのだと思います。

北村:みんなが普通じゃないものを作ろうとしている思いをとても感じます。必ずしも現場の全員のモチベーションが同じじゃない時はどうやって作ったんだろうと思います。田中監督と古尾谷さんが引っ張ったんだと思いますが。

鹿沼:田中監督とは石井隆さん原作の『天使のはらわた 奈美』で主演してご一緒したんです。監督からは、「気持ちだよ、なんでも気持ちだ、目の奥の奥の奥なんだ」と言われました。その時は意味がわからなかったけど映像になってわかった気がします。魔術の言葉という感じ。俺を信じて、という。それと旦那がうまくかみ合ったのだと思う。現場はさぞピリピリしていたんだじゃないかと思いますよ。(古尾谷さんは)テストから本気で来るからケガするよ、と言われていました。この作品でも大場久美子さんとのシーンでは、口の中が切れてしまったみたいです。大場さんも女優魂があったんだと思う。

北村:女優がみんな美しくて色っぽい!そして石橋さんが悪すぎる。徹底していますよね。夏八木さんの役も殺してほしいくらいでしたよ。

鹿沼:(殺されてしまった)おっちゃん役はかわいそうだけど、救いですよね。(継男が)おっちゃんは悪くない、というところが良い。

古尾谷:この映画は高校生の時、父と一緒に見ました。すんなりみれた。かっこいいし、懐かしい。父は若いですね。当時25歳です。

北村:古尾谷さんの代表作だと思います。古尾谷さんは、将来この作品を自分で監督して息子を出演させたいという夢を持っていたそうですね。

鹿沼:ロックですよね。旦那は自分で付け加えたかったことをやりたかったんじゃないかと思います。でも、大きな画面で見るのはやはり良いですね。今日は帰ってサントラを聴いて寝ます。音楽を改めて聴くとすごく良いことを再確認しました。

笹路:今日観ていて、田中監督が欲していた異空間さがあったんだと感じました。若い頃じゃないとできない音楽だったと思います。

北村:サントラには未発表なものも収録されています。今日は劇場で観たいという自分の夢が叶って、皆さんと観れて嬉しいです。名古屋でも上映され、フィルム上映なのでぜひ見に来てほしいです。今日はありがとうございました。

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