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映画『メタモルフォーゼの縁側』芦田愛菜×高橋恭平(なにわ男子)インタビュー「幼なじみって不思議な関係ですよね」

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『メタモルフォーゼの縁側』 (C)2022「メタモルフォーゼの縁側」製作委員会

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BL漫画を介して出会った17歳の女子高生と75歳の老婦人の歳の差58歳の友情を描く、映画『メタモルフォーゼの縁側』が6月17日より公開される。

芦田愛菜が演じる高校生の佐山うららは、周囲の同級生とは馴染めず、唯一の楽しみが毎日こっそりBL漫画を読むこと。そんなうららの前に、宮本信子が演じる夫に先立たれて一人暮らしをしている市野井雪が現れる。BL漫画がどういうものかも知らずに興味を持った雪に、うららがBL漫画のことを教えるうちに二人の間には友情が芽生えていき……。

友だちと呼べるような存在がいないうららだが、高橋恭平(なにわ男子)扮する幼なじみの河村紡とだけは何の気負いもなく話すことができる。うららとは違って友だちも、彼女もいる紡だが、何かとうららのことも気遣っている。

そんな微妙な“幼なじみ”という関係を演じた、芦田と高橋にインタビュー。お互いの印象や現場での出来事、そして二人の人生を動かした“好きなもの”などを明かしてもらった。

私ももっと好きなものを好きって言おう

――本作の第一印象を教えてください。

芦田 原作漫画も読ませていただいて、「このお話、好きだな」って。うららと雪(宮本信子)さんが出会って、自分に自信が持てないうららを雪さんが温かく受け止めてくれて、好きな漫画の話をすることで生き生きとしていって。

その姿を見ていると、私ももっと好きなものを好きって言おうとか、自分で自分のことをもっと認めてあげてもいいのかなとか、背中を押してもらえました。

日常の一コマが本当に温かくて、うららが雪さんに受け止めてもらったように、私もこの作品に受け止めてもらえたような、包み込まれるような気がして。本当に素敵なお話で、ぜひ、演じさせていただきたいと思いました。

撮影中も原作を読み返しながらうららの表情とかを見ていたんですけど、そこから「明日も頑張ろう」って思えることもありました。

高橋 僕の中ではこのお話は「新しい」なと。(うららと雪は)何歳も年が離れているけど、何かのきっかけでつながりができるということが大事に描かれていると思いました。

自分が演じた紡はうららの幼なじみなんですけど、僕自身、子どものときの友達が引っ越してしまったりして幼なじみがいないんです。だからドラマとかの物語ではよく見ているけど、「実際の幼なじみってどういうもんなんやろ」とかはめっちゃ考えました。

このお話は男女の恋愛ではないですけど、また違った形の青春って感じで、これもいいなって。僕、普段は絶対にそんな顔しいひんやろうっていう顔で、ニヤニヤしながら原作や脚本を読んでいました。

――演じた役柄にはどんな想いがありましたか。

芦田 うららは「自分って周りからズレてしまっているのかな」とか、「うまくヒットできていないんだろうな」って、そんなふうに感じている子だと思っていて。

それは人との距離感とかに現れてくるのかな?と思っていたんですけど、そのズレ感みたいなものを表現するのが難しかったです。

高橋 狩山(俊輔)監督とは前にも(ドラマ『メンズ校』テレビ東京系)ご一緒させてもらっていたので、僕の人となりを知ってくださっていて、紡は「演じるというより、高橋恭平を出してほしい」と言われて。

僕自身、紡とは重なる部分が多いと感じていたので、いかに考え過ぎずに自分を出せるか、ということを意識していました。

――紡と高橋さんは似ていらっしゃるんですね。

高橋 紡は基本的に明るくて、誰にでも優しいけどちょっと抜けているところもあって、愛されるキャラクターで。

僕が愛されているとは思っていないですけど(笑)、明るかったり、能天気だったり、ちょっとおバカな感じが似てるのかなって。だから自分では勝手に演じやすいな、と思っていました。

「何か話さないといけない」ってずっと考えてた

――うららと紡の距離感をお二人で話し合ったりもしましたか。

芦田 高橋さんに直接相談することはなかったんですけど、最初にお会いしたとき、スタッフさんと一緒にお話をしていて、その輪に私も混ぜてくださったんです。すごくフレンドリーで誰とでも分け隔てなく接してくださる方なんだな、と思って。

「幼なじみと一緒にいるうららってどんな感じなんだろう?」と、悩んだところではあったんですけど、そういうふうに高橋さんが接してくださっているうちに自然とその空気感を感じられるようになったと思います。

高橋 実際のところ、僕、めっちゃ人見知りなんです。だから「何か話さないといけない」ってずっと考えて緊張もしていたので、そんなふうに捉えてもらっていたのは嬉しいです(笑)。

――うららと紡の幼なじみの関係をどのように捉えていましたか。

芦田 実は私も幼なじみと呼べるような人はいなくて。だから二人の関係性がうらやましいなって思いました。

幼なじみって不思議な関係ですよね。家族でも、きょうだいでも、恋人でも、友だちでもないし。でも、その人のために何かしてあげたいと思えたり、隣にいると心地良かったり。お互いのことを思いやっている関係が素敵だなと思いました。

うららって人付き合いが苦手で、心を許せる存在もあまりいなくて、そんなときに雪さんと出会ってすごく世界が広がるわけですけど、紡は元からそういう存在というか。

「この人は自分のことを受け入れてくれる」「ありのままの自分でいてもいいんだ」って思える存在だったと思うので、その距離感、「うららが疲れずにいられる存在ってどういう感じなんだろう?」というのは結構考えました。

高橋 僕も幼なじみがいないので、幼なじみがいる友だちに「どういうもん?」って聞いたりしました。それで、何でもない、しょうもないことでも気軽に話せるのが幼なじみなのかなって。話を聞きながら「そういうことね」みたいに段々とわかってきました。

紡とうらっち(うらら)の関係性で言うと、何でも話せるような仲で、紡がうらっちを気にかけたりもしていて。うらっちの家に紡が行くシーンとかは、心を許し合ってる存在なんだな、と思ったし、お互いに信頼し合っているんだろうな、と感じていました。

――紡には英莉という恋人もいますよね。うららとの違いをどう感じていましたか。

高橋 彼女の前だと強がってしまうけど、うらっちの前では強がらず、素でいられる。そこが差なのかな、と思っていました。

高橋さんのおかげでありのままのうららが表現できた

――現場の雰囲気はどうでしたか。

高橋 僕はお芝居の環境に慣れていなかったので、初めの頃はド緊張していました。いかに愛菜ちゃんと接したらいいのか、と。

(なにわ男子の)メンバーから、演技をする上で仲良くなった方がいいって聞いていたし、「話題を見つけて、ちゃんとお前から話せよ」って言われていたので。それでしゃべりかけてみたらすごい笑顔でうなずいて、話を聞いてくれました(笑)。

芦田 確かそのときは(高橋が)サウナにハマられていて。好きなサウナの話を伺った記憶があります(笑)。

高橋 でも監督からは撮影期間は「サウナに行くな」って。「好きなものは我慢しろ」って止められていたんですよね(笑)。

――空き時間はお二人でお話することも多かったのですか。

芦田 監督、スタッフさんも交えて皆さんで談笑している機会が多かったです。

高橋 関西弁の話題で盛り上がったり。僕が関西っぽくない、みたいな。周りに染まりやすくて標準語がよく出ていたので(笑)。

――お互いに対して現場で感じたことを教えてもらえますか。

芦田 まずはさっきもお話させていただいたように、高橋さんが分け隔てなく接してくださったので、自然と紡と一緒にいるときのありのままのうららが表現できたような気がします。それは本当に高橋さんのおかげです。

それから、一度、高橋さんが朝に撮影があって、途中で違うお仕事で抜けられて、また戻って来られたことがあって。

それが雑誌の撮影で、髪型をアンニュイな感じに、と言われたけど、そのときの紡の髪型が前髪多目の感じだったから、そのヘアスタイルを保ってきました、とおっしゃっていて。

役に対する真摯な姿勢が素敵だな、と思いましたし、監督とお話をされているときにも、そういう感じを受けていました。

高橋 僕は紡を貫かないと、と思っていただけなんですけど、そういうふうに見ていただけていたのは嬉しいですね。

僕はやっぱりまだお芝居の現場は緊張するので、そこで愛菜ちゃんが優しく接してくれたことは救われました。僕が間違っても笑ってくれるし。スタッフの皆さんも含めて、温かい方ばかりだったので、最後まで楽しんで撮影できました。

――芦田さんとのお芝居で印象に残っていることはありますか。

高橋 もう全部で、すべてに置いて学ばなければいけないところが多かったんですけど、僕が泣くシーンがあって。そのときの泣いてるつむっち(紡)への声の掛け方や寄り添う感じが、言葉以上の重みをもって感じられたというか。本当にうらっちなんだな、って。

芦田 そう言っていただけて嬉しいです。ありがとうございます。

高橋 愛菜ちゃんは普段は大人っぽい感じなんですけど、お芝居に入るとうらっちの独特の空気感を醸し出せるんですよね。

――印象的だったシーンを教えてください。

芦田 好きなシーンは少しマニアックなところなんですけど(笑)、原作にも同じシーンがあるのですが、雨が降っていて、落ち込んでいるうららに雪さんが傘を渡して「人間って思ってもみないふうになるものだから」と声をかけるところです。そう言われてうららが傘を開くと、内側が花柄になっているんです。

雨ってちょっとつらいイメージがあると思うんですけど、その中に思いがけない幸せがある、みたいな。そういうものが詰まっている気がしていいな、と思いました。何か素敵ですよね、暗い中にぽっと赤色が灯る感じが。

あと、これは映画オリジナルのシーンだと思うんですけど、紡とうららのコミティアシーン。その関係性が素敵だな、と思いましたし、紡のいいところだなって。うららは幼なじみに助けられているんだなって、思いました。

高橋 僕は(恋人の英莉と)別れるシーンが印象に残っています。あそこは紡の感情が一番変化する場面でもあるので、お芝居をした印象としては強かったです。

泣く演技もあって、観る人にただ泣いてる、と思われてしまうのは嫌なので、そのときの感情をどうやったら伝えられるのか、「泣くのもわかるよ」って、思ってもらえるように考えました。

芦田 私はうららとしてそれを見ていたのですが、やっぱりつらかったです。実はそのとき、うららとしては嬉しいことがあったんですけど、自分をいつも受け止めてくれる存在の紡が落ち込んでいるのがすごくつらくて。

なんて声をかけてあげたらいいのかわからない、そういう気持ちが高橋さんのお芝居を通して自分の中にひしひしと浮かんできました。

グループになったときにまた強くなれたら

――この作品を通して学びを得たことがあれば教えてもらえますか。

高橋 僕は前回、狩山監督とご一緒させてもらったときが、ほぼ1からの状態のお芝居だったので、すべてを狩山監督に教わったようなものだったんです。

そのときによく「緊張しているときは跳べ」って、その場で声を出しながらジャンプするように言われていて。今回の撮影中も緊張しているな、と思ったときはやっていました。身体を使うことで緊張がほぐれるんですよね。

実は前回はあまりよくわかっていなかったんですけど、今回やってみて緊張がほぐれるのを実感しました。

――演技での緊張と、ライブでの緊張は違うものなのですか。

高橋 全く違います。慣れているというのもあるんですけど、何千人の前でライブをするよりも、相手と向き合って話すお芝居の方が緊張します。

というか、ライブはもう(ジャニーズ事務所に入所した)当初からずっとやってきているものなので、緊張しているかもわからないというか(笑)。自分でも強みに感じているところもあると思うんですけど、お芝居は全然経験が少ないので。

――芦田さんも何か学びを得たことはありますか。

芦田 今考えると、自分の中にいろんなことを思い出させてくれた作品だったと思います。それこそ高橋さんが役と向き合う姿勢から、うまく言葉で表現ができないんですけど、役と真摯に向き合って、自分がその役と対峙していく感覚であったりとか。

あとはお話を通して優しくなれていない自分に気づいて、優しくなろう、と思えたり。自分のことで精一杯になってしまうとそういうことって忘れがちじゃないですか。

だけど雪さんのような温かい人に出会えると、自分も優しい気持ちになれて、私も誰かにとってそんな存在になりたいって思える。そんな温かい気持ちや、真っ直ぐに突き進む気持ちを思い出させてくれました。

――うららは好きな漫画を通して人生が動き出します。お二人は何かを好きなったことで、何かが変わった、という経験はありますか。

高橋 僕の中で今、ぱっと出てきたのはやはりジャニーズでの活動なんですけど。最初の頃は親や事務所の方に言われるままにやっていたのが、段々と楽しいって気づいてくると見えるものが違うなって感じてきて。

誰もが経験できるようなことではないことを経験させてもらえている。それまでの僕の人生の中ではあり得なかったことですから。そう考えると1日1日、1回1回のお仕事がすごく大事だという考えに変わっていきました。

――そう思えるようになったきっけかのようなものがあったのですか。

高橋 周りの反応ですかね。「見たよ」とか、「今日も出てたね」とかって言われると、やっぱり頑張る力にはなりましたね。1、2年目はホントにチヤホヤされるだけで嬉しかった(笑)。単純な理由でしたね。

――そこからCDデビューも果たして、また何か変わってきていますか。

高橋 デビューをしたことでステップが変わったと思います。Jr.のときにはできなかった経験、体験もこれからどんどん出てくると思います。今回の映画のお仕事も、次にグループで仕事をするときに、何かの力に変わっていたらいいな、と。

個々で力を伸ばして、グループになったときにまた強くなれたらいいなという感覚で、今は個人の仕事を頑張っています。

――芦田さんも何かそのような経験はありますか。

芦田 私は高校生になって世界史を学び始めたら、いろんな世界が繋がっていくのがすごく面白くてハマってしまって。そしたら同じようにハマった友だちがたまたまクラスにいて、すごく仲良くなれたんです。

それから世界史を好きになったことで西洋絵画とか、今まで全く目を向けられていなかった分野にも目が向くようにもなって。好きなもので世界が広がることってあるんだなって、実感していて。好きなことで変われるって素敵なことだなって思いました。

――世界史の何にハマったんですか。

芦田 一つの国について深く学ぶのも楽しいんですけど、相関関係が見えてくるとさらに面白くて。この国でこれがこうなったから、こうなったんだ、とか、こことここがやり取りをしていたから、こうなんだね、とか。すいません、めっちゃ硬い話をしちゃって(笑)。

高橋 まだ高校生ですよね(笑)。

芦田 (照笑)。

演じた芦田さん自身が「私ももっと好きなものを好きって言おうとか、自分で自分のことをもっと認めてあげてもいいのかなとか、背中を押してもらえました」と語る本作。観た人の心にそっと寄り添ってくれるような作品となっています。

またうららと紡の関係も、恋愛ではないものの、お互いを想い合う気持ちが、観ていてとても微笑ましく映ります。ぜひ劇場で、誰かを少しだけ大切に想うことで生まれる温かさを感じてください。

取材・文=瀧本 幸恵

<作品情報>
映画『メタモルフォーゼの縁側』

全国公開中

『メタモルフォーゼの縁側』ポスター

公式サイト:
https://metamor-movie.jp/

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