Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
ぴあ 総合TOP > “あの時の作品”として記憶していただけたら 海宝直人×西川大貴 コンセプトアルバム『雨が止まない世界なら』発売記念インタビュー【後編】

“あの時の作品”として記憶していただけたら 海宝直人×西川大貴 コンセプトアルバム『雨が止まない世界なら』発売記念インタビュー【後編】

ステージ 音楽

インタビュー

ぴあ

左から)海宝直人、西川大貴

続きを読む

フォトギャラリー(6件)

すべて見る

俳優、クリエイター、YouTube「クロネコチャンネル」のホスト……とマルチに活躍する西川大貴が、コロナ禍に書き上げたソングサイクル・ミュージカル『雨が止まない世界なら』。昨年4月の朗読動画公開、7月のワークショップを経て、この度コンセプトアルバムを発売する運びとなり、21名の豪華キャストが集結した。ぴあアプリでは、キャストのひとりである海宝直人と西川をレコーディング現場でキャッチ! 初対面エピソードや日本オリジナルミュージカルへの熱い思いを聞いた前編に続き、後編ではふたりの次なる共演作『ミス・サイゴン』を深掘りする。

2年越しの『ミス・サイゴン』出演、それぞれの想い

――新クリスの海宝さんと新トゥイの西川さんの対談ということで、ここで『ミス・サイゴン』についてもお聞きできたらと。そもそもなぜオーディションを受け、そして2020年公演の中止を経て、どんな思いで今年の公演への出演を決められたでしょうか。

海宝 僕は子役から大人の俳優になって、初めての舞台が『ミス・サイゴン』2008年公演のアンサンブルでした。観たことがないまま出演したので、客観的に観たらどう思うかがもはや分からないんですけど(笑)、自分にとって大切で大好きな作品。もう一度向き合いたい思いがずっとあって、当時からクリスをやってみたかったので、2020年公演のオーディションを受けました。

西川 僕は2012年と14年にアンサンブルで出演してて、トゥイの稽古場代役もしてたんです。初めて自分の中でフィットした感覚があって、「やりてーぞ」と(笑)。それで同じく2020年のオーディションに受かって、ふたりで稽古もしてたんですけど、まあああいうことになって。

海宝 段取りが付き始めたくらいで中止が決まって、稽古も終わっちゃったんだよね。今年の公演に出るべきかどうかは、正直悩んだところで。既にお話をいただきほぼ出演する方向で調整を進めていた作品もあったのですが、やはり「サイゴン」への思いを精算しないとちょっと、前に進めないかなと思って出演を決めました。

西川 僕は2020年に段取りだけでも稽古したことで、感情と肉体が音楽に追いつかないことに気付いたので、いつか来る公演に向けてずっと特訓してましたね。

海宝 トゥイ、大変だからね!

西川 もうね、音楽がずっっっと追い立ててくるから、従っちゃうと血管が切れそうになるんですよ(笑)。そこをクリアするために、自分なりに課題を設けて練習していて。音の高さ、強さ、リズム……すべてにおいて、急き立てられる感じがする音楽ですね。

海宝 曲のエネルギーが本当にすごいよね、どのキャラクターにしても。歌稽古をしてても、求められるのはとにかく「出す出す!」ってこと(笑)。しんどいけど、でもベトナム戦争の時代を生きてた人たちのテンションを表すために、必要なエネルギーなんだと思います。

西川 そうなんだよね、今のうちらとは全然違うところにいる人たちの話だから。

海宝 本当に、みんなが非日常の感覚だからこそ起きたお話。音楽もそういう、平和な時代から見ると異常な状態にあることを表してるんだよね。

西川 そうそう。でも中にいる人たちにとっては、その異常が“当たり前”になってるわけで。そう見えるところまで、ボーカルも芝居も持っていかなきゃいけないと思ってます。

極限状態が“当たり前”の異常さが伝わるように

――海宝さんがトゥイは大変と仰っていたのは、具体的にどういう……?

海宝 トゥイは基本的にこう……発狂してることが多いので(笑)。クリスは前半、やんわりラブソングな瞬間もあったりしますけど、トゥイは常に“面で押してくる!”みたいなキャラクターじゃないですか。いやもちろん、トゥイの人生にはそうじゃない瞬間もあるんだろうけど、劇中で切り取られてるのはヤバい事態の時ばっかりだから。

西川 圧のないシーンがないんだよね(笑)。

海宝 そうそう(笑)。登場して、徐々に感情が高ぶってトップに行くんじゃなく、常にトップギアから入る感じだから、役者としてはものすごく疲れるだろうけどやりがいのある役だなって。

西川 そうね。でも俺からすると、クリスのこうなんか……表面張力な感じも大変そうだなと(笑)。歌もさ、特にラストナイト(♪世界が終わる夜のように)とか、ものすごい高音があるわけじゃないんだけど、ずっとなんかキリキリしてるじゃない。

海宝 あの曲は確かに、ずっとイヤ~なところにいるね(笑)。ほかの曲のもっと高い音なら出る人でも、高くはないところに張り付いてるラストナイトは歌えない、ってことはあるみたいです。だからオーディションでも、課題のソロ曲のあと、ラストナイトも確認させてくださいって。

西川 あれは本当、ヤバい曲だと思うわ(笑)。

海宝 でもそれもきっと、あの時代のあの状況の緊張感を表すためのもので。美しくてロマンティックだけど、テンションはどこかおかしいキムとクリスを、あのメロディーとキーが表現してるんだと思います。本当、よくできた音楽ですよね。

――クリスと言えば、ともすれば“女性の敵”“ダメ男”といった見方をされてしまうという難しさもはらんだ役ですね。

海宝 それもやっぱり、「現代人から見ると」って話だと思います。クリスと同じ状況に置かれて、まともな価値観で判断できる人なんていないと思う。極限状態で、動物レベルにまで意識が下がって、平気で人を殺したりレイプしたりできるようになることは、誰にでも起こり得るんです。それを現代の価値観で“ダメ男”とかって言うのは、想像力の欠如じゃないかって思っちゃう。

西川 「サイゴン」に参加するたびに考えさせられることですね。極限状態の“当たり前”の異常さを伝えるためにやってることが、「女性の扱いが酷い」「結婚したのに浮気するなんて」ということ"だけ"に見えてしまうなら、多分それは僕らの失敗で。うちらの責任として、この作品をやる意義とも言えるような大事な部分をちゃんと届けられるようにしないといけないな、と思うし。

海宝 そうだね、お客さんが極限状態を瞬時に感じ取れるように。

西川 たとえば冒頭のドリームランドのシーンが、ただバーで仲良く騒いでるだけに見えないようにしなくちゃいけない。2012年公演時の演出家は、俳優のメンタルをケアする言葉をかけたり、安全に芝居できる環境を整えた上で、「女性として扱わないでください。GIにとって彼女たちは……」って、わざと俳優を傷つけるような言葉をディレクションで使うんです。

当然それは暴言ではなくひとつの事実として。その要素がこのシーンや作品に必要だから。目に涙を溜めながら、何度もその言葉を言っていたのがすごく印象に残っています。

海宝 「サイゴン」の稽古は、体力的にも精神的にも本当にしんどい。でも僕らがそれをすることで、お客さんが少しでも何か感じたり、考えたりしてくれたらいいなと思います。

「同じ雨の下にいる」感覚をシェアできるアルバム

――貴重なお話をありがとうございました……! では、再び『雨が止まない世界なら』の話に戻って。先ほどは海宝さん参加楽曲を中心に伺いましたが、アルバム全体を通した魅力という部分で、桑原あいさん作曲の音楽の印象などはいかがですか?

西川 桑原と僕は子どもの頃にミュージカルの現場で知り合っていて、桑原自身ミュージカルにもずっと親しんできてるんですけど、やっぱりジャズピアニストでもあるので。いわゆる“ミュージカル音楽”とは違う、ちょっとアバンギャルドなところが魅力だと思うんですけど、何作か一緒に作ってきた中で、ミュージカル音楽としても進化してるのを感じますね。

海宝 そうだね。あいちゃんが元々持ってるバッチバチにエッジが効いてる部分と、大貴くんとミュージカルを作る中で生まれたキャッチーな部分が融合してるところが、ほかにない魅力で素敵だなと思います。曲によって色味が違ってて、通して聴くといい意味で何というか……ジェットコースター感がある(笑)。

西川 うん!

海宝 1曲の中でもそうで、音運びにしてもリズムにしてもどんどん変わっていくから、遠心力で振り回されてる感じがするんです(笑)。

西川 特に今回は、ソングサイクルだからね。全部雨が降ってる世界の話ではあるけど、主人公は曲ごとに違う。1曲ごとにストーリーを完結させなきゃいけないから、曲単位でも全体を通してもジェットコースターなんだと思います(笑)。そこは本人も絶対意識してて、もしこれがソングサイクルじゃなかったら、もっと滑らかな楽曲の展開にしたんじゃないかな。

海宝 うんうん。歌ってても聴いてても、本当にハッとする瞬間がいっぱいあるアルバムです。

――最後に改めて、ぴあアプリ読者の皆さんにメッセージをお願いします!

西川 これだけのアーティストが、それぞれの志を持って、オリジナル作品を残すという試みに参加してくださったというだけで、自分の企画ってことは置いておいて(笑)、すごく意義のあるものになってると思います。読者の皆さんにも、コロナ禍のこの空気感を共有している仲間のひとりとして聴いて、“あの時の作品”として記憶していただけたら。そして1年後2年後、雨だからまた聴いてみようかな……とか、ふと思ってもらえるような作品になったらすごく嬉しいです。

海宝 世界中の人が同じものを共有してるって、なかなかない異常事態。それを会って確かめ合う時間が持てない、どこに辿り着くかも分からない不思議な状況の中で、「同じ雨の下にいる」感覚をシェアできるようなアルバムになっていると思います。コロナを題材にするって、一歩間違えると説教じみたりしちゃうからすごく難しいと思うんですけど、大貴くんとあいちゃんのフィルターを通すことで、スッと入ってくるものになっていて。

西川 ああ嬉しい。

海宝 異常事態の中で生きてる我々には、知らず知らずのうちに壊れてる部分がいっぱいあって、誰しも孤独を感じていると思います。でもそれをシェアできてると思うだけで、心がふっと軽くなったりする、そういうアルバムなんじゃないかな。

――最後の《We Are The World》的な《世界は変わってない》を、部屋で聴きながら一緒に歌ったりしたらより“シェアしてる感”が高まりそうですね!

西川 うん、いいと思います!

海宝 そうですね。あれはみんなでワンフレーズずつ歌い継いで、「雨、雨、雨……」のところでみんなの声が重なる曲なんですけど。僕は「ネギネギ」ってパートがお気に入りなので、「♪雨」はもちろん、ぜひ「♪ネギネギ」も一緒に歌ってみてください(笑)。

取材・文=町田麻子

<リリース情報>
ミュージカル『雨が止まない世界なら』コンセプトアルバム

2022年6月30日(木) リリース
4,200円(税込)

『雨が止まない世界なら』コンセプトアルバム ジャケット

作詞:西川大貴
作曲:桑原あい

参加キャスト:
伊藤広祥 / 小此木麻里 / 海宝直人 / 昆夏美 / 咲妃みゆ / 清水彩花 / 鈴木壮麻 / spi / 田中秀哉 / 田村芽実 / 塚本直 / 土居裕子 / 豊原江理佳 / 内藤大希 / 七尾旅人 / 西川大貴 / 畠中洋 / 松原凜子 / 山野靖博 / 吉沢梨絵(五十音順)
内海啓貴(語り)

関連リンク

公式サイト:
https://ame-musical.com/

Twitter:
https://twitter.com/ame_musical

Instagram:
https://www.instagram.com/ame.musical/

Facebook:
https://www.facebook.com/ame.musical/

ぴあアプリ限定!

アプリで応募プレゼント

ミュージカル『雨が止まない世界なら』コンセプトアルバムを2名様にプレゼント!

【応募方法】

1. 「ぴあアプリ」をダウンロードする。

こちらからもダウンロードできます

2. 「ぴあアプリ」をインストールしたら早速応募!

フォトギャラリー(6件)

すべて見る