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大原櫻子「サリーという役が私を成長させてくれる」 『ザ・ウェルキン』で緊迫の会話劇に挑む!

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大原櫻子 撮影:石阪大輔

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『チャイメリカ』や『チルドレン』など日本でも上演され、年々注目度が高まっている英国人劇作家ルーシー・カークウッド。彼女が2020年に発表した『ザ・ウェルキン』が早くも日本上陸、加藤拓也の演出により上演される。殺人罪で裁判にかけられながらも、妊娠を理由に死刑を免れようとする少女サリー。そしてその真偽を明らかにしようとする12人の女性陪審員。この緊迫した会話劇に、サリー役として挑む大原櫻子に話を訊いた。

演じながら呆然となるほど強いエネルギーを持った作品

――稽古開始から1カ月近くが経ちましたが、ここまでの感触、手応えはいかがですか?

最初に台本を読んだ時、ストーリーに引き込まれて、すごく呆然としている自分がいたんです。それが先日2幕を通した時に、演じながらもやはり呆然となる感覚があって。改めてこの作品が持つエネルギーの強さを感じた瞬間でしたね。また演出の加藤(拓也)さんの脚本を読み解こうとする取り組み方が本当に高度で、ひとつのセリフに対する説明を聞くだけでも、なるほどと思うことがたくさんあります。

例えばある陪審員のちょっと素っ頓狂なセリフ、さりげないセリフだが、人物像が表れるとても大切な瞬間で、周りの人間の反応がキーになってくると。それをキャストみんなで共有し、いざ演じてみると、そのシーンがめちゃくちゃ面白いものになって! 加藤さんが見つけ、提示してくださったアイデアによって、私たちにもまた新たな発見がある。非常に面白い稽古場だなと思います。

――加藤さんの稽古場は、いい意味で非常に緊張感のあるものだと伺ったことがあります。大原さんご自身はどう感じていますか?

加藤さんは何回も何回も、同じシーンを繰り返しやられる方なんですよね。だからとてもへとへとになりますし、スパルタではあるんですが、その分翌日すごく体に入っていて。役を染み込ませてくれる稽古方法なので、日々、疲労困憊しながらも、スパルタ稽古のありがたさを噛み締めています。ただ内容的に女性ならではの記述もあるので、「こういう時って女性の反応としてはどうなんですか?」ときちんと私たちに質問してくださる。そういう細かいところまで逃さないというか。そこにさらに加藤さんのユニークなセンスであったり、今の私たちの視点というものが加わることで、このお芝居はより生々しいものになっているのではないかなと思います。

心がけているのはとてもピュアな女性として演じること

――演じられるサリーについてですが、現状どういった女性として捉えていますか?

サリーは常に本能で生きていて、自分のことを信じている。だから陪審員たちを前にしても、すごく堂々としているんですよね。「私はちゃんと真実を言っているんだ!」って。ただ“生”に対する執着はあまりなくて、死を恐れているわけではない。とにかく見世物にはなりたくない、世間のために死にたくないと思っていて。もちろん人を殺すなんて、“善”と“悪”で言えば“悪”。それでも私は、サリーをとてもピュアな女性として演じようと心がけています。先日2幕を通して演じた時には、サリーが過去にどういう傷を負ってきたか、いかに愛に恵まれてこなかったか、実感出来る瞬間がたくさんあって。そういったところも観た方に伝わればいいなと思います。

――サリーの妊娠の真偽を判定するのが、12人の女性陪審員です。そのやり取りは非常に生々しく、セリフにセリフをかぶせるようなやり取りも多々登場しますね。

全員のセリフを覚えていないと出来ないことなので、正直大変な作業ではあるのですが……(苦笑)。じゃあなぜセリフをかぶせるのかと考えた時、ルーシー・カークウッドが書いたその一つひとつに意味があると感じたんです。というのもかぶった時にとても気持ちがいいというか、やっぱり自分の意思が前に出てしまうからこそ、相手の言葉を待てずに言葉が溢れ出てしまう。日常会話でもそういった場面はありますし、会話劇として非常にリアリティのあるものになっているなと思います。

――その陪審員役のキャストには、演劇界を中心に幅広い年齢層の実力派がそろいましたね。

「なんていいカンパニーなんだろう!」と毎日思っています。笑顔が絶えないですし、とても楽しい、そして真面目な方ばかりで。それこそサリーにとって陪審員って自分を陥れる立場にいるというか、戦わなきゃいけない、説得しなきゃいけない相手だと思うんです。でも役者としてはみんなで手を取り合って、お互いを思いやって、より良い作品にしようとしている。本当に愛に溢れたカンパニーだと思います。

『ザ・ウェルキン』より、サリー役の大原櫻子(中央左)と、12人の陪審員役=吉田羊(中央右)、その上から時計回りに梅沢昌代、峯村リエ、明星真由美、恒松祐里、豊田エリー、那須凜、土井ケイト、富山えり子、西尾まり、那須佐代子、長谷川稀世

――その真ん中にいてくださるのが、エリザベス役の吉田羊さんではないでしょうか。

エリザベスのリーダー的なところは、凛とした羊さんと重なりますし、立ち稽古になった瞬間、いっさい台本を持たず、長ゼリフも完璧に頭に入っている。それによって稽古場がいい緊張感に包まれて。カンパニーを引っ張ってくださる存在というのは、こういう方のことを言うんだなと。ただTikTokを撮影している時の羊さんは、とてもお茶目ですけどね(笑)。

作品のメッセージが高カロリーであるほどお芝居は楽しい

――前作『ミネオラ・ツインズ』に続き、大原さんにとってはまたも非常に難易度の高い作品になりそうですね。

本当に! でもとても演じ甲斐のある役ですし、作品のメッセージを伝えるっていうのが高カロリーであればあるほど、やっぱりお芝居って楽しいなと感じて。そういう作品と出会える、役と戦えるっていうのは、本当にありがたいことですよね。日々サリーという役が私を成長させてくれていますし、どれだけこの作品のテーマを掘り下げられるかということが、さらなる成長へと繋がっているのではないかと思います。

――250年以上も前の時代を舞台にした作品ですが、現代の作家が描き、現代の俳優が演じることで、現代の観客にどんなものを届けられるのではないかと思いますか?

決して1759年に限った話ではない、ということはすぐにわかっていただけると思います。たくさんの人が出て来るのですが、誰の意見が正解というわけではなく、その一人ひとりに共感出来るところがある。一方で野次馬の声というのは、現代で言う誹謗中傷と重なります。節々で今に繋がることが発見出来ると思いますので、そこから観た方それぞれがなにかを感じ、考えていただけたら嬉しいですね。

取材・文=野上瑠美子
撮影=石阪大輔

<公演情報>
『ザ・ウェルキン』

【東京公演】
2022年7月7日(木) ~7月31日(日) シアターコクーン

【大阪公演】
2022年8月3日(水) ~8月7日(日) 森ノ宮ピロティホール

チケットはこちら:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2206042

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