松尾スズキの最新作「ツダマンの世界」主人公の小説家・ツダマン役に阿部サダヲ
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COCOON PRODUCTION 2022「ツダマンの世界」の出演者。
COCOON PRODUCTION 2022「ツダマンの世界」が、11月から12月にかけて東京と京都で上演される。
「ツダマンの世界」は、松尾スズキの最新作。劇中では、昭和初期から戦後の日本を舞台に、弟子に翻弄される小説家・ツダマンこと津田万治を主人公にした“狂気のメロドラマ”が展開する。ツダマン役に阿部サダヲ、自己愛と名声欲の強い弟子・長谷川葉蔵役に間宮祥太朗、物語の語り部となる女中・オシダホキ役に江口のりこがキャスティングされた。
さらに、葉蔵の世話係・強張一三役を村杉蝉之介、劇団員で歌手志望の神林房枝役を笠松はる、ツダマンの友人の小説家・大名狂児役を皆川猿時、ツダマンの妻・津田数役を吉田羊が担う。このほかの出演者には、町田水城、井上尚、青山祥子、中井千聖、八木光太郎、橋本隆佑、河合克夫が名を連ねた。
上演に向け松尾は「僕が芝居を作る時にいつも思うのは“人間の頭の中は何があろうと自由だ”、ということ。そして同時に“劇場の中も常に自由でありたい”、ということ。今回はそれを上回り、“日常生活にまで自由が溢れ出してしまっている”、そんな人たちの頭の中を覗ける劇体験をぜひとも味わっていただきたい」とコメントした。
公演は11月23日から12月18日まで東京・Bunkamura シアターコクーン、12月下旬に京都・ロームシアター京都 メインホールにて。東京公演のチケット販売は、10月1日10:00にスタート。
松尾スズキコメント
昭和の文豪たちの逸話を読むたび“この人たちやってること滅茶苦茶だな”と思うのに、今では人から許され、愛され、尊敬されている。そうやって近代文学というジャンルを切り開いたパイオニアたちが、コンプライアンスという概念がない時代に、意外と狭い世界でもつれあい周囲を巻き込んで愛憎を繰り広げる悲喜劇姿にはエモさを感じるんです。そんな彼らの生き様を、文学に憑りつかれたエリートたちに巻き込まれた名もなき人々への鎮魂の意味も込めて描いていきたい。
また、個人的には自分の父親が佐賀県にいて原爆のキノコ雲を目にしていたりして、年齢的に戦争というものと地続きのところにまだ自分はいると感じられる今だからこそ、ここで少し戦争の話を書いておきたいという考えもありました。期せずして、まさに戦争が身近に感じられるタイミングになってしまったわけですが。とはいえ、実はちょうど現在のこの紛争が起こった当初、自分はギックリ腰になってしまっていて、それはそれで大変な時期だったんです。個人の中の宇宙とは、現実の戦争に匹敵するほどのカオスでもある。そういうことも今回、書きたいと思っています。実際に戦時中も、まったく関係のないことばかりをのんきに書き綴っていた作家もいて、そういう人たちの中の個人的な宇宙では、きっと戦争はまた別の世界線という認識で捉えられていたはず。とにかくそれぞれの人間の中に広がる宇宙というものは、どでかいんです。振り返ると結局、自分はこれまでそういうことばかり書いている気もしますけど。
今回、阿部に演じてもらう津田万治という男は、周囲の人たちがみんな極限状況で、直情的に気持ちを表す中、一人だけちょっと何を考えているかわからない、不気味な空洞のような人物。彼に関わる人がみんな、抱く印象がそれぞれ違ってくるような不思議な人物像で、その彼の世界をいろいろな人が口々に語るような話になると思います。
僕が芝居を作る時にいつも思うのは“人間の頭の中は何があろうと自由だ”、ということ。そして同時に“劇場の中も常に自由でありたい”、ということ。今回はそれを上回り、“日常生活にまで自由が溢れ出してしまっている”、そんな人たちの頭の中を覗ける劇体験をぜひとも味わっていただきたいと考えています。
COCOON PRODUCTION 2022「ツダマンの世界」
2022年11月23日(水・祝)~12月18日(日)
東京都 Bunkamura シアターコクーン
2022年12月下旬
京都府 ロームシアター京都 メインホール
作・演出:松尾スズキ
出演:阿部サダヲ、間宮祥太朗、江口のりこ、村杉蝉之介、笠松はる、見上愛、町田水城、井上尚、青山祥子、中井千聖、八木光太郎、橋本隆佑、河井克夫、皆川猿時、吉田羊
※初出時より、役名表記を変更しました。