李相日監督「思いのすべてを注ぎ込んだ」 長編デビュー飾ったPFFスカラシップ作品『BORDER LINE』を振り返る
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すべて見るぴあフィルムフェスティバルの映画製作プロジェクト「PFFスカラシップ」の新作2本『猫と塩、または砂糖』、『裸足で鳴らしてみせろ』の連続公開を記念し、これまでのPFFスカラシップ作品を振り返る特集上映「<<ミニシアターセレクション>> 35mmフィルムで蘇る! PFFスカラシップ傑作選」が渋谷・ユーロスペースで開催中。7月17日には、李相日監督が来場し、自身が手掛けた『BORDER LINE』(2002年/第12回PFFスカラシップ作品)について語るトークイベントを行った。
大学卒業後、日本映画学校の卒業制作として監督した『青~chong~』がPFFアワード2000で、グランプリを含む4賞を獲得した李監督。長編映画デビューを飾った『BORDER LINE』は実際に起きた事件をモチーフに、やる気のないタクシー運転手、事件の容疑者として自転車で逃走中の高校生、幹部に追われるチンピラ、夫のリストラや息子のいじめ問題に頭を悩ませる主婦らを通して、家族のあり方を問いかけるヒューマンドラマだ。
「自分の映画としてやりたいこと、考えていること、思いのすべてを注ぎ込んだ。非常に不器用で不格好な映画だなと思ったりしますけど、表現したいことの原点が詰まっていて、技術的に及ばない中で、思いの丈だけがはみ出ている」と李監督。東京から青森、北海道・函館までロケーションを敢行し、ロードムービーに相応しい心象風景を描いており、「予算とかはまったく考えていなかった(笑)。若さゆえ、状況に左右されず『やってみないとわからない』と抗うことが映画作りの原動力だと信じ込んでいた」と初期衝動を振り返った。
村上淳、光石研、麻生祐未らが出演し「プロの俳優さんとの仕事は初めて。内面から何か引き出せないかと真剣に始めた」と今に至る俳優への演出方法の原点にも言及。「当事者にしかわかりえない真実」というテーマはその後に続く『悪人』『怒り』、最新作『流浪の月』にも通じており、「狙ったわけではないが、『BORDER LINE』で欲張って描いたことがつながっている。映画が終わった先、登場人物や土地の匂いがスクリーンの枠からはみ出し、こぼれ落ちることを求めている」と話していた。
取材・文・写真=内田涼
「<<ミニシアターセレクション>>35mmフィルムで蘇る! PFFスカラシップ傑作選」
日程:7月16日(土)~22日(金) ※連日18:30からの上映
会場:ユーロスペース
7月16日(土) 『二十才の微熱』 初日来場者限定 特別プレゼントあり
7月17日(日) 『BORDER LINE』 李相日監督 来場予定
7月18日(月・祝) 『二十才の微熱』 橋口亮輔監督 来場予定
7月19日(火) 『運命じゃない人』 内田けんじ監督 来場予定
7月20日(水) 『川の底からこんにちは』
7月21日(木) 『バーバー吉野』 荻上直子監督 来場予定
7月22日(金) 『二十才の微熱』
【イベント詳細ページ】 https://www.hadashi-movie.com/pff/
【チケット購入:ユーロスペース】 http://www.eurospace.co.jp/
企画制作:マジックアワー
企画協力:一般社団法人PFF
『猫と塩、または砂糖』(小松孝監督)
7月23日~公開
『裸足で鳴らしてみせろ』(工藤梨穂監督)
8月6日~公開
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