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9作目の世界3大映画祭へ 小津安二郎監督『風の中の牝雞』「ヴェネチア国際映画祭」クラシック部門選出

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『風の中の牝雞』4Kデジタル修復版 (c)1948 /2022 松竹株式会社

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小津安二郎監督の作品『風の中の牝雞(めんどり)』(1948年製作 / 英題:A Hen in the Wind)が、第79回「ヴェネチア国際映画祭」クラシック部門(ヴェニス・クラシックス)に選出され、ワールドプレミアを行うことが決定した。

来年2023年に生誕120周年を迎える、日本を代表する映画監督・小津安二郎。その人気や評価は今なお色あせることなく、2012年のイギリスの映画雑誌「Sight&Sound」誌で世界の映画監督が選ぶ映画作品として1位に輝くなど、多くの世界中の映画人や映画ファンから高い支持を得ている。

『風の中の牝雞』は小津監督の戦後2本目の作品として戦後間もない時期に製作され、戦後の日本が抱える厳しい現実に焦点を当て、苦悩する女性の姿を描いた異色作。

主演の田中絹代の迫真の演技は鬼気迫り、クライマックスの階段落ちのシーンは観る者を圧倒した。小津監督の作品の中でもひときわ異彩を放つ作品であり、後期の小津調のスタイルに到達する前夜の感情がぶつかり合う描写も注目に値する一作となっている。

なお本作は35mm デュープネガをフル4K(4K解像度(4096×3112)スキャン、4Kデジタル修復、4KDCP)で修復。画像修復は、近森眞史カラマンの監修のもと、イマジカにて修復作業を行った。

音声修復は、35mmデュープネガから6kHz 24bitでデジタイズし、電源やカメラ、光学編集、ネガのキズや劣化等、様々な要因によるノイズ、レベルオーバーによる歪みを原因に立ち返って類推。清水和法監修のもと松竹映像センターにて修復した。小津安二郎監督の製作意図を尊重し、修復する事を主眼に作業されたという。

海外から高い評価を受け『スパイの妻』で第77回「ヴェネチア国際映画祭」で銀獅子賞を受賞した黒沢清監督も、2020年の松竹映画100周年の記念サイト「100年の100選」で、本作を好きな松竹映画の1本に選ぶなど、小津監督の代表的な作品とは一線を画しながらも、多くの映画人から高く評価されてきた。

ヴェニス・クラシックスは、2012年に設立されたヴェネチア国際映画祭の1部門で、過去1年に復元されたクラシック作品の中から、特に優れた作品が選出されている。今回、日本映画からは他に『殺しの烙印』(鈴木清順監督)、『神々の深き欲望』(今村昌平監督)の計3作品。

今回で小津安二郎監督作品のデジタル修復版が世界3大映画祭クラシック部門へ選出されるのは、2013年「ベルリン国際映画祭」の『東京物語』以来、9作目となる。来年の生誕120周年に向け、さらに世界からの注目を集めるスタートにふさわしい素晴らしい機会となることは間違いないだろう。

<これまでにデジタル修復された小津作品ワールドプレミア上映>
『東京物語 デジタル修復版』 1953年:2013年ベルリン国際映画祭
『秋刀魚の味 デジタル修復版』 1962年:2013年カンヌ国際映画祭
『彼岸花 デジタル修復版』1958年:2013年ヴェネチア国際映画祭
『秋日和 デジタル修復版』1960年:2014年ベルリン国際映画祭
『お早よう デジタル修復版』1959年:2014年香港国際映画祭(インターナショナルプレミア)
『晩春 4Kデジタル修復版』1949年:2015年MoMA
『麦秋 4Kデジタル修復版』1951年:2016年ベルリン国際映画祭
『お茶漬の味 4Kデジタル修復版』1952年:2017年ヴェネチア国際映画祭
『東京暮色 4Kデジタル修復版』1957年:2018年ベルリン国際映画祭
『東京物語 4Kデジタル修復版』1953年:2018年カンヌ国際映画祭

■イベント情報
第79回「ヴェネチア国際映画祭」
クラシック映画部門(ヴェニス・クラシックス)
8月31日(水)~9月10日(土) ※本作の上映日時は調整中。

映画祭公式サイト:https://www.labiennale.org/en/cinema/2022