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「手をなくした少女」監督が片渕須直とトーク、「この世界の片隅に」との共通点語る

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「大人のためのグリム童話 手をなくした少女」トークイベントの様子。左から片渕須直、セバスチャン・ローデンバック。

本日7月9日、「大人のためのグリム童話 手をなくした少女」の先行上映会が東京・ユーロスペースで行われ、上映後のトークイベントに監督のセバスチャン・ローデンバックとゲストの片渕須直が登壇した。

2016年のアヌシー国際アニメーション映画祭で審査員賞と最優秀フランス作品賞をダブル受賞した本作は、グリム童話に収録されている「手なしむすめ」をもとにしたアニメーション。悪魔のたくらみによって両腕を奪われた少女が、数奇な運命に翻弄されながらも豊かな自然に助けられ、自分だけの幸せを見いだしていく。

片渕はまず本作の感想を「こんなに自由にアニメーションを生み出せるのかと。新しい風を吹き込んでくれたような気がします」と伝え、自宅から持参したグリム童話の書籍を見せて「(原作は)これだけのページしかないんです。セバスチャンはこの作品を1人で描いていますが、どんどん即興性が加わって物語が膨らんでいったことがわかる」と解説。「メルシー」と感謝したローデンバックは、「おっしゃる通りです。大抵のアニメーションは準備していたものを実行するというプロセスをたどりますが、私はそれを疑問視したんです。つまり、人物を動かすということを制作の核心に置きました」と説明し、「描いているうちに、まるで私自身が登場人物の人生を生きているような感覚を覚えました」と述懐する。

片渕の監督作「この世界の片隅に」と本作の共通点を「どちらも主人公が少女であり、社会的な抑圧によって、行きたかった場所ではないところに彼女たちが行かざるを得なくなる物語であること」と分析するローデンバック。「苦しみや恐怖を扱ううえで非常に繊細な手付きがあり、本当の意味での映画に立ち会っているという感動がありました」と「この世界の片隅に」を称賛する。続けて「私たちの2作と高畑勲監督の『かぐや姫の物語』には、物語的にも通じるところがあります。さらにアニメーション制作という点で、まったく新しい方法を発明し、それが作品の中心を成している。これはなぜなんだろうと自問自答しています」と語った。

ローデンバックの言葉にうなずいた片渕は「作り手同士だとこの2作が同じことをやっているのがわかりますよね。つまり、1人の人間の人格をどうやったら動きで表現できるのか、ということに挑戦している過程を感じられます」とコメント。ローデンバックは「アメリカのアニメーションの多くはデザインがすでに何かを表現していますが、私たちが描いた少女は静止画になっていると何も語らない。しかし、いったん動き出すと多くのことを語り始めるわけです」と述べ、「私と片渕さんはアニメーションを通して現実を描いていますが、模写をするのではなく、現実からいったん離れて再解釈している。そのことを大事にしているんです」と説明した。

「大人のためのグリム童話 手をなくした少女」は8月18日より東京のユーロスペース、8月25日より大阪のシネ・リーブル梅田で公開。以降全国で順次上映される。

※記事初出時、人名表記に一部誤りがありました。お詫びして訂正します。

(c)Les Films Sauvages - 2016