映画『今夜、世界からこの恋が消えても』実は旧知の仲! 監督・三木孝浩&脚本・月川翔が対談
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『今夜、世界からこの恋が消えても』 (C)2022「今夜、世界からこの恋が消えても」製作委員会
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すべて見るなにわ男子・道枝駿佑と福本莉子がダブル主演! 記憶をめぐる愛の物語
眠りにつくと記憶を失ってしまう前向性健忘を患ったヒロイン・真織と、そんな彼女を献身的に支えながら自らも大きな秘密を隠し持つ主人公・透のはかなくも切ないラブストーリー『今夜、世界からこの恋が消えても』。
原作は、第26回電撃小説大賞・メディアワークス文庫賞受賞作品で、日本、韓国、中国での合計発行部数が50万部を突破(2022年7月時点)するなど、世界で大ヒットとなっている一条岬の同名小説。
そしてダブル主演を務めるのは、なにわ男子・道枝駿佑と福本莉子。記憶をめぐる愛の物語が切なくもあたたかな涙を誘う本作は、恋愛映画の名手同士がタッグを組んだ作品としても話題を集めている。
監督を務めたのは、『僕等がいた 前篇・後篇』(12年)、『陽だまりの彼女』(13年)、『ホットロード』(14年)、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(16年)、『思い、思われ、ふり、ふられ』(20年)、『きみの瞳が問いかけている』(20年)などで知られ、今夏は『TANG タング』(8月11日公開)、『アキラとあきら』(8月26日公開)も控えている三木孝浩。
そして脚本を手がけたのは、『黒崎くんの言いなりになんてならない』(16年)、『君の膵臓をたべたい』(17年)、『となりの怪物くん』(18年)、『センセイ君主』(18年)、『響 -HIBIKI-』(18年)、『君は月夜に光り輝く』(2019年)などの監督作を持つ月川翔。
もともと今作は月川が脚本だけでなく監督も務める前提で企画はスタート。コロナ禍もあって撮影時期は見えていなかったが、準備に向けて進み始める中で別作品との兼ね合いから月川がスケジュール的に動けなくなってしまい、その脚本を三木が受け継いで松本花奈と完成させてメガホンも取ることとなった。
その裏で、「三木さんにお話が行く前に、アドバイスが欲しくて、一度脚本を読んでいただいていて、意見をもらったりもしていたんです。そのときに三木さんは記憶の物語が好きだと言われていたので、ぜひ撮っていただけたら嬉しいなって密かに思ってました(笑)」と月川。
また三木も、「月川くんと僕って作品に対する向き合い方が似ているところがあるかなと思っていて、自分の作家性を押し出すというよりは、企画や原作をいただいたときになるべく多くのお客さんに広く楽しんでいただくために、どう映画的により良くしていくかというところに一番軸足があると思っているんです。そういう意味では今回の脚本もそういう作りになっていたので、非常にやりやすかったです」とコメント。
実は三木と月川は共に現代の恋愛・青春映画を代表する監督というだけでなく、旧知の仲。そもそものその出会いは? ふたりの繋がりの記憶を遡ってもらった。
「事務所に入るとき、最後に面接をしてくださったのが三木さんだった」
「同じ事務所に月川くんが入って来て、行定勲監督の作品(『クローズド・ノート』07年)のメイキングを一緒にやったんですよね。そこからつき合いが始まって、その中でいろいろ映画の話をしたり、お互いの映画作りに関しても相談し合ったり。
月川くんが『君の膵臓をたべたい』(17年)を撮ることになったときも、僕は浜辺美波ちゃんの初出演の作品を監督していたので(『空色物語「浜辺美波~アリと恋文~」』11年)、話をしたりしてましたね」(三木)
「そもそも三木さんは僕にとっては面接官で、事務所に入るときに最後に面接をしてくださったのが三木さんだったんですよ(笑)」(月川)
「そうか! そうだったね(笑)。面接と言ってもそんな大仰なものではなくて、入社するかもしれない監督がいるから会ってほしいと言われて、作品を観させていただいたら、それがすごく面白かったんですよ。実際にお会いしてみてもいい感じで、すごく才能のある人だと思います……みたいなことは当時の社長に言ったんじゃなかったかな(笑)」(三木)
「ありがとうございます(笑)。それが初対面で、次にお会いしたときにはもう行定組のメイキングに行く準備に入るときだったんです。まだ大学院卒業前だったんですが、現場に行くってことになって、毎回、三木さんの車に乗せていただいて。三木さんの作品集をいただいていたので、車の中でひたすらそれに対する質問ばっかりしてましたね。
行定組の現場は60日間くらいだったんですが、その60日間、マンツーマンで映画について教育してもらうみたいな(笑)。こんな幸せな環境はないなって思いながら現場に通ってました。
それで 三木さんが初めて長編(『ソラニン』10年)を撮るときにもメイキングで入って、こうやって映画って作っていくんだなということを学んで、実際自分が撮るときには相談したりもして」(月川)
理屈で練り上げる月川と、感覚で築いていく三木は最高のタッグ
月川曰く、「僕は理屈っぽい人間なので、三木さんの作品にある感覚的なものに対する憧れがすごく強いんですよ」。また三木曰く、「月川くんはベースが理系で、分析力があって、いろんなものを数値化して脚本作りやクリエイティブを進めていく感じがあるんですよね。そこがすごいなって思います」。
叙情がありながらも理屈で練り上げられた月川の脚本と、感覚で築いていながらも理念に裏打ちされた三木の演出。お互いに映画人として通じ合っているというだけでなく、その資質においても『今夜、世界からこの恋が消えても』のタッグは最高の形となったに違いない。
今度は三木の脚本で月川が演出という形もあり得るのでは? そう三木に聞いてみると、「僕は理屈でものを作れないので(笑)。いつか自分自身で脚本を手掛けてみたいですけどね」。
「月川くんと次にまた何かできるなら、一緒の現場で監督をしてみたいです。ひとつのドラマシリーズをお互い別の回で監督するというのも面白そうだなと思いますね」(三木)
「三木さんと一緒の現場だと、緊張してしまうので……(笑)」(月川)
「しないですよ!(笑) でも今回すごくいい形でできたと思うので、またぜひ何かやりたいですね。楽しみにしています」(三木)
取材・文:渡辺水央
『今夜、世界からこの恋が消えても』
7月29日(金)公開
(C)2022「今夜、世界からこの恋が消えても」製作委員会
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