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ぴあ 総合TOP > ぴあ映画 > 松本清張サスペンス 特集

没後30年
社会派推理小説の巨匠の作品群を
Amazonプライムビデオ「プラス松竹」チャンネルで観よ!

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サスペンス小説界の巨星、松本清張が亡くなったのは1992年8月4日。2022年8月がまさに没後30年となる。清張健在の折から現在まで、人間の清濁の縮図ともいえる清張作品は幾度も映像化されてきたが、その映像化を牽引してきたのはなんといっても松竹だ。

Amazonプライムビデオの「プラス松竹」チャンネルでは多数の松本清張原作作品を楽しむことができるが、代表作の『砂の器』や『黒革の手帖』などのまぼろしのTVドラマもこの夏からラインナップに加わることに。本特集では松竹と清張作品の歴史を辿るとともに、中でもおススメの作品をピックアップしてご紹介。今こそ、「プラス松竹」で清張作品を堪能しよう!

映像化作品多数! 松本清張作品の魅力とは?

『砂の器』より

松本清張は推理小説だけでなく、ノンフィクション、歴史小説、評伝などさまざまなジャンルの作品を手がけ、その多くが驚異的な売り上げを記録した戦後最大の人気作家のひとりだ。ジャンル的に推理小説と呼ばれる作品でも、登場人物の心理や情念、物語の舞台になる土地の歴史が重厚に描かれ、単なる“謎解き”に終わらない魅力を持つ。

そんな清張作品を映画化するには、人間の“業”や“本質”を丸ごと演じられる/演じる覚悟のある俳優が必要になる。そのため清張映画を見渡すと、現在では名優と呼ばれる俳優たちがこぞって出演しているのだ。まだ若い俳優陣が犯罪や事件の奥にある想いや過去を体当たりの演技で見事に体現していく様は圧巻! 今観ても色褪せぬ極上の人間ドラマを楽しめる。

さらに劇中の背景にも注目だ。物語の舞台は日本各地に広がっており、哀しみをたたえた日本海、今では定番になった切り立った“崖”、懐かしい昭和の街なみや駅の風景……そのすべてが物語を彩る重要な要素になっている。

映画的な面白さ、俳優たちの名演、先の読めない展開を楽しんでいくうちに“ここでしか観られない/失われてしまった日本の風景”を垣間見ることができる。清張映画を観ると、単なる“懐かしさ”に終わらない、なんとも贅沢な映画体験を味わえるはずだ。

“清張映画”を牽引してきた松竹。その歴史のはじまりとは?

清張文学の映像化元年は『顔』が公開された1957年

今年没後30年を迎えた松本清張。映画やテレビドラマにとって、戦後日本を代表するこの文豪の小説は、21世紀に入っても“汲めども尽きせぬ豊かな水源”と言える。振り返れば最初に映画化に踏み出したのは松竹で、ホームドラマやメロドラマを得意とした社風に新たなカラーを導入すべく、“推理小説”を変革し人気を博していた清張文学にいち早く手を伸ばしたのであった。

それが1957年1月公開、大曽根辰保監督、岡田茉莉子主演の『顔』だ。原作は前年8月に刊行、殺人事件を隠匿しながら映画俳優を目指す男の物語だったが、新進の女性ファッションモデルに移し替えられて制作された(脚色は井手雅人と瀬川昌治)。ちなみに同年7月、NHKにて『地方紙を買う女』が初テレビドラマ化され単発放送に──まさしく清張文学の映像化、元年である。

ではここからは、“清張映画”を牽引してきた松竹のその歴史を点描してみよう。翌58年1月には、松竹グランドスコープで撮られた『張込み』が登場、強盗殺人犯(田村高廣)を追う二人組の刑事(宮口精二、大木実)が、元恋人(高峰秀子)のいる九州・佐賀の町で粘り強く張込みを続ける。監督を務めたのは野村芳太郎。まだ昇進して6年目のキャリアで様々なジャンルムービーをこなす職人のひとりと目されていたが、初めてミステリーに挑んで硬骨な作家性をのぞかせ、“清張映画”を生涯で全8本も担当することとなる。

一方、脚本の橋本忍は当時すでに、かの黒澤明監督の『羅生門』(50)や『七人の侍』(54)などで大家となっており、野村芳太郎はといえば黒澤が松竹で発表した『醜聞』(50)、『白痴』(51)の助監督経験あり。つまり、ふたりをよく知る巨匠が両者を結びつけたのであった(タッグを組むのはこれで2作目)。原作をブラッシュアップして演出的にはセミドキュメンタリータッチを徹底した結果、『張込み』は“清張お気に入りの映画化ベスト3”の1本に挙げられるほどの完成度に達した。巷では、流行作家として清張ブームが巻き起こっており、この年から各社(大映、日活、東映)も、連発されていたベストセラーの映画化に参入してくる。

名匠・中村登監督が手がけた、格調高き初の“カラー作品”

そんな中、松竹では1958年10月、大庭秀雄監督、高岩肇脚本による『眼の壁』が公開された。大庭監督は3部作『君の名は』(53〜54)を大ヒットさせたメロドラマの名手で、主演も同じく佐田啓二が務めることに。事件のカギを握る女性(鳳八千代)との心理的駆け引きを強めつつ、経済犯罪と連続殺人とを合わせた原作の味わいを再現してみせた。

2年後の1960年10月には、中央省庁の汚職事件を背景に、人妻(有馬稲子)と青年検事(津川雅彦)の道ならぬ恋の行方を綴った『波の塔』を。原作どおり、終幕は青木ヶ原樹海で締め括られ、脚本を沢村勉が手がけたこの“清張映画”初のカラー作品は、松竹文芸路線の名匠・中村登監督らしい格調高き仕上がりとなった。

ところで遅れて東宝も、1960年3月には堀川弘通監督の『黒い画集 あるサラリーマンの証言』で各社競合の“清張映画”に加わり、橋本忍が脚色した本作は、2本目の“清張お気に入りの映画化”との評価を得た。対抗するように松竹は1961年3月、その橋本忍と野村芳太郎監督の名コンビで『ゼロの焦点』を世に問い、これも大成功を収める。1963年早々には2本の新作が用意され、1月に時代劇『無宿人別帳』(監督:井上和男、脚本:小国英雄)、2月に『風の視線』(監督:川頭義郎、脚本:楠田芳子)が封切られた。後者ではなんと、松本清張自身が大作家の役で数シーン、出演を果たしている!

紆余曲折を経て実現。いまだ語り継がれる大ヒット作『砂の器』

さて、ここまで松竹生え抜きの並み居る監督たちが“清張映画”に名を連ねてきたが、野村芳太郎の弟子筋に当たる山田洋次も当然深い関わりを持つ。まず『張込み』のときにノンクレジットだが駆け出しのフォース助監督で参加、脚本づくりにも一部協力した。『ゼロの焦点』では正式に共同脚本を担い、そして1965年5月公開、『霧の旗』の監督へ。脚本は(彼にとってもうひとりの師である)橋本忍。強盗殺人の罪を被せられた無実の兄(露口茂)を死刑で失ったヒロイン(倍賞千恵子)が、依頼を断った弁護士(滝沢修)に固執して痛烈な復讐を試みる。意表をついた主役のキャスティングは、橋本忍が山田洋次に薦めたものであった。

この『霧の旗』の後、松竹では一旦“清張映画”は影を潜めるが、70年代、量産体制に入る。口火を切り、牽引していったのはやはり野村芳太郎で、元を辿れば1961年に出会った「6歳の子どもに殺意が存在するか」──というショッキングな心理サスペンスの短編『潜在光景』を橋本忍に託し、完成作は1970年6月、『影の車』のタイトルで上映された。

翌1971年2月の『内海の輪』(監督:斎藤耕一、脚本:山田信夫、宮内婦貴子)、さらに1972年9月の『黒の奔流』(監督:渡辺祐介、脚本:国弘威雄)も注目を集めたが、1973年、野村芳太郎が橋本忍主宰の“橋本プロダクション”に合流したことも大きなトピックだった。すなわちそれは、翻って1960年、読売新聞の連載時からコンビでの映画化が決まり、1961年より企画され、(山田洋次と共に)長らくシナリオ化を進めていた長編小説『砂の器』を、紆余曲折を経てついに実現させるためのものであったのだ。松竹=橋本プロの第1回提携作品となった『砂の器』は1974年10月にロードショーされるや記録的な大ヒットを飛ばし、3本目となる“清張お気に入りの映画化”としていまだ語り継がれている。

清張文学に横たわる普遍的な“人間というミステリー”

清張文学は、テレビドラマ化が多いのも特徴だ。例えば1975年6月に封切られた映画『球形の荒野』(監督:貞永方久、脚本:星川清司)はこれまでに8度もされており、1981年スタート、日本テレビ系列「火曜サスペンス劇場」の記念すべき初回も飾った。なお、清張本人は映画『砂の器』以降、テレビ出演が格段と増え、NHK「土曜ドラマ 松本清張シリーズ」(75〜78)では12作品、扮装やメイクに凝りまくった脇役で姿を見せた。かたや、野村芳太郎はといえば1978年10月に『鬼畜』(脚本:井手雅人)を発表後、11月に松本清張と“霧プロダクション”を設立し、監督だけでなくプロデューサーとしても手腕を発揮していく。

松竹=霧プロで製作、配給した“清張映画”は全部で5本。皮切りは1980年5月公開、色と欲の塊の病院長(片岡孝夫/現・十五代目片岡仁左衛門)を主人公にした『わるいやつら』(脚本:井手雅人)で、その井手の弟子・古田求とホンも書いた『疑惑』(82)は、岩下志麻と桃井かおり共演の法廷物であり、悪女対決ムービーの最高峰だ。野村が製作に徹し、共同脚本にリスペクトする加藤泰、監督には三村晴彦と師弟コンビを並べた『天城越え』(83)、再び古田求と組んで政界の舞台裏、永田町に棲息する人々の生態を描いた『迷走地図』(83)、そして三村監督自らも手を入れた共同脚本(仲倉重郎、加藤泰、野村芳太郎)による『彩り河』(84)を最後にこの年、霧プロは解散。清張の当初の目的であった自作『黒地の絵』の映画化は実現しなかった。

だが、今も時代を超えて、松本清張原作のテレビドラマは夥しく作り続けられている。映画は2009年、東宝が犬童一心監督でリメイクした『ゼロの焦点』以来、企画されていないが、必ずや新たな機会は訪れるだろう。なぜならば、清張文学は日本の風土と歴史をつぶさに見つめ、各作品にて取り上げられた因果応報な事件の背後には、男と女の生々しい所業と、様々な社会の病理──つまりは普遍的な“人間というミステリー”が横たわっているからである。

Text:轟夕起夫

特におススメの8作品をピックアップ!

『砂の器』

語り継がれる傑作! 脚本力やダイナミックな演出が融合

都内、大田区蒲田駅の操車場で殺人事件が起きた。手掛かりは、証言者が耳にした「カメダ」という謎めいた言葉だ。人名か地名か? ベテランの今西(丹波哲郎)と若手の吉村(森田健作)を中心に刑事たちは足を使って地道に捜査を進め、東北から山陰までを横断! 迷官入りかと思われたが、その執念によって事件の裏側に新進気鋭の音楽家・和賀英良(加藤剛)の存在が浮かび上がる。

自作自演、指揮までする荘厳なピアノ協奏曲『宿命』がホールで披露され、暗い過去を背負った“父と子の旅”の回想と四季折々の風景、同時に並行して終局へと向かう捜査会議もカットバックで描かれ、立体的な構成とエモーショナルな旋律が感動へと導く(音楽監督:芥川也寸志/作曲・ピアノ演奏:菅野光亮)。

原作を大きく改変した橋本忍と山田洋次の脚本の力と、川又昻の撮影、多彩なキャストを動かす野村芳太郎監督のダイナミックな演出などが融合した日本映画史上の傑作である。

東京・蒲田にある国鉄の操車場内で殺人事件が発生。しかし被害者の身許が不明で捜査は難航。迷宮入りかと思われた矢先、被害者が殺される直前にある男と会っていたことが判明した。ふたりの会話の中で交わされていた「カメダ」という言葉。地名か? 人の名か? 事件解明のために奔走する刑事、今西(丹波哲郎)と吉村(森田健作)は偶然、新進気鋭の天才音楽家、和賀英良(加藤剛)と遭遇する。そして、やがて事件は思わぬ展開を見せ始めるのだった……。

1974年/監督:野村芳太郎 脚本:橋本忍/山田洋次
出演:丹波哲郎/加藤剛/森田健作/島田陽子/山口果林/加藤嘉/緒形拳/佐分利信/渥美清

『ゼロの焦点』(1961)

“断崖での犯人との直接対決”は2時間ドラマの定番に

エポックな作品となった『張込み』に続く、野村芳太郎監督2本目の“清張映画”。女性が主人公の推理小説はまだ珍しい時代で、原作はそれにチャレンジしたものだ。

見合い結婚をして1週間目、広告業界で働く夫(南原宏治)が金沢出張に行ったまま失踪し、手がかりを求めて彷徨う新妻・禎子の前には“意外な事実”が判明することに。ヒロインの久我美子のみならず名女優が顔を揃え、高千穂ひづる、有馬稲子によって、戦後の連合国軍占領下、その混乱期を生き抜いた人々の痛ましい境遇がクローズアップされていく。

橋本忍と山田洋次の脚本は、クライマックスを禎子と犯人との直接対決にアレンジ。能登半島の断崖にてフラッシュバック多用の手法で謎を解くのだが、このスタイルは後に2時間ドラマへ受け継がれた。冬の北陸の荒涼さ、寒々しい暗さを映し出した川又昻の撮影、芥川也寸志の哀切な音楽と、本作から野村組の“要”が“清張映画”に合流している。

広告社に勤める憲一は、新婚7日目に金沢へ出張、そのまま消息を絶った。妻の禎子は金沢へ出掛け、単身捜査に乗り出すが、手がかりはつかめなかった。やがて憲一が広告社に勤める前に、巡査の風紀係だったことが判明し、事件はそれに絡んでいる模様。そして意外な事実が明るみになってくる。野村芳太郎監督が、北陸を舞台に人間の孤独と悲しさをスリリングに描いた傑作。

1961年/監督:野村芳太郎 脚本:橋本忍/山田洋次
出演:久我美子/高千穂ひづる/有馬稲子/南原宏治/西村晃/沢村貞子/加藤嘉/永井達郎/桜むつ子/穂積隆信/十朱久雄/野々浩介

『鬼畜』

実話から生まれた名作。タイトルに込められた意味とは

監督の野村芳太郎は劇場用パンフレットにこう記した。「『鬼畜』は、研ぎ澄まされた短刀の鋭さと輝きをもった短編で、読んでいて身の引き締まる思いがする。私は、その中に、人間の弱さと恐ろしさの凝縮を感ぜずにはいられない」。原作は松本清張が検事・河井信太郎から聞いた実話を基に執筆、脚本はそこに、名シナリオライター・井手雅人が自らの経験を反映させている。

家内制のしがない印刷屋を営む宗吉(緒形拳)には3人の隠し子がいた。だが金銭的に立ち行かなくなり、業を煮やした妾の菊代(小川真由美)が家に乗り込んできて子どもたちを置き去りにする。逆上した妻・お梅(岩下志麻)は虐待に走り、故意か偶然か末っ子の幼児は衰弱死し、残る3歳の長女と6歳の長男の処遇を宗吉は迫られる。

夏の暑さ。逃げ場のない男の悲しみ。親子の絆と断層。そして俳優陣の名演。映画オリジナルのラストを観届けた後は、タイトルの意味を噛み締めてしまう。

小さな印刷屋の主人・宗吉が、愛人・菊代に生ませた3人の子を引き取るハメになる。強気の女房の冷たい仕打ちで庄二が病死、追いつめられた気弱な宗吉は、良子を置き去りにし、利一を崖下に突き落とす。大人のエゴで歪められた子供の世界と、ドライで弱い大人の世界を対比、切っても切れない親子の絆を描く。

1978年/監督:野村芳太郎 脚本:井出雅人
出演:岩下志麻/緒形拳/岩瀬浩規/吉沢美幸/石井旬/鈴木瑞穂/蟹江敬三/加藤嘉/浜村純/大滝秀治/田中邦衛/大竹しのぶ/小川真由美

『天城越え』

田中裕子が主演女優賞を総なめ! 滋味深き人間ドラマ

原作は松本清張自身、愛着のある短編。題材は実物の“静岡県刑事資料”から採り、イメージを膨らませたという。

主人公の小野寺(平幹二朗)は静岡の小さな印刷会社の社長で、県警刑事部嘱託の老人から仕事を頼まれる。その持ち込まれた資料が「天城山の土工殺し事件」と知るや、彼はたちまち下田時代の出来事を思い出していた──すなわち、14歳で家出した小野寺少年(伊藤洋一)は、天城を越えようとする酌婦・大塚ハナ(田中裕子。主演女優賞を総なめ!)と束の間道中を共にし、だが別れた後、ハナは土工を殺して金銭を奪った罪で捕まった。

印刷を依頼したのはかつてこの事件を担当した田島刑事(渡瀬恒彦。老人役も!!)で、少年の証言が決め手に。今昔を往還しながら進む人間ドラマは滋味深く、松竹入社21年目にして監督デビューを果たした三村晴彦は、共同脚本に携わった師匠、日本映画史に刻まれるシネアスト・加藤泰ゆずりの演出術を発揮している。

14歳の少年が母の情事を目撃、裏切った母を許せず、一人旅をする。天城峠で少年が出会ったのは、やさしい娼婦・ハナだった。やがてその一途で純粋な心が、不条理ともいえる殺人までにエスカレートする。思春期を迎えた少年の微妙にゆれる心理を、現代とのカットバックで真相を明かし、人間の原罪を暴いていく。ロマンに満ちた作風で清張版『伊豆の踊り子』とも呼べる初期の作品の映画化。

1983年/監督:三村晴彦 脚本:三村晴彦/加藤泰
出演:渡瀬恒彦/田中裕子/吉行和子/金子研三/伊藤洋一/樹木希林/小倉一郎/石橋蓮司/柄本明/坂上二郎/北林谷栄/加藤剛(特別出演)/平幹二朗

『わるいやつら』

ひと筋縄ではいかぬ人物ばかり。一番わるいやつは誰!?

題名どおりに“全員悪人”な、野村芳太郎監督、井手雅人脚本のコンビによるゴージャスな人間悲喜劇。主演は人気歌舞伎役者の片岡孝夫(現・十五代目片岡仁左衛門)で、大病院の2代目、医師としては最低でクズだがモテモテの病院長・戸谷に扮している。

妻(神崎愛)とは別居中で、愛人の横武たつ子(藤真利子)と藤島チセ(梶芽衣子)を金づるにし、赤字経営の穴埋めに充てる始末。友人の経理士・下見沢(藤田まこと)を見下して“片腕”にしており、都合の良い女、婦長の寺島トヨ(宮下順子)とは“腐れ縁”の仲だ。そんな煩悩に満ちたハチャメチャな戸谷は、新たにファッションデザイナーの隆子(松坂慶子)に執心しており、さらなる悪事を犯していく。

終盤に登場するや映画のトーンを変える警部役の緒形拳も見もの。これまで4度テレビドラマ化もされた、ひと筋縄ではいかぬ人物ばかりが蠢くピカレスクなエンタテインメント。さあ、一番わるいやつは誰か!?

世間知らずのプレイボーイである総合病院の院長・戸谷は、資産のある女に近づいては金をまきあげ、病院の赤字を埋めていた。妻との離婚交渉を進め、美貌のデザイナー・隆子との結婚を望んでいた。しかし、彼女を手に入れるために数々の悪事を犯していく。そして5人の悪女たちの暗躍により、自らも落とし穴へはまっていく。現代の様々な悪女の実態を鋭く描いたミステリードラマ。

1980年/監督:野村芳太郎 脚本:井出雅人
出演:松坂慶子/片岡孝夫/藤田まこと/梶芽衣子/宮下順子/藤真利子/神崎愛

『松本清張の黒革の手帖』

山本陽子主演で初のドラマ化! 清張史上最強の悪女を描く

女性を主役にしたピカレスクサスペンスの人気原作で、テレビドラマ化は7回もされているが、これが最初の試み。1982年1〜2月、テレビ朝日系の「月曜劇場」枠で全6回の放送だった。企画は霧プロ。

山本陽子が心血注いだヒロインの名は“原口元子”だ。銀行の支店に勤務する地味な女性であったが架空預金者帳簿の存在を知り、銀行から大金を横領し、その資金を元手に銀座のクラブのママへ。魑魅魍魎が跋扈する世界で虚々実々の駆け引きに出る“清張文学史上最強”な“悪女”で、架空預金者たちを手玉に取り、秘密を記した黒革の手帖を武器に更なる野望へと邁進していく。

田村正和、三國連太郎、ハナ肇、吉行和子、白川由美、小沢栄太郎など豪華キャストが並び、テレビ朝日のベテランディレクター・山内和郎が演出を担当。なお山本陽子は2004年、米倉涼子版にも特別出演、元子をホステスとして育てあげる銀座の老舗クラブのママ、岩村叡子役で存在感を示した。

ハイミス銀行横領事件を素材にした松本清張原作のドラマ化。銀行の弱点を握ったハイミスが行金横領に成功。クラブママに転身して男を操っていく。全6回。

1982年/監督:山内和郎 脚本:服部佳
出演:山本陽子/田村正和/三國連太郎/渡辺美佐子/吉行和子

『帝銀事件 大量殺人 獄中三十二年の死刑囚』

実録! 戦後史最大ミステリー“帝銀事件”の真相に迫る

『小説帝銀事件』『日本の黒い霧』を基に、戦後史最大のミステリーのひとつ“帝銀事件”の真相に迫る実録ドラマである。制作はテレビ朝日と松竹、企画は霧プロ。1980年1月、土曜ワイド劇場枠の単発作品だったが、137分の大作になった。

1948年1月26日午後3時頃、東京都豊島区の“帝国銀行椎名町支店”で日本中を揺るがす大量殺人事件が! 都の防疫班の腕章をつけた男が「GHQの命令」として、持参した「予防薬」を飲むよう行員たちに指示すると現場は地獄の様相に。この冒頭の犯行場面から鷲掴みにされ、調書を読むようなナレーション(=福田豊土)と共に淡々と、しかし強度みなぎる事件の検証が続く。

逮捕され死刑判決を受ける平沢貞通に仲谷昇。古志田警部補役に田中邦衛。他にも演劇人の粋が集結し、脚本は新藤兼人、演出は松竹を代表する森﨑東と、映画界のレジェンドが揃い踏み。平沢氏は冤罪の疑いもあったのだが、再審が認められず1987年に獄中死した。

“戦後最大の犯行”と言われた「帝銀殺人事件」の真相に迫る実録ドラマ。1948年、敗戦国日本はまだ混迷の最中、1月26日午後3時頃、帝国銀行椎名町支店で日本中を揺るがす殺人事件が起こる。都の防疫班も腕章をつけた男がGHQの命令で予防薬を飲むように言ってきた。やがて断末魔の惨劇の場に……。

1980年/監督:森崎東 脚本:新藤兼人
出演:田中邦衛/仲谷昇/橋本功/中谷一郎/木村理恵

『松本清張の殺人行 おくのほそ道』

松尾芭蕉ゆかりの地で起こる“連続殺人事件の謎”とは

清張文学は、日本各地の伝承や景観を巧みに取り入れるのも特徴だ。本作は元禄文化期の俳人・松尾芭蕉の『おくのほそ道』をフックに、ゆかりの地で起こる“連続殺人事件の謎”を描いている。

アメリカに留学した芦名麻佐子(竹下景子)は、日系三世の男友達・五郎(鹿賀丈史)を連れて久しぶりに帰国する。ところが彼女の周辺では次々と人が死に、大学講師の父(菅原謙次)や銀座でブティックを経営する母(八千草薫)をも巻き込んでいく。おなじみの鉄道シーンと旅情、そして芭蕉が通った“親不知・子不知”という場所がキーポイント。

松竹出身、脚本の吉田剛は野村芳太郎と縁深く、映画『おはなはん・第二部』(66)で組み、『影の車』の助監督経験もあり。演出は大映のエースだった池広一夫。制作はテレビ朝日、松竹、企画は霧プロで1983年、土曜ワイド劇場枠にて正月の3時間スペシャル(1部『娘の疑惑旅行』、2部『美しい母の旅路』)として放送された。

アメリカ留学から帰省した若い女性の周辺に次々と起こる奇怪な殺人事件。その事件が奇妙に芭蕉の『奥の細道』と関係している。ニューヨークのテキスタイル専門学校に在学中の芦名麻佐子(竹下景子)は、男友だちの日系三世・五郎(鹿賀丈史)を連れて久しぶりに帰国。大学の講師をしている父・信雄(菅原謙次)と、銀座でブティックを経営している母・隆子(八千草薫)の表情にかげりがあるのが気がかりだ。

1983年/監督:池広一夫 脚本:吉田剛
竹下景子/八千草薫/菅原謙次/鹿賀丈史/荻島真一

Text:轟夕起夫

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松竹が誇る膨大なライブラリーの中から、山田洋次監督の『男はつらいよ』シリーズ、『釣りバカ日誌』シリーズ、『必殺仕事人』シリーズ(劇場版含む)、「江戸川乱歩の美女シリーズ」など人気シリーズのほか、『東京物語』の小津安二郎監督、『二十四の瞳』の木下恵介監督、『青春残酷物語』の大島渚監督をはじめとする日本が世界に誇る巨匠たちによるエバーグリーンな作品群、そして『ゼロの焦点』など松本清張サスペンス、さらには『鉄男』『野火』の塚本晋也監督ほかコア層を刺激するマニアックな作品群、『ハチ公物語』など感動の動物映画まで、映画・TVドラマファンを飽きさせることのない充実の豪華ラインナップが揃えられている。

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