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アーティストにも広がる麻雀の熱狂 前編 田口淳之介はなぜ麻雀に魅了され、プロ雀士になったのか

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田口淳之介

麻雀プロリーグ戦「Mリーグ」が盛り上がりを見せる中、2022年3月、音楽業界と麻雀業界に驚きのニュースが駆け巡った。田口淳之介が日本プロ麻雀協会へ入会し、プロ雀士となったのだ。確かに近年、元乃木坂46の中田花奈や元放課後プリンセスの長澤茉里奈、たけやま3.5の武田雛歩といった面々がプロ雀士となり、音楽業界と麻雀業界の境界は薄くなりつつある。しかし、麻雀関連でのメディア露出がほとんどなかった田口のプロ雀士転向は、多くの人にとって意表を突いたニュースとなった。

音楽ナタリーでは、リーグ戦やトーナメントへ参加したり、ゲストとして雀荘へ来店したりと、プロ雀士として精力的に活動を続ける田口にインタビュー。前編では、麻雀との出会いや自身の麻雀スタイルなどを紹介する。

取材・文 / 丸澤嘉明 撮影 / 押尾健太郎

出会いは中学3年のとき

──田口さんがプロ雀士になったというニュースを見てびっくりしました。そもそもいつ頃から麻雀をやっていたのでしょうか?

中学3年生のときにパソコンに麻雀ゲームがインストールされていて、なんだろうと思って遊んだのが最初でした。今はさまざまな麻雀アプリがあって、危険牌[※1]を教えてくれる機能が付いたものもありますけど、当時はポンやチー[※2]などの麻雀をするうえでの基本的な機能しかなくて。それで、ポンとかしても役なしで上がれないっていうところから始まって[※3]、井出(洋介)先生の東大式麻雀の本を読んで勉強したりして。その後、月に1、2度のペースで家族麻雀をやり始めたんですけど、僕、初めて出した役満が純正の九蓮宝燈(チュウレンポウトウ)[※4]なんですよ。

──それはすごい! 珍しすぎて、出したら死ぬとまで言われる役満ですね(笑)。

そうそう、それが最初で(笑)。「これ、上がってるよな……?」って思いながら。そこからどんどんハマっていって、大人になってから雀荘に行ったり、家にも全自動卓[※5]を買ったりして。なので麻雀暦で行ったらもう20年ほどになりますね。

──家でもできるように全自動卓を買うのは筋金入りですね。

そうですね。ツアー先にマットと牌を持って行ってやったりもしてましたね。

※1. 他者の上がりとなる可能性のある危ない牌。

※2. 「ポン」は他の人が捨てた牌をもらって同じ数字や種類の3枚の組み合わせを作ること。「チー」は左隣に座った人の捨て牌をもらって、数字が連続した3枚の組み合わせをそろえること。

※3. 麻雀は上がるときには特定の手牌のパターンや状況が必要で、およそ40種類の役がある。役の難易度によって点数が変わり、1飜(イーハン)から役満まである。

※4. ポンやチーをしていない状態で「1112345678999+X」の形を上がったときに成立する役満。役満の中でも極めて出現度が低いものの1つ。

※5. 各局の開始にあたり、すべての牌を混ぜ合わせる作業と山積みの作業を自動で行う卓のこと。

「倍満の貴公子」誕生

──2021年に「田口淳之介 炎の7番勝負」と銘打って5月から12月にかけてプロ雀士の方たちと打っていましたが、あれはどういうきっかけで?

サイバーエージェントの藤田晋さんと俳優の萩原聖人さん主催の私設リーグから始まった「ALL STAR League」という著名人リーグがあり、そこに参加させてもらっていたんです。放送はないんですけど、「Mリーグ」[※6]のオフシーズン中にMリーグスタジオを使ったリーグ戦を月に1、2回くらいのペースでやっていて。それで自分も放送対局をやってみたいと思いTwitterで「放送対局お力貸してくれる方いませんか?」ってつぶやいたらスリアロ[※7]さんが「ぜひ」と手を上げてくれたんです。ホント有名プロや女流プロの方とかいろいろマッチングしていただいて、すごくいい経験させていただきました。

──そうそうたるメンツでしたよね。

そうですね。そこで最初に上がったのが倍満[※8]で。「俺、持ってるな」って思いました(笑)。そこから「倍満の貴公子」という通り名が生まれて。

──しかも最終戦でも倍満を出しましたよね。

僕も出したし、小林剛さんも出しましたね。

──初めての放送対局でそこまで堂々と打てるのはすごいですね。

いやいや、最初は緊張しましたよ。牌を取りこぼしたりとか(笑)。ただ「落ち着いて打ってください」と言っていただいていたので、変に焦ることはなかったですね。落ち着いて打ったほうが、解説の方的にも説明しやすいみたいで。すぐに牌を切ってしまうと視聴者さんが追いつかなくて、逆に面白くないというか。

──なるほど。牌をツモってから切るまでに1拍置くくらいのペースがちょうどいいんですね。

フリー[※9]だとパンパン打たないと逆にテンポ悪いと思われちゃうんですけどね。

※6. 2018年7月に発足した、競技麻雀のチーム対抗戦のナショナルプロリーグ。参加する各選手をMリーガーと呼ぶ。

※7. 株式会社スリーアローズコミュニケーションズの運営するニコニコ生放送の企業チャンネル「麻雀スリアロチャンネル」。麻雀プロ団体の公式戦、タイトル戦の対局の模様のほか、麻雀プロにスポットを当てたバラエティ番組など、麻雀に関わる幅広いジャンルの番組を配信している。

※8. 上がりの際に獲得できる点数のこと。役の合計が8~10翻あり、子の場合は16000点、親の場合は24000点という高得点。

※9. 1人で雀荘を訪れた複数の客が4人集まったらゲームを開始するシステム。知らない者同士で打つのである程度麻雀ができることが前提で、あまりに遅い打牌は嫌がられる傾向にある。

「倍満の貴公子」がプロになるまで

──その後、今年の3月にプロになることを発表されましたが、これはどういう経緯で?

「炎の七番勝負」で7戦中3勝できたのが大きくて、その中でも最後の7戦目でMリーガー3人相手に勝てたのが非常に大きかったです。それが自分の土俵をワンランク上げてやろうと思うきっかけになりましたね。

──多井隆晴さん、小林剛さん、村上淳さんという、「Mリーグ」を代表するプロ雀士相手に勝ったわけですもんね。

もちろん100回打ったら明白に実力差が出ると思うんですけど、半チャン[※10]4回戦だけだったらアマチュアでもチャンスあるのが麻雀の面白いところだと思います。

──麻雀は実力と運のバランスがありますからね。運の話で言うと、麻雀はオカルト的な考え方もありますよね。いわゆる流れ論[※11]とか。田口さんはそういうのはどのくらい気にしますか?

僕は全然気にしないです。麻雀の特性上どうしてもオカルトっぽくなってしまう部分はあるけど、そんなに大事にはしてないです。ゲン担ぎもまったくしませんし。

──それは麻雀に限らず?

そうですね。普段からゲン担ぎすることはないですね。

──なるほど。プロになるにはどういうプロセスを経てなったのでしょう?

競技麻雀[※12]のプロ団体がいくつかある中で僕が所属しているのは日本プロ麻雀協会というところで、歴史で言ったら20年ほどの団体になります。「ALL STAR League」に一緒に参加していた椿彩奈さんという僕の1期先輩がいるんですけど、椿さんからいろいろ話を聞いて、あとは第19期雀王[※13]の矢島亨プロの薦めもあって。ルールも「Mリーグ」に近いし、環境的にも芸能人やインフルエンサーの方も多く所属されているので、日本プロ麻雀協会のプロテストを受けました。

──プロテストは難しいとよく聞きます。

とにかく過去問を何十回もやりましたね。最初は制限時間で全部解けないし、点数も全然取れなかったんですけど、徐々に解き方がわかってきて。

──具体的にどんなことが試験に出るんですか?

点数計算問題やテンパイチャンスが高い待ち牌を選ぶ牌効率問題。あとはトーナメント問題が一番難しくて。条件計算をしないといけないんですよ。ワンデートーナメントでは何回戦の中で何点取れば勝ち上がれます、そのためにはツモだったら何点、ロンだったら何点必要ですというのを頭の中で計算しないといけなくて[※14]。それを限られた時間の中でやるのが難しくて、そこでつまずく方も多いみたいですね。

※10. 「東場、南場、西場、北場」で行われる一荘戦の半分、つまり「東場、南場」のみを戦う形式。

※11. 「流れがきているからリーチしたら一発でツモる」「流れがきているから配牌がいい」といった非科学的なことを信じる人のことを流れ論者という。

※12. ギャンブルではなく純粋なゲーム、競技として行う麻雀。

※13. 日本プロ麻雀協会による年間リーグ戦「雀王戦」の優勝者。

※14. ツモの場合は他の3人から点数をもらえ、ロンの場合は当たり牌を捨てた人のみの支払いとなる。そのため、ツモとロンでは周囲との点数差の増減が異なる。

麻雀のスタイルは

──麻雀には攻撃派 / 守備派、面前派[※15] / 鳴き派[※16]などいろいろなスタイルがありますが、ご自身は?

僕自身はずっと守備派だと思っていたんですけど、矢島プロや椿さんに言わせるとゴリゴリの攻撃派らしいです(笑)。

──いくつか対局を見させていただいて、けっこう攻めるなと思いました(笑)。

もちろんしっかりと役は作りますよ。そうすれば放銃[※17]するリスクも下がりますし、大きい上がりや印象に残る手組みをするのがスタイルなのかなと思いますね。

──好きな役はありますか?

複合形が好きなんですよ。メンタンピン[※18]絡みのマンガン[※19]が僕の中で一番きれいだと思っていて。メンタンピン一盃口(イーペーコー)[※20]とか。

──メンタンピンで1つの役に近いところもありますからね。

そうですね。役満の中で言うと九蓮宝燈は出したこともあるし、面前で作るものの中ではすごくきれいだと思います。1回しか出してないですけど(笑)。

──出したことない人が大半だと思います(笑)。人の手出しツモ切り[※21]はどれくらい見ますか?

そこまで意識はしてないですね。もちろん空切り[※22]とか勉強してますけど、それが本当に正しいのかはわからないので、あまり振り回されることなく、河[※23]の情報で判断しますね。

──相手に対応しすぎるのではなく、基本は自分都合でいけるんですね。

押すところは押すっていう。振り込まないのが一番大事ですけど、自分が上がって点数取らないといけないゲームなので、そのチャンスを逃さないようにしています。テンパイしたら基本はリーチをかけますね。

※15. ポンやチーなどの鳴きを使わず、高打点を目指す雀風。麻雀では鳴くと1飜下がる役が多い。

※16. ポンやチーを多用して、打点よりもスピードを重視する雀風。

※17. ほかの人の上がり牌を捨ててしまうこと。振り込みとも言う。

※18. リーチ、タンヤオ、ピンフの3つの役を複合した略称。麻雀の基本的な役で構成されるため、役作りの王道とも言える。

※19. 上がりのときに手役に応じて獲得できる点数のこと。子の場合は8000点、親の場合は12000点。

※20. 一盃口は「112233」のように同種同順の順子が2組ある、門前でのみ成立する1翻役。

※21. 手出しはツモった際にもともと自分の手の中にあった牌を捨てること、ツモ切りはツモった牌をそのまま捨てること。手出しがあるとその人は一歩手が進んだと考えられるほか、危険牌を推理する際の判断材料にもなる。

※22. 手の中にある牌と同じ牌をツモったときに、手牌にあるほうの牌を切るテクニック。手が進んだり手変わりしたように見せる効果がある。

※23. 牌を捨てる場所のこと。卓の中央部分。

麻雀には夢がある

──麻雀の面白さはどういうところにあると思いますか?

不確定な要素が多い中で、例えばカンチャン[※24]が埋まるとか、1つひとつに喜びがあるんですよ。そのわからない未来を読むのが麻雀の魅力というか。とにかくメンタルスポーツだと思いますね。

──先ほど名前が挙がった藤田晋社長は著書で「人生は配牌[※25]のようなものだ」と言っていました。倍満のイーシャンテン[※26]みたいな大金持ちの家に生まれてくる人もいれば、なんの取り柄もなくひどい家庭環境の家で生まれ育つ人もいる。そして誰もが死ぬまで自分の手配で勝負していかなければいけないと。

そうですね、人生の縮図になっていますよね。自分が我慢したり妥協したりする局面があったり、放銃リスクがある中で突っ張ったりとか、生々しくも夢があるなと思いますね。

<後編に続く>

※24. 「2・4」や「3・5」のように、順子の真ん中の牌を待っている状態。「2・3」や「3・4」の両面待ちと比べて待ち牌の数が少ないため埋まりにくい。

※25. 最初に配られる手牌のこと。

※26. テンパイまであと1枚、上がりまであと2枚の状態。

田口淳之介

1985年11月29日生まれ。2006年、KAT-TUNのメンバーとして「Real Face」でデビュー。2016年にKAT-TUNを脱退後、同年11月にシングル「HERO」でソロデビューを果たす。2017年9月に1stアルバム「DIMENSIONS」を発表。俳優、モデルとしても活動しているほか、2022年3月に日本プロ麻雀協会21期前期生プロテストに合格したことを発表し、現在はプロ雀士としての顔も持つ。

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