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国宝《唐獅子図屏風》ほか皇室の至宝が一堂に 『日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱』をレポート

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右隻:狩野永徳 左隻:狩野常信 国宝《唐獅子図屏風》右隻 桃山時代(16世紀) 左隻 江戸時代(17世紀) 三の丸尚蔵館蔵(8月28日まで展示)

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皇室に代々受け継がれてきた美術品類を収蔵する三の丸尚蔵館の至宝に、東京藝術大学のコレクションを加えた81点の作品で日本美術の歴史をたどる展覧会『日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱』が9月25日(日)まで東京藝術大学大学美術館で開催中。昨年、三の丸尚蔵館の収蔵品として初めて国宝に指定された5つの作品も公開されている。

三の丸尚蔵館は、国に寄贈された昭和天皇の遺品を管理・保存することを目的に生まれた美術館。1993年に開館し、皇室に代々受け継がれた美術品を中心に、現在約9,800点の美術品類を収蔵している。同展では、この三の丸尚蔵館の至宝に東京藝術大学大学美術館のコレクションをあわせて紹介し、日本美術の魅力に迫っていく。

展覧会は4章の構成。序章「美の玉手箱を開けましょう」では、明治天皇の許可のもと9年の歳月をかけて制作された《菊蒔絵螺鈿棚》のように、宮内省と東京美術学校によって後世に伝えるべく作られた名作や、岡倉天心の『日本美術史』講義ノートや、法隆寺金堂模型など美術を学問的に捉えるためにつくられた資料を展示。日本美術の魅力へと鑑賞者をいざなっていく。

手前 図案:六角紫水、蒔絵:川之邊一朝ほか 海野勝珉《菊蒔絵螺鈿棚》明治36年(1903年)三の丸尚蔵館蔵

第1章「文字からはじまる日本の美」は、平安時代に生み出された仮名文字が発展し、美の概念へ結びつき、展開していく過程をたどっていく。藤原佐理の流麗な文字が美しい《恩命帖》は、宛名はないもののへりくだる表現から佐理が上位者へ宛てたお詫びだと考えられている。伝藤原行成の《粘葉本和漢朗詠集》は、竹製の紙に亀甲や牡丹などの文様が雲母で擦りだされた唐紙に『和漢朗詠集』が書き写され、秀麗さが際立つ。

昨年、国宝に指定された小野道風の書として知られる《屏風土代》は9月6日(火)より、この章で展示される予定だ。

手前 藤原佐理《恩命帖》平安時代 天元5年(982年) 三の丸尚蔵館蔵(9月4日まで展示)
伝藤原行成《粘葉本和漢朗詠集》平安時代(11世紀)※場面替えあり

第2章は「人と物語の共演」。人々が創り出した数々の物語をもとにした美術作品が紹介される。狩野永徳の制作と伝えられている《源氏物語図屏風》は、本来は襖絵であったものと考えられている。左隻は「若紫」、右隻は「右上に常夏」、左上に「蜻蛉」の場面が描かれた、重厚であり、可憐さも感じさせる作品だ。

奥 伝狩野永徳《源氏物語図屏風》桃山時代(16〜17世紀) 三の丸尚蔵館蔵(9月4日まで展示)

《伊勢物語図屏風》は、明治から昭和にかけて活躍した画家による作品。伝統的な画題を、近代の画家たちはいかに継承し発展させたかを感じ取ることができる。山崎朝雲《賀茂競馬置物》は昭和天皇の皇太子時代に結婚を祝う献上品として制作されたもの。細部まで精緻に表現されている。

第2章で展示される三の丸尚蔵館の国宝は《蒙古襲来絵詞》と《春日権現験記絵 巻四、五》。どちらの作品も9月6日より巻き替えを行う。

手前:高取稚成/前田氏実《伊勢物語図屏風》(右隻)大正5年(1916年)三の丸尚蔵館蔵(9月4日まで展示※9月6日より左隻を展示)
手前 山崎朝雲《賀茂競馬置物》大正13年(1924年)三の丸尚蔵館蔵

その大きさも圧巻の国宝《唐獅子図屏風》

第3章「生き物わくわく」は、江戸から昭和にかけての生物をテーマにした作品を多く取り揃える。狩野永徳、狩野常信による国宝《唐獅子図屏風》(8月28日まで展示)や、8月30日からは伊藤若冲の国宝《動植綵絵》全30幅のうち10幅がならぶ空間はこの展覧会のクライマックスとも言えるだろう。

《唐獅子図屏風》は、右隻を狩野永徳が桃山時代に、左隻を狩野常信が江戸時代に描いたもの。その巨大さはもちろんのこと、永徳の迫力あふれる獅子、そして永徳の獅子よりも若干落ち着きのある経信の獅子、両者の違いも見比べてみよう。

右隻:狩野永徳 左隻:狩野常信 国宝《唐獅子図屏風》右隻 桃山時代(16世紀) 左隻 江戸時代(17世紀) 三の丸尚蔵館蔵(8月28日まで展示)

また酒井抱一の《花鳥十二ヶ月図》や、葛飾北斎の肉筆画《西瓜図》、重要文化財である高橋由一の《鮭》など、絵師や画家たちの表現手法が際立つ作品にも注目だ。

酒井抱一《花鳥十二ヶ月図》江戸時代 文政6年(1823年)の一部 (8月28日まで展示)
左:葛飾北斎《西瓜図》江戸時代 天保10年(1839年)三の丸尚蔵館蔵(8月28日まで展示) 右:重要文化財 高橋由一《鮭》明治10年(1877年) 東京藝術大学大学美術館蔵

第4章「風景に心を寄せる」は、自然や風景をモチーフにした作品を紹介。江戸時代の蒔絵から、明治、大正、昭和時代の七宝や洋画なども並ぶバラエティ豊かな空間だ。

初代飯塚桃葉《宇治川蛍蒔絵料紙箱・硯箱》江戸時代 暗永4年(1775年)三の丸尚蔵館蔵(8月28日まで展示)
左:高橋由一《栗子山隧道》明治14年(1881年) 右:五姓田義松《ナイアガラ景図》明治22年(1889年)いずれも三の丸尚蔵館蔵

新施設への移行のため、現在は休館中の三の丸尚蔵館の作品をまとめて見られる貴重な展覧会。繊細な作品が多いため展示替えとなる作品も非常に多い。目当ての作品をしっかり見られるよう、事前に公式Webサイトにある出品リストなどで展示日程をきちんと抑えたうえで美術館へ出かけよう。

取材・文:浦島茂世


【開催情報】
『日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱』
8月6日(土)~9月25日(日)、東京藝術大学大学美術館にて開催
※会期中展示替えあり
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/tamatebako2022/

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