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日本生まれのゲーム“ソニック”の映画化はなぜ成功したのか? プロデューサーが語る

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『ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ』

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全世界で大ヒットを記録している超大作映画『ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ』がついに公開になる。本作はすでに公開された地域で大きな成功をおさめているが、ソニックは日本生まれのキャラクターで日本公開は待ちに待った“里帰り”になる。日本で生まれたゲームキャラクターはなぜ、全世界でヒットする映画の主人公になれたのか? 本作のプロデューサーを務めた中原徹氏に話を聞いた。

ソニックは青いハリネズミのキャラクター。目にも止まらぬ速度で走り、縦横無尽に画面を駆け回る。1991年にゲーム『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』でデビューを飾ると、日本だけでなくアメリカでも大ヒット。シリーズを重ねる中でソニックの人気は世界各地に広がっていった。

「ソニックはビデオゲームのキャラクターとして日本でも人気を集めていますが、ドリームキャストの撤退などもあり、セガのゲームが一時期よりも活躍できなくなっていた時期がありました」と中原氏は説明する。

「一方で、アメリカではセガのゲームがすごく人気で、アメリカではソニックは(日本でいうところの)ドラえもんぐらいの知名度があるんですよ。ヨーロッパでも同じぐらい知られていると思います。

ソニックは少しだけ生意気で、むこうみずでスピード感があって、よく笑い、よくしゃべり、根はとってもいいやつ。これは欧米の人の考える“良い男の子像”だと思うんです。それは日本で愛されてきた王道のキャラクターとは少し違うんですけど、ゲームが進化していく過程で自然とキャラクターができていき、欧米の方たちからも愛されるようになったのかな、と思っています」

『ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ』

やがて、ソニックはグッズ化やアニメ化されるようになったが、ついにハリウッドでの映画化が動き出す。

「2017年に『ソニックマニア』というゲームが結構ヒットしたのもあって、映画化のお話をいただいたんです。当時のソニックはアメリカで爆発的な人気というわけではないけれど、一定の市民権を得たキャラクターではありました。かつてゲームを遊んでくれた人たち、つまり今のお父さん・お母さんの世代は知ってくれているけど、子どもたちがソニックのことを知っているかどうかは微妙、という状況です。

ですから、ここで映画になれば、ゲーム発売時では考えられないほどのプロモーション費が投じられることになるので、小さな子どもたちも、お父さん・お母さんの世代も、さらにいうとこれまでソニックの知名度の高くなかった地域の方にも楽しんでもらえる。このタイミングで“ハリウッド映画”という巨大な打ち上げ花火をあげる価値があると思ったんです」

しかし、当時、セガ社内ではソニックの映画化を歓迎しない声も聞かれたという。

かつてセガはエッジの効いた最先端のゲームを数多く世に送り出してきた。巨大な筐体で子どもたちの人気をさらった『スペースハリアー』や『アフターバーナー』、一大ブームを巻き起こした3D格闘ゲーム『バーチャファイター』、ネット通信機能を搭載した家庭用ゲーム機「ドリームキャスト」など、“攻め”の姿勢が魅力だったが、当時のセガは「“守り”に入っている時期だったのかもしれません」と中原氏は振り返る。

「ですから当時は『ゲームの映画化の失敗例はたくさんあるのに』とか『ダマされてお金だけとられるんじゃないか』なんて声も一部にはありました。でも、セガサミーホールディングスが誕生して、新しいことに挑戦していこうとするタイミングと映画制作のタイミングが一致して、セガが本来持っていた“新しいことにチャレンジするマインド”が呼び覚まされた部分もありましたね」

さらに映画づくりをしてきたパラマウント社と、ゲームづくりにまい進してきたセガの間も当初はぶつかることが多かったという。

「でも結果的に、セガには幅広い方に映画を観てもらうためには変えるべきところは変えなければならないという柔軟さがありましたし、パラマウントもビデオゲームに対する理解と尊敬がありましたから、良いタイミングで双方が歩み寄っていくことができました。」

映画化成功は「世界中のファンのみなさんの支えがあったことが大きい」

『ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ』

セガ社内やパラマウント、そして映画のクリエイティブチームが結束できたのは「ファンの方に喜んでもらいたい、ソニックを知らない方にも映画を楽しんでもらいたい」という点で彼らの意見が一致したからだ。

「ソニックのファンはすごく声の大きい人が多いんですよ。だからパラマウントも映画を制作する過程で『こんなにも熱狂的なファンが多いのか』ってビックリしていましたし、パラマウントの幹部たちもファンのTweetや投稿を見る中で『ファンの声をちゃんと聞こう』と思うようになった。それはソニックのファンのおかげなんです。

ソニックのファンは自分でイラストを描いたり、映像をつくったり、クリエイティブチームの一員になっているような方が多いんですよ。だから、映画の脚本づくりやデザインをつくる上ではファンの声をすごく聞きましたし、演出の面でもファンの方が観るとクスッと笑えるものを入れていきました。

ソニックのことを知らない人でも楽しめる映画にするのは大前提で、その上でファンが見ると細かいところまで楽しめるようにしていこうと」

本作のプレミアに登場した中原徹プロデューサー(写真左から2人目)

結果、完成した映画『ソニック・ザ・ムービー』は2020年に公開され、全世界で3億ドルを超える興行収入を記録。北米ではビデオゲームの映画化として最大の成功をおさめた。

「きれいごとを言うようですが、本当に世界中のファンのみなさんの支えがあったことが大きいです。その上で、ゲームのファンの方だけが喜ぶ映画になってもよくないので、幅広い方が楽しめる映画にするバランスをパラマウント、セガ、監督らで共有できたことも大きかったですね」

そしてついにシリーズ第2弾『ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ』が公開になる。本作では、ソニックだけでなく、シリーズの人気キャラクターでもあるパワーが自慢のハリモグラのナックルズも登場。ソニック、彼の相棒テイルス、そしてナックルズを主軸に大冒険活劇が繰り広げられる。

「1作目は野球でたとえるなら”切り込み隊長”の1番バッターのような存在だったのですが、ありがたいことに1作目がヒットしたことで、今回公開になる新作は、塁に出ているランナーをホームに帰す5番バッターのような役割になっています。12月からはNetflixで『ソニックプライム』というフルCGアニメーションの配信が予定されていますし、冬にはゲーム『ソニックフロンティア』の発売も予定されています。

『ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ』

今回の映画は、冒険活劇としてアクションの質と量がパワーアップしています。アクションあり、笑いもありで、日常を忘れてスカッと楽しめる映画にしたかったんです。王道のスカッと楽しめる映画って意外と減っている気がするんですよ。でも、映画館でとにかく楽しんでもらってスカッとした気分で“明日からもがんばろう”と思ってもらう映画がこれからの時代はさらに大事になってくると思うんです。

前作を観ていただいた方からすごく良い評価をいただけたので、今回の映画でもひとりでも多くの方に欧米で活躍して故郷・日本に帰ってきたソニックの姿を観ていただきたいです」

『ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ』
8月19日(金) 全国公開
(C)2022 PARAMOUNT PICTURES AND SEGA OF AMERICA, INC.

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