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「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『斬、』

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リアルサウンド

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、“ノイズアーティスト”の顔も持つ島田が『斬、』をプッシュします。

 『鉄男』『六月の蛇』『野火』など常に独自の道を突き進む塚本晋也監督の最新作『斬、』。塚本監督にとって初の時代劇である本作では、江戸時代末期の農村を舞台に、剣の達人でありながら、人を斬ったことがない浪人・都築杢之進が主人公だ。もはや塚本節とも言える、独特の緊張感と無骨さは年を重ねるごとに増していく。

 現在国内で演技派としての評価を確立した役者である、池松壮亮と蒼井優のもはや「演技合戦」とも言える、気迫のぶつけ合いも大きな見どころだ。設定も脚本もシンプルながら、とにかく、心を休めるような場面は一切ない。

 人を斬ったことがない浪人・都築杢之進が愛する人を守るために刀を抜くことが出来るのか。究極的なテーマはこれに集約される。それが当然の復讐であれ、どんなに憎むべき相手であれ、人を殺めてしまっていいのか? 描かれている舞台は江戸時代末期の農村だが、本作が執拗に問いかけるその疑問は、今の時代でも十分に適用されることだ。むしろ情勢の慌ただしい今だからこそより重く響くとも言える。

 ここまで書くと、「観ていてしんどそう」と思われる方もいるかと思うが、きっと自然とこの映画の世界に入り込んでいるはずだ。山形県・庄内をロケ地とした安穏とした夏の風景は美しい。時代劇なので当然自動車や電車があるはずもなく、役者の息づかいとセミの声がしっかり五感に伝わり、この映画に集中させてくれる。80分という短いランニングタイムながら、濃厚な映画体験となるだろう。