隼太からHAYATAへ 第6回 直打ちで撮るか、傘で撮るか、ボックスで撮るか
ステージ
ニュース
藤原季節(奥)を撮影する竪山隼太。(撮影:平岩享)
十代で「ライオンキング」ヤングシンバ役に抜擢、二十代を蜷川幸雄率いるさいたまネクスト・シアターで過ごし、32歳となった今年、舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」のロン・ウィーズリー役で活躍中の俳優・竪山隼太が、もう1つの夢であるカメラマン・HAYATAを目指す本企画。舞台をはじめさまざまなメディアで活躍するプロのカメラマン・平岩享が先生となり、隼太は毎回多様な課題に取り組みながら、“隼太からHAYATAへ”の道を突き進む。
第6回は、2015年に上演された岩松了作・演出「青い瞳」で竪山と共演した、藤原季節が登場。今回はとある雑居ビルの1室で、ストロボを使った撮影に挑んだ。
構成 / 熊井玲 ヘアメイク / オオトウアキ
第6回の課題「ストロボライティングで撮影する!」
平岩「プロのポートレートカメラマンに必須なスキルの1つがストロボライティングです。今回は3種類のライトを用意して隼太くんに、役者仲間の藤原季節さんを撮影してもらいました。同じ条件でもライティングを変えることでどう写るのかを理解してもらい、次に隼太くんが撮りたいライティングで藤原さんを撮影してもらいました。ライティングの効果を理解したうえで表情やポーズを指示して撮影する楽しさを知ってほしかったからです」
1st Trial
ふらっと撮影場所に現れた藤原は、その雰囲気のままカメラの前に立った。何気なく窓の先に向けた目線、さっと髪をかき上げたときの指の動きなど、藤原のふとした仕草が目を奪う。竪山はその瞬間を逃すまいと、何度もシャッターを切った。
竪山「俳優としてはとてもなじみのある撮影となりました。なぜならどの事務所にいても舞台に出ても、宣材写真としてストロボ撮影の機会があるためです。とはいえそれも被写体としての話。扱うとなると話が違います。元気な生き生きとした画が撮れる直打ち、爽やかな光を当てる大傘、陰影がつけられるグリッドを学びました。被写体には岩松了さん演出「青い瞳」で共演した藤原季節にお願いしました。今までお願いした被写体の中で一番付き合いが長い季節。試し撮りで1枚撮ってみると。いやーすげえ。ただただ頼んで良かったなと。一発目から心を開いてくれてたんですよね。まあ季節とは出会いから今までエピソードだらけなので(笑)、それは次回にとっておきます。
写真を撮るためのスタジオ撮影ではなく、レンタルワンルーム部屋で撮影したのですが、切り取る画角を考えればどうでしょう。まるでスタジオで撮影したかのような写真に。場所は関係ないんですね。とにかくどのストロボで撮っても季節が画になるのでバシャバシャと楽しくシャッターを切らせてもらいました」
2nd Trial
もともと関係性が深い2人。そのおかげか、10分もすると撮影の距離感が一気に縮まった。すると、平岩先生はストロボの位置を次々と変え、時には自らストロボを持ち上げながら、「隼太くん、ここ!」「今度はここ!」と、撮らせたいポイントを具体的に指示していく。そんな“熱血師弟”の前でも、自然な佇まいを貫き続ける藤原に、俳優としての器の大きさを感じた。
竪山「楽しくシャッターを切る僕の様子を見てか、平岩さんも楽しそうにストロボに付いてる脚を外し、ストロボを手でつかみ、季節をベッドに倒して、ストロボを上から当ててくださいました。わかります。季節の儚げな色気をきっと感じ取ってくださったのでしょう。僕が季節に出会ったのは7年前。改めて大人になった季節に感心しながら撮影しました。またここで担当編集の熊井さんから「季節さんの笑顔の写真が欲しい」とオーダーされました。
「おい、季節。笑え!!!」僕は咄嗟に命令形で指示。平岩さんが「いやいや、言い方!!!」とツッコんでくださり、みんなで爆笑。その間に季節のシャッターを切りました」
Review
平岩「今回は傘とボックスと直打ちのライティングで藤原さんを撮ってもらいました。どのライティングでも撮影ごとに撮った写真を藤原さんに見てもらい、撮りたいイメージを共有することで良い表情を引き出して撮影していました。ポートレートを撮るうえで僕が大事だと思っているコミュニケーションをしっかりと実践している姿が頼もしかったです。藤原さんという被写体の個性もしっかり理解したうえでの撮影だったので、迷うことなくしっかり真正面から撮影できていました。今回は隼太くんじゃなければ撮れないであろう藤原季節さんのポートレートがしっかりと撮れたと思います」
モデル・藤原季節が語る、隼太とHAYATA
隼太さんが写真をやり始めたということは聞いていて、実際、プライベートでも最近はよくカメラを持っているなという印象があったんですけど、今回この企画の話を聞いて、「本格的なことに乗り出したな」と(笑)。すごくワクワクして、「ぜひやらせてください!」と、参加させてもらいました。隼太さんは周囲を巻き込む力がある人で、応援したくなるんですよね。
普段は写真を撮られるのが苦手で、無表情で終わってしまうこともあるんですけど、今日は全然緊張しなかったし、いろいろな表情ができたような気がします。撮影の途中で隼太さんが見せてくれたカットがどれも良かったので、自分のテンションが上がっていきました。
第6回を終えて
竪山「ストロボ撮影についてはまだまだわからないことだらけです。平岩さんの機材をお借りして、明かりとカメラを調整しつつ試しながらの撮影。だったのですが、季節との撮影が楽しすぎて時間を忘れました。画になるんですよね。自然体でただそこにいるだけ。それがどれだけ難しいことか。季節が舞台や映像で注目される頼もしい俳優になっていることもきっと僕自身うれしかったんだと思います。宣材で使えそうな写真がたくさん撮れた気がしてうれしかった。ストロボ機材はのちのち購入確定となりました。もともと僕は俳優さんの宣材にもできる写真をたくさん撮りたくて平岩さんに弟子入りしてるので。平岩さんは成功体験を積ませてくださってます。本当にありがとうございます」
プロフィール
竪山隼太(タテヤマハヤタ)
1990年、大阪府生まれ。2000年に劇団四季ミュージカル「ライオンキング」ヤングシンバ役でデビュー後、「天才てれびくんワイド」にレギュラー出演し子役として活動。2009年に蜷川幸雄率いる演劇集団さいたまネクスト・シアターで活動。最近の出演作に「Take Me Out 2018」、「ガラスの動物園」(上村聡史演出)、さいたまネクスト・シアター最終公演「雨花のけもの」(細川洋平作、岩松了演出)など。7月から舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」に出演中。
平岩享(ヒライワトオル)
1974年、愛知県生まれ。フォトグラファー。時代の顔となるポートレートを数多く撮影。岩井秀人が代表を務める株式会社WAREのサポートメンバー。近年はドローンを使った動画など、新しい手法にも取り組んでいる。
藤原季節(フジワラキセツ)
1993年、北海道生まれ。近年出演した舞台作品に「サンソンールイ16世の首を刎ねた男ー」(白井晃演出)、劇団た組「ぽに」(加藤拓也作・演出)など。ドラマ10「プリズム」(NHK総合 / 毎週火曜22:00~)が放送中。待機作に、劇団た組「ドードーが落下する」(加藤拓也作・演出)、「監察医 朝顔 2022スペシャル」(CX系列/9月26日21:00~)、AmazonOriginal「モダンラブ・東京」第三話「最悪のデートが最高になったわけ」(山下敦弘監督 / 2022年10月21日全世界同時配信)などがある。