Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
ぴあ 総合TOP > 忘れられないあのライブ 第3回 元ピスタチオ伊地知大樹が語る、1万5千人を集めた年越しライブと7年後の今

忘れられないあのライブ 第3回 元ピスタチオ伊地知大樹が語る、1万5千人を集めた年越しライブと7年後の今

ステージ

ニュース

ナタリー

伊地知大樹

お笑い好きの私たちに「忘れられないあのライブ」があるように、芸人にもそんなライブがあるだろうか? ウケた、スベった、隣の芸人が爆笑を取って悔しかった……出演者として体験した「忘れられないあのライブ」、そしてお客さんとして心揺さぶられた「忘れられないあのライブ」について、芸人たちに聞いてみる。第3回は、今年5月にピスタチオを解散し、今月4日には初単独ライブ「ピカピカの一年生」の開催を控えている伊地知大樹。ネタ作りと並行してチケットの手売りに奔走している近況も語ってくれた。

取材 / 狩野有理

忘れられない“出た”ライブ

「紅白」からの1万5000人年越しライブ

2015年に、ピスタチオ、バンビーノ、8.6秒バズーカー、クマムシの4組で全国ツアーをやっていて(参考記事:おっさんでもアイドルになれるんだ!ピスタチオ、8.6秒らOPARTY大盛況)、その派生のような形で年末に八景島シーパラダイスでカウントダウンライブをやったんです。クマムシは来られず、3組で。お客さんは1万5000人くらい集まってくれたのかな。それまでに出た中で一番デカいライブでした。あの景色は忘れられないです。

僕らが何を言っても、歓声と拍手。何がウケてる、スベってるっていうより、アイドルみたいな感じでした。ただただ気持ちいい(笑)。しかもその日、「NHK紅白歌合戦」に出させてもらっていて。「紅白」出番終わりの、飛び出しで八景島シーパラダイス入り。とんでもない超売れっ子スケジュールですよね(笑)。人生の絶頂という感じでした。

今、自分で単独ライブのチケットを手売りしているんですけど、この前新宿駅のスペースを借りてやっていたら、八景島のイベントに参加していたという方がベビーカーに子供を乗せながら来てくれたんです。その1万5000人のうちの1人が。「あのときカメラを落として写真を撮れなかったので、今日撮ってもらっていいですか?」と、まったく人気のない今の僕と写真を撮って「ありがとうございます!」って喜んでくれたのを見て、がんばらないとなと思いましたね。そのお子さんと一緒に単独に来てくれると言っていたので、なんとか笑わせないとな。

感じる時代の移り変わり

当時は人気の渦中にいたのであの景色も「すげえな」くらにしか思っていませんでしたけど、7年経った今思い返すと、とんでもないことだったなと感じます。まあ、言ってもまだ7年ですからね。一発屋界では、最後の一発屋はひょっこりはんだと言われていて。それが2018年。それ以前はYouTubeが今ほど盛んじゃなかったから、大きなテレビ番組、「アメトーーク!」(テレビ朝日)とか「おもしろ荘」(日本テレビ)とか、出ればスターになれる時代だった。逆に今はいろんな媒体があるから、“みんなが知ってる芸人”が生まれづらいところがありますよね。

8.6秒バズーカーのはまやねんが今、キッチンカーをやっていて、この前そこに顔を出しに行ってきました。隣の焼きそばの屋台とかは列ができていたんですけど、はまやねんのキッチンカーには、あの衣装を着て店頭に立ってるのに誰も並んでいなくて。時代感じましたねー(笑)。さらにせつないのが、当時は真っ赤だった衣装のシャツが、日に焼けてだいぶ薄くなっていて。その哀愁がまたすごかった……。僕も今1人でチケ売りしてるので、「がんばろうぜ、お互い」って再確認しました。

「NEWニューヨーク」でのピスタチオラストライブ

「NEWニューヨーク」(テレビ朝日)の解散式は、ただただ芸人愛にあふれていましたね。あのときは、「解散することになって悲しい」というよりも、とにかく「幸せだな」という感じでした。友達のA.B.C-Zの河合(郁人)くんが板付きで座ってる状態には「これでいいのかよ」とは思いましたけど……。放送のあと、いろんな芸人や芸能界の仲間が「なんで呼んでくれなかったの?」「俺も行きたかった」って言ってくれて、うれしかったですね。ただ、あれだけ笑ってくれるなら普段からもっと笑ってくれよとは思いました(笑)。

スベりすぎて忘れられない

ピスタチオのネタって良くも悪くも、「ピスタチオですっ」「お願いしますっ」のひと言目で世界観を受け入れてもらえたらだいたいそのあともウケるんですけど、反対につかみで「やば!」って思ってもキャラに入っちゃっているから最後までひたすら汗をかき続けるしかないんですよ(笑)。ちょっとだけ間を伸ばすとか縮めるくらいしかできなくて。だからスベるときは大スベリするんです。よしもと幕張イオンモール劇場の寄席でまさにその大スベリが起きました。最初から最後まで笑いがないまま、「もういい加減にしてっ」「ありがとうございましたっ」で終わったら、最前列のお客さんが「えっ?」って言ったんですよ。その「えっ」が会場中に響き渡って、袖で見ていたマテンロウやコロコロチキチキペッパーズに死ぬほどイジられて(笑)。あれは1週間くらい引きずりましたね。

忘れられない“見た”ライブ

ジャングルポケットおたけさんに連れて行ってもらった、「ボディガード」というミュージカル。ミュージカルって数回しか見たことがなかったし、全編英語なんですけど僕、英語が1つもわからなくて。面白いのかな?と思っていましたが、とりあえず5回くらい泣きました(笑)。英語もわからないし、ステージのサイドに出ている日本語字幕もさほど見ていなかったんですが、空気とかオーラ、そういうのに感動して涙が出てきて。ジェットコースターに乗ったときのような、グワッと来る感じでした。

元相方の小澤(慎一朗)とコンビを組む前、NSCの同期何人かで大阪に行ったときに、普通にチケットを買って5upよしもとの舞台を観たことがありました。そのときになんか覚えているのが、バイク川崎バイクさん。当時、BKBさんは「めちゃ×2イケてるッ!」(フジテレビ)に出てバッと注目度が上がっていた頃で。シンプルに「あ、BKBだ!」って思って。素人みたいに(笑)。満員のお客さんにめちゃくちゃウケていたのがすごく印象深いんですよね。ほかは誰が出ていたか全然覚えていないのに。たぶん僕がミーハーだったのもあるんでしょうけど。そのときからBKBさんはおなじみの「B!K!B!」をやっていました。すごいですよね。毎年ちゃんと8月19日、バイクの日に単独ライブを打って1人コントもしっかりやっているのに、営業とかではあれをやり続けているっていう。

生の醍醐味は?

芸人にとってライブは試す場でもあると思います。テレビ番組だったら絶対的に自信があるネタしか持って行かないけど、ライブではそれこそピスタチオも、白目以外のネタもバンバンやっていましたし。「ここでしかやらないネタ」を見られるのはライブの面白さだと思います。ハプニングもライブならでは。おそらく、僕らが大スベリした幕張の寄席の「えっ?」も、会場じゃないとあの大きさでは聞けなかったと思います(笑)。でも今は配信も大事なので、僕の単独ライブも誰か芸人がつぶやいてくれないかなって思ってますね。僕自身が口コミなしのストレートで最近買ったのは、ニューヨークの単独ライブと、三浦マイルドさんの単独ライブ。三浦マイルドさんはピンの先輩なのでちょっと参考に観ようかなと思ったんですけど、世界観強すぎて1個も参考にならなかったです(笑)。僕にはできないネタばっかり。

単独ライブに向けて

中身が全部違うお楽しみ袋

ピスタチオだったら、白目のネタを1つ見せたら「こういう芸人なんだ」と一発でわかると思うんですが、今の僕の場合は、まだ「こういう芸風です」という感じじゃないんです。ピンになりたてで、やりたいこともいっぱいあって、絞っていない状態。芸名を「伊地知大樹」にしているのは、そういう理由もあって。特定の芸名を付けたらそのキャラで確立されちゃうじゃないですか。僕の中ではまだいろいろやりたいから、今は「伊地知大樹」のままで、もしかしたらネタがこれってなったら芸名を変える可能性もあります。ピン芸人としての本当にスタートの段階ですね。

ただ言えることは、すごい発想力、世界観を期待する人はマジで来ないでください(笑)。これは先に言っておきます。反対に、何も考えずに笑いたい人にはぜひ来てほしいですね。とてつもなくハマるかもしれないし、とてつもなくスベる可能性もありますけど。でも1本目が面白くなくても、じゃあ全部面白くないかっていうとそうじゃない。全部、全然違う、お楽しみ袋だと思って来てください。やることは地道にやっていきますが、ネタに関しては、今から一歩ずつ階段を上っていくというのは違うと思っていて。エスカレーターでいきなり上の階まで行かないと、先がない。普通に漫談して、コントして、という感じにはならないかな。一発狙うネタしかやりません。

久々のチケ売り

前は相方がいたから、例えばチケットが売れていなかったら「お前もやれよ」と言えましたけど、今って全部自分の責任。やる内容はお客さんが何人いても同じですけど、やっぱり10人に見てもらうよりは100人に、100人に見てもらうよりは1000人に見てもらいたい。だから自分で動くしかないんです。実は、初動で12枚しか売れなくて(笑)。ピスタチオ解散の挨拶ツイートには32万いいねが付いて、リプライやDMを合せたら2000件くらいメッセージをいただきました。「解散してもずっと応援しています」と。あの人たちはどこへ行ったのか……。しかも、聞いたら12枚のうち僕の知り合いが7枚、マネージャーの友達が2枚買ってくれていたことがわかったので、実質売れたのは3枚なんです。そこで、まずいぞと(笑)。今、何もない僕のところにチケットを買いに来てくれて、「応援してます」って言ってくれる人は本当に信用できるファン。そういう人たちで満席になって、単独ライブで面白いと思ってもらえれば、きっと次も来てくれますよね。だから自分にプレッシャーをかける意味でも、なんとか満席にしたいですね。

今注目の芸人は?

ペペロペBURGERSかなあ。知らないですか? 注目しておいたほうがいいですよ。「M-1グランプリ」1回戦落ちのリズムネタユニット・ペペロペBURGERS。ただの1回戦落ちじゃないですからね、2年連続です。今年も出ます。ニック、リチャード、サイモンの3人組で、リズムとか流れはリチャードが、細かいボケはサイモンが決めています。9月8日(木)にある「リズムネタ総選挙」でぜひ観てください。「M-1」とこのライブくらいでしか見られないです。貴重ですよ。

※編集部注:フィーバーゆうじろう(ニック)、伊地知(リチャード)、ダイヤモンド野澤(サイモン)によるユニット。2021年10月放送の「ザ・ベストワン」(TBSテレビ)に出演した。

伊地知大樹(イジチヒロキ)

1985年2月5日生まれ、神奈川県出身。 2010年4月にピスタチオを結成。“白目漫才”で注目を集め、2015年「アメトーーク!」(テレビ朝日)の企画「ザキヤマ&フジモンがパクリたい-1グランプリ」で優勝した。今年5月31日にコンビを解散し、ピン芸人として活動中。吉本興業所属。

伊地知大樹単独ライブ「ピカピカの一年生」

日時:2022年9月4日(日)18:40開場 19:00開演 20:00終演
会場:東京・ヨシモト∞ホール
料金:前売2000円 当日2500円 / 配信1200円

リズムネタ総選挙

日時:2022年9月8日(木)20:45開場 21:00開演 22:00終演
会場:東京・ヨシモト∞ドームI
料金:前売1800円 当日2300円 / 配信1000円