「千夜、一夜」久保田直が回想、田中裕子と尾野真千子による“一生忘れない光景”とは
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「千夜、一夜」プレミア上映舞台挨拶の様子。左から久保田直、ダンカン、尾野真千子、安藤政信。
「千夜、一夜」のプレミア上映舞台挨拶が本日9月5日に東京・ヒューマントラストシネマ渋谷で行われ、キャストの尾野真千子、ダンカン、安藤政信、監督の久保田直が登壇した。
本作では北の離島にある港町を舞台に、理由もわからぬまま突然姿を消した最愛の夫を30年間も待ち続ける女性・登美子の姿が描かれる。主演を務めた田中裕子が登美子を演じ、尾野が2年前に失踪した夫を探す奈美、ダンカンが登美子に思いを寄せる漁師の春男、安藤が奈美の夫・洋司に扮した。
失踪者リストから着想を得て製作された本作。久保田は「今から20年ぐらい前に拉致されたんじゃないかと思われる方、300人ぐらいの顔が写ったポスターが張り出されたんです。それが強烈に印象に残っていました」と振り返り、「その後、ポスターに写っていた人の何人かが『自分の意思で蒸発した』と家族に告げたと聞いて。どんな理由で消えてしまいたいと思ったんだろうか、家族はどんな思いで待っていたんだろうかと考えているうちに、家族のちょっとしたすれ違いや裏切りが浮かんできたんです」と述べた。
尾野は登美子とは対照的な選択をする女性として描かれる奈美について「彼女の選択は現実的なのかなと。次の一歩を踏み出す女性なんです。だけどちょっとずるくない?って思ったり、だけどそれでよかったねって思ったり。すごく難しい題材なんです」と語りかける。安藤は「(演じた洋司は)消えてしまう役だったので、胸が痛くなりました。自分が強すぎる女性がすごく苦手なんで、消えてしまう気持ちもちょっとわかりました」と述懐した。
ダンカンは「8年前に妻を突然亡くしたんです。いないのはわかっているんですけど、ある日突然帰ってくるんじゃないかって。そこを待ってしまうところがある。だから待ち続ける登美子の気持ちもわかりますし、登美子を待っている春男の気持ちもわかってくれよ!と。そう思いながら演じていました」と思い返す。
イベント中盤には本作の物語にちなみ“待つこと”について登壇者がトークする場面も。尾野は「私たちの仕事は平気で4、5時間待つんですよ。『待つのが仕事です』と言われると待たなあかんって、がんばって待ちますね」とコメント。安藤は「ずっと待ち続けて、今月末に写真展やることになりました!」と笑顔で報告し、会場を和ませる。
最後に久保田は「クランクインまで6年掛かったんですが、撮影5日目で裕子さんと話し合うことになりました。当時はロックダウンという言葉が使われ始めた頃。僕としては緊急事態宣言が発出されるまで撮り続けたい気持ちがありました。ストップしてしまったら再開するのは難しいだろうということで頭がいっぱいだったんです」と回想。続けて「でも裕子さんと、お世話になっている佐渡の人に迷惑をかけてしまったら、コロナをうつしてしまったら2度と撮影できないという話をして、中断するということになりました」と説明し、「裕子さんが『健康でいて、健康でさえいれば必ず』と涙を流してくださって。そのとき真千子さんもいたんですが『絶対、裕子さんと芝居したい!』とおっしゃっていて、一生忘れない光景です。この年月を掛けたからこそ、よい作品ができたと思っています」と思いを口にし、イベントの幕を引いた。
「千夜、一夜」は、10月7日より東京・テアトル新宿、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー。
(c)2022 映画『千夜、一夜』製作委員会