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鈴村健一・梶裕貴が感じた理想「リアルから目を背けないエンターテインメントから社会を覗いてほしい」

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インタビュー

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左から鈴村健一、梶裕貴 撮影:友野雄

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『銀河英雄伝説 Die Neue These』のフォースシーズンである「策謀」の上映がスタートする。上映は第一章が2022年9月30日に、第二章が10月28日、第三章が11月25日に開始する予定となっている。
田中芳樹による原作小説『銀河英雄伝説』は1982年に発刊された、本伝10巻、外伝5巻の長編小説。フォースシーズンに入り、銀河帝国と自由惑星同盟の間の勢力バランスが変化する中、第三の勢力・フェザーンが動き出す。
今回は自由惑星同盟軍のヤン役・鈴村健一さんと、ヤンの被保護者・ユリアン役の梶裕貴さんに、今シーズンの見どころと、作中でも強い絆で結ばれている二人の関係について聞いた。

エンタメを通して社会を覗ける作品

――脚本を読まれての感想を教えてください。

鈴村健一(以下、鈴村) いよいよ、物語が複雑化してきたというか。

梶裕貴(以下、梶) そうですね。

鈴村 今まで、同盟は同盟、帝国は帝国で描かれていましたが、今作から第三の勢力であるフェザーンもしっかりと描かれるようになります。フェザーンを介しての思惑や、その様子を俯瞰して見ているヤンたちが、自分たちもいずれ巻き込まれていくんだろうな、と考えているのが分かりますよね。銀英伝の本懐が来たな、という感じがします。

 それぞれの正義や平和のために戦うのは当たり前のこととして……ヤンほどの人物になってくると、軍を率いる立場にありながらも「自分たち自由惑星同盟の思想が果たして、すべての人類にとって確実に正しいと言いきれるのだろうか?」というような発想に至ってくるわけです。一概に、何が良くて何が悪いのか結論は出せない、というところが、哀しいかな現実とリンクしている点ですよね。原作としては、もう数十年前からこの世に存在している偉大なタイトルなわけですけれど……その物語が今も変わらず、僕らに強烈なリアリティをもって色々な感情を沸き起こさせてくるというのは、あらためて『銀英伝』が歴史に残る傑作なんだな、と感じざるを得ません。

――今の時代に、この銀河英雄伝の新シリーズが制作されることに、意味を感じられていますか?

この国の今を生きる若者たちにとって、戦争というノンフィクションは、どこか遠い世界の話だと感じてしまいがちかもしれませんが、実際に、常に戦争は起きているわけで。しかも、それが少しずつ身近になってきてしまっている現実もあります。だからなのか……それまで争いとは大きく関係なかったはずのフェザーンの人たちが、こうして戦争に巻き込まれていってしまうという展開が、僕にはどうしても他人事ではないように思えて。
それぞれが誰かの幸せを守ろうとしているだけのはずなんですが、そこに様々な思惑が絡んでくることで、最終的に、どうしても誰かが悲しい思いをしてしまう。不甲斐ない話ですが、実に人間らしくもありますよね。
そんな状況下にあって、描かれているほとんどの登場人物たちの信念や在り方というのは、それぞれ形は違いますけれど、本当に立派でかっこいいなと思います。

鈴村 皮肉なものだな、と思いますけどね。
長い年月、社会の中でもどんな政治形態がいいのか考え続けられる中で、完璧な考え方がないんだな、というのはみんなわかってると思います。でも、理想はやっぱり存在しているんですよね。特にエンターテインメントはその理想をどう描くかに向き合ってきたと思います。

――どういったところで感じられるのでしょうか。

鈴村 エンターテイメントにまでリアルを持ち込まないでほしい、十分日常がリアルだから、と言っている人が多いイメージですね。実際に、そういった作品が増えていると思いますが、銀英伝はリアルから目を背けず、それでいて長年愛されているのがいろんな意味で皮肉というか。今のエンターテイメントの潮流から見ると、銀英伝は逆に異端になっていると思うと、不思議な感じがするんです。時代が変わっていく中で、たくさんの人が支持してくださっている作品の立ち位置が、微妙に変わってきていることを感じます。こういう作品って不変的なものだと思うんですけど、80年代に書かれた物語から、今の社会があまり変わっていないことが如実に分かるという部分は、何度も言いますけど、やっぱり皮肉ですね。

――確かに、今観ても、違和感がない、むしろ身近に感じる部分があります。

鈴村 世の中でこういうことを変えたい、変わるべきだ、と思っている人はたくさんいると思うんですけど、自分たちで行動しづらい時代でもあると思います。 銀英伝のキャラクターたちも、そういうふうに行動できずにいることを、「それでいいんだよ」と言ってくれているようでもあるし、「行動できる人はするべきだ」って言っているようでもあるし、いろんな捉え方ができるように作られていますよね。
別に説教臭く見てほしくはないんですけど、エンタメかつ、教科書的なところがあるんですよね。本物の教科書にはこういう部分ってないから、すごく意義があるような気がしています。エンターテインメントを通して社会を覗けるということで言うと、とてもすごい作品だな、と今回のシリーズは特に感じますね。

今までとは異なるヤンの描き方

――さまざまな思惑が交錯し、どちらかというと、殺伐としている中で、ヤンとユリアンのシーンはほっこりとするものがあるように思います。

 ヤンとユリアンはお互いにとって、あらためて、とても大きな存在だったんだなと。月並みな言葉にはなってしまいますけれど、きっと"離れてみて分かったこと"なんでしょうね。 一番印象的だったのは、旅立っていくユリアンに対してヤンが声をかけてくれるシーン。2人の関係性を具体的な言葉で表すのは難しいんですけれど……間違いなく、お互いにとってかけがえのない、唯一無二の存在だということは言い切れるかと。

――ユリアンが軍人になるのをずっと反対していたヤンが。

 いや、今だって反対という立場ではあると思います。それでもきっと、ユリアンのこれまでの努力や活躍をいろいろと鑑みて、最終的に送り出してくれたんでしょう。辛い決断だったと思います。ユリアンを演じる僕からしても、複雑な思いがあるくらいですから。けれど、彼のある種の"大人として旅立ち"を認めてもらえたんだろうなと思うと、どこか誇らしくもありますね。 その上で……ユリアン側もヤンの私生活を心配している、という点が、実に2人らしいバランスだなと(笑)。

鈴村 成長していくユリアンに対して、ヤンはある種、完成されている人、だったんですが、このシーズンに関しては、ヤンも成長する話なんだな、ということを感じました。
ユリアンはヤンの実子ではないんですけど、親として成長する姿が描かれているんだな、と。ヤンはいろんなことを俯瞰して見ていますが、ひとりの人がどのように成長して、それにどのように接するか、ということを自分ではまだ分かっていなかったんですよね。

――軍人としてではなく、親としてのヤンが描かれているんですね。

鈴村 自分の理想はこうあってほしい、でも本人の意思も尊重してあげたい、ってきっと世界中の親が悩むことです。それについて、ヤンも人並みに悩み、彼らしい結論として子を尊重する、ということにたどり着いたんだなあ、と。
僕も親になって、自分の子どもが今後どうなっていくか、すごく考えてるんですよ。だから、ヤンについては勝手に「わかるわ~!」と思いました。

子どもにはやりたいことをやって欲しい。でも、何を言い出すかわからない。じゃあ、どんなことを親としてやってあげられるんだろう。意外とやってあげられること少ないんじゃないか。何か先回りしてやってあげることは、それは子を尊重することとはまた違うんじゃないか……というようなことを、ぐるぐる思うんですよね。

今回は、ヤンがユリアンの成長を認めてあげたいって気持ちと、自分がいるような世界に入って欲しくない、ということで一気に葛藤した。その上で、ユリアンが旅立って行く話は、ヤンにとっては急展開なんだな、と。いろんなことを急に整理しなきゃいけなくて、その中でヤンもいろんな成長をしたんだろうな、と思いました。
作品では、わりとユリアンが旅立っていくということに力点が置かれているように僕は見えるんです。でも、ヤンを演じるという観点では、彼の成長や決断が実はすごく難しいだろうな、と。そう思いつつも、そんなヤンも微笑ましくも思いましたし、本当の意味でほっこりした気がします。

さまざまな視点から楽しむことができる

――最後にあらためてこの作品の見どころをお願いします。

 フェザーンという大きな勢力が加わることによって、ますます物語の幅が広がっていきます。とはいえ、その運命の歯車を動かしているのは国家ではなく、あくまでひとりひとりのキャラクター。そこに唯一無二の人生が描かれているからこそ、誰もが共感できるドラマが生まれているんだと思います。それぞれが誇りを持って生きている姿に、シンプルに心動かされるのではないでしょうか。 これまでのシーズンを振り返っていただきつつ、ぜひ本作を映画館でご覧いただけたら嬉しいです。よろしくお願いします!

鈴村 銀英伝の幕開けのような、いよいよカードが全部揃った状態で、その人たちがどう動くか。そういうポリティカルフィクションとしての俯瞰したマクロな目線で見ていくことの面白さは、もうこれぞ銀英伝の魅力を堪能できる部分だと思うんですよね。

もう一つは、そこに個の視点が存在して、ヤンの視点で観るっていうのも面白いし、ラインハルトの視点で見ることだってできる。それぞれの思惑に焦点を置いて見ていくと、すごく日常が見えてくるんですよ。特に自由惑星同盟は生活感ありがちなんですけど(笑)。

でも帝国側もそういう部分は描かれていて、彼らがどういう暮らしをしているのか、どんな考えを持って生きているのかとか、そういう部分も味わえる点が今回は特に面白い部分だと思います。 マクロとミクロの視点、どちらも楽しめるので、1回で多分しゃぶり尽くせない、何回も見ることができる作品です。楽しんでいただきたいな、と思います。

取材・文:ふくだりょうこ 撮影:友野雄

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