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銀杏BOYZ 特別公演『君と僕だけが知らない宇宙へ』オリックス劇場ライブレポート「目の前でロックンロールが駆け抜けていく」

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銀杏BOYZ特別公演「君と僕だけが知らない宇宙へ」9月28日(水) 大阪・オリックス劇場 Photo:村井香

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凄すぎて打ちのめされたライブであった。食らい過ぎて、たかが最大140文字のTwitterでさえも何も書けない、いや書きたくないの方が近いのかも知れない。変に文字にすると安っぽく陳腐になってしまう。自分の頭と心にだけ留めておきたいみたいな。同じくライブが凄すぎて打ちのめされた若者たちと傷をなめ合う様に、どう凄すぎて、どう打ちのめされたかを、ただただ語り合った。これを今から、どの様にライブレポートに書いたら良いかも、よくわからない。でも、観た人が大興奮を想い返したり、観れなかった人が大興奮を次こそは味わいたいと、そう少しでも感じてくれたらうれしい。

元々の編集部からの依頼が「ライブ内容を忠実にレポートするというよりは、鈴木さんの主観で書いていただく方がおもしろいかなと思っています」なわけで、だから今の私の文章も間違ってはいないだろう。てなわけで、2022年9月28日オリックス劇場で開催された銀杏BOYZ 特別公演『君と僕だけが知らない宇宙へ』について、何とか頑張って綴っていきたい。

開演時間になり、場内は暗転されて、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」が男女の声によって朗読される。そして、途中から演劇などでよく使われる紗幕と呼ばれる薄い絹の幕に日常風景の映像が映し出される。敢えて演劇などでよく使われると書いたが、銀杏の、いや峯田和伸のいわゆる構成・演出的な魅せ方は、どこか普通のバンドのライブとは違う。安易に演劇的要素とか書きたくはないが、他のバンドがやっていない事をするし、とにかくドキドキワクワクさせてくれる、この後どうなるのだろうって。「今晩は ジョバンニは叫びました」という朗読の箇所で、紗幕に銀杏BOYZ 特別公演『君と僕だけが知らない宇宙へ』とタイトルが映し出された。そのきっかけの様なタイミングが、これまたたまらない。ライブ内容を忠実にレポートするよりはと編集部が注釈を入れてきたのは、既に東京公演が行われて、そのライブレポートも上がってきているからというのもあるだろう。しかし、同じ流れでも、その日によってまったく違うものになったりする。それがライブの、生身の表現の良さだ。

峯田がひとり登場して、椅子に座り、アコースティックギターで「君が泣いてる夢を見たよ」と歌い出した瞬間の声に度肝を抜かれた。声が出てるとか声がデカいとか、そんなレベルの話ではなくて、その生々しい声が凄すぎた……。どうなったら人間の喉から、こんなバケモノみたいな凄みしかない唸りみたいな声が出るのだろうか。奇しくも峯田は、その後のMCで前方の観客に対して「後ろを観て下さいよ。見世物小屋みたいな感じで観てるわけですよ」と後方の観客の説明をしていたが、自分も2階の最前列で、その凄すぎる見世物小屋を観ているのだなと変に納得すらしてしまった。

2曲目の途中で山本幹宗(Gt / sunsite、ex. The Cigavettes)・加藤綾太(Gt / THE 2)・藤原寛(Ba / AL)・岡山健二(Ds / classicus)というメンバーが入ってきて、弾き語りの演奏からバンドの演奏に入るというある意味クラシカルな魅せ方なのだが、それでもドラムがドーンと入った瞬間に異様な高揚感に襲われる。それもメンバー全員座っての演奏なのに、このバンド感というのはとてつもない。「NO FUTURE NO CRY」と全員で歌うのは、もうTHEバンドな感じで、あぁ~ロックのライブを観ているなと心から想えた。この御時世だから、観る側は何も声を発せないのだが、こちらも何だか歌っている気分になって満足してしまう。

加藤綾太(Gt / THE 2)
藤原寛(Ba / AL)

今から25年前、19歳の時、千葉のひとり暮らしのアパートで出来た曲であり、深夜2時から明け方5時まで、その曲が出来た喜びをギターにぶつけていたと話す。隣の住人から壁をドンドン叩かれてもお構いなしで、その上、曲が「僕を追いかけてくる。俺を歌ってくれ、俺を歌ってくれ」と語る。その曲は「YOU&I VS.THE WORLD」だったのだが、この日、印象的だったのは、後程も書くが、峯田が自分と自分の曲との関係性を語った事。それは音楽との関係性でもあり、バンドとの関係性でもある。

山本幹宗(Gt / sunsite、ex. The Cigavettes)

「バンドを二回破滅に追い込んでますし、でも音楽を辞める事はしないでズルズルと別れるのが面倒臭いカップルや夫婦みたいで。自分にとってバンドは愛しているだけでなく、惰性ではあるけど、歌いたい欲望がある」

まるでインタビューで語られるような芯を捉えた発言が聴けたのだが、その言葉には重みがあった。峯田が音楽を、バンドを始めて25年なわけだが、本人も言っていたが、別に自分から25周年みたいな銘打ちもしないし、25周年ベストアルバムも性に合わないし、ダサいとまで言い切っていた。本当にその通りなわけだが、それでも25年もの長い間、ひとつの事を惰性もある中、やり続けてきた事は並大抵の事ではない。集大成とか奇跡とか伝説とか安易にまとめられるものでもなく、それが誠実な人生というか。生きてりゃ色々ある中で25年も峯田が音楽をバンドをやり続けているのは、我々聴き手にとっては喜びであり救いでもある、こっちの勝手な話ではあるのだが。こんな厄介な御時世だからこそ、より聴きたくて聴きたくて仕方ないという熱情は、5曲目の「I DON'T WANNA DIE FOREVER」で、これまで我慢していた熱情を一気に放出するかの様に、観客が一斉に立ち出した時にわかりやすく感じた。そりゃ、「おっぺけぺー」なんて峯田に言われたら、心の中では「おしべとめしべが!」と自然に叫んでしまうし、野生の血が騒ぐってもんだ。峯田自身も座って楽しみたい人は座って楽しめばいいし、立って楽しみたい人は立って楽しめばいいしと言っていたみたいに、ひとりひとりが存分に楽しんだらいいのだから。立つ時に後ろの座ってる人に「ごめんね」みたいのはいらないと言っていたのも、何だか峯田らしくて良かった。人に迷惑をかける必要はないが、必要以上に遠慮する必要もない。

「声出さなくても聴こえっから。感じるのよ、さっきもあった」

「1曲1曲の友達みたいなあいつらがみなさんに跳ね返って、魂みたいのが渦巻いて」

私は熱情の野生の血といった書き方をしたが、目に見えない何かが明らかに、そこにはあった。これぞライブであるし、こういうのが生まれなかったら、せっかく生身のものを観に来た甲斐もない。

「いっぱい曲はあるんですけど、子供であったり、セフレや浮気相手だったり、本命というか、ひとりひとり性格も違うし。そこから何人かを選んできたけど、どうしても歌えと言うし、悪いやつだし、臭いしという曲があって」

先程も書いたが、自分と曲との関係性を、この様に本人の口から聴けるのは新鮮というか貴重な気がした。そして、いなくなった友達たちとしてフジファブリック志村正彦やイノマー、またミチロウさん、清志郎さんの名前を出して、「向こうまで聴こえて下さいという想いで歌います」と「漂流教室」が歌われる。峯田と同い年なだけに、特に最近実感するが、約45年も生きていれば、色々な別れがある。それらは決して良いものではないが、その悲しみたちを経験する事で、歌は強く更新されていく。スモッグの煙やライトの光は何か神々しさすら感じたし、観客が拳をあげているのを観て、そうロックは、ロックンロールは拳なんだなよなってうれしかった。

10曲目あたりからメンバーも立って演奏し始めて、いよいよ熱狂的になっていくが、BO GUMBOSのDr.kyOnがスペシャルゲストとして鍵盤で参加した「東京」は、この日個人的なクライマックスシーンのひとつであった。Dr.kyOnが弾き出した瞬間の、あのかっこよさは言葉になんか到底できない。かっこよすぎて思わず笑うしかないし、バンドが化学反応を起こす瞬間が紛れもなく観れた。加藤のギターがギュイ~ンと鳴るだけで、何だか泣けてきてしまう。泣きのギターで泣かされるなんて、わけわからない事を言っているが、何だかわけわからないけど感情がグッチャグッチャにされるのが、きっとロックなんだろう。

Dr.kyOn(Key / ex. BO GUMBOS)

13曲を終えたところで、紗幕が再び下りる。それは第一幕の終わりを告げている。紗幕には峯田の顔がアップで映り、「二回戦」が流れる中、ライブ映像やオフショットが流れる。明け方らしき浅草の朝を歩く峯田の穏やかな映像が印象的だったが、打って変わって、この日一番の轟音が鳴り響き、紗幕が上がり、いよいよ第二幕が始まる。「若者たち」では、山本と加藤のギターがかき鳴らされ、途中で山本のギターが鳴らなくなるが、そんなリアルな場面が観れたのも大興奮でしかなかったし、後ろのスクリーンには今現在のライブ映像が映し出されている。遠くの人にもわかりやすく見える様にというタイプの今現在のライブ映像というよりは、よりダイナミックに食らわす為の今現在のライブ映像。もうとんでもなく凄い迫力…。もはや血沸き肉躍るしかない。

続く「駆け抜けて性春」も暴動に巻き込まれたみたいな気分に陥る。観客は勿論縦ノリであり、拳が突き上がりまくる。YUKIの歌唱部分は峯田が凄い迫力で歌うが、どこかYUKIの声が聴こえる様な気がしたのも不思議だった。もう自分の脳内で自動再生が出来る様になっていたのか。目の前にあるものをすべてなぎ倒す衝動を第二幕は体感が出来た。

「ドラムの岡山健二君が歌います。聴いてください」

そういって「骨」が岡山によって歌われる。岡山が自身のバンドではボーカルを務めるのも知っているし、素敵な歌を歌うのも知っている。それでも銀杏では峯田が歌うのが当たり前という先入観があるので、最初は意外にしか思わなかったが、歌い出した途端、そんな感情は消えてなくなった。アカペラで汗だくでスティックを握りながら、峯田の顔を観ながら、一語一語を丁寧に「抱きしめたい。」と歌う姿を眺めていたら、何だか泣けてしまった…。何でだろう??と思うも、加藤のギターのギュイ~ンで泣けたのも、そうだったが、理由なんてないんだろう。でも、この日、いつも以上に感じたのは、メンバー全員が物凄く弾けて伸び伸びしていたという事。あくまでサポートメンバーではあるのだが、もう完全にバンドなんだなって。峯田のバンドであり、峯田の歌なのに、峯田の元を離れて、岡山の歌になっているし、僕らみんなの歌にもなっている。目に涙をいっぱい浮かべながら、そんな事を勝手にひとり考えながら聴いていた。

岡山健二(Ds / classicus)

「次に大阪来るときは、気持ち良く歌える言葉、気持ち良く歌えるメロディーを引きずり降ろして、『ロックの神様~!』と言って新曲を作って、お逢いできたら光栄です」

自分と曲との関係性…、生みの苦しみ…、でも、どんな想いで峯田が曲を生んでいくかを知れたのは大きかった。だからこそ、僕らも峯田の歌をしっかりと受け止めたい。峯田がロックの神様に哀願してまで曲を生み出すのだから、大袈裟かも知れないけど、僕らも本気で受け止めないといけない。

Dr.kyOnの鍵盤が“ドーン”という音で静寂をぶっ壊して、「光」が鳴らされる。もう15年も前の曲で10分以上もあるのに、一切集中力が切れる事なく、ずっと胸を絞めつけられる…。魂の叫びってものが本当にあるのならば、あれこそが魂の叫びだろう。そこからの「GOD SAVE THE わーるど」の心が開けていく浄化される感じも本当に気持ち良かった。周りを見渡したり、たまにスクリーンに映ったり、その時の観客の顔が本当に本当に良い顔をしていた。みんな今日来て良かったなと心から想っている顔だった。

ラストナンバー「僕たちは世界を変えることができない」。峯田が両手でポーズを取ったり、お茶目な表情で歌う。何よりも「僕たちは世界を変えられない」とメンバー全員で合唱みたいに歌うのが素敵すぎた。今の世界はどうしようもない事も多いんだけど、朗らか顔で峯田を始めとしてバンドが、そう歌う姿がとんでもなく素敵すぎた。僕たちは世界を変えることができないとしても、また明日から生きようって、珍しくも前向きにというか、でも生きていたら、また銀杏BOYZの、峯田和伸の歌が聴けるのだから、素敵じゃないか。こうして、全24曲の本編が幕を閉じた。

アンコール。座っていた観客が一気に立ち上がり、その椅子の音が大きく聴こえて、そんな何気ない光景からもエネルギーの塊を感じる。いきなり「今 目と目が合った その瞬間から」と峯田ががなる様に歌い、演奏がガーンと入る。これぞバンドだね!と楽しすぎてすべてがどうでもよくなる。それこそがライブなわけで、僕たちの目の前でロックンロールが駆け抜けていく。山本と加藤がぶつかり合ってギターをかき鳴らし、峯田はギターをバットみたいにフルスイングしてマイクスタンドをぶっ倒している。破壊的なのに、それはそれは、とてもピースフルでスマイリーで美しくて……。峯田が袖にはけた後も、4人は音を鳴らし続けて、山本、藤原、加藤が岡山の方を向きながら、少し膨らんだ正方形みたいな型で、最後の音を決める。全員が去った後も残響が会場を包み込んでいる。

スクリーンには今回のライブヴィジュアルが大きく映し出されて、BGMとしてTHE BLUE HEARTS「夜の盗賊団」が流れている。今夜たくさん秘密を分け合ったなんて、ロマンチックな気分になりながらも、熱狂と興奮でこんがらがった脳と心を何とか落ち着かせようとする。凄すぎて打ちのめされたライブをどこまで綴る事が出来たかはまったくもって不明だが、ライブ翌日の今、物凄く爽快な気分である事に間違いはない。だから、良いものを観れたんである。それ以上でもそれ以下でもない。そして、こんな気分になれて本当に幸せである。

銀杏BOYZ…、また逢う日まで、また逢えたらいいな。

Text:鈴木淳史 Photo:村井香

ぴあアプリでは銀杏BOYZのアプリ限定ライブ写真をご覧いただけます。ぴあアプリをダウンロードすると、この記事内に掲載されています。

<公演情報>
銀杏BOYZ特別公演「君と僕だけが知らない宇宙へ」

9月28日(水) オリックス劇場

セットリスト

1. 人間(弾き語り)
2. NO FUTURE NO CRY
3. YOU & I VS.THE WORLD
4. 夢で逢えたら
5. I DON'T WANNA DIE FOREVER
6. トラッシュ
7. 円光
8. SEXTEEN
9. 漂流教室
10. 新訳 銀河鉄道の夜
11. 東京
12. ぽあだむ
13. 夜王子と月の姫
14. 若者たち
15. 駆け抜けて性春
16. 大人全滅
17. 骨
18. 恋は永遠
19. エンジェルベイビー
20. 光
21. GOD SAVE THE わーるど
22. 金輪際
23. BABY BABY
24. 僕たちは世界を変えることができない

EC
1. 少年少女

<ライブ情報>
ぴあ・tvk 50th Anniversary「STAY ROCK!2022」

10月30日(日) ぴあアリーナMM
開場13:30 / 開演14:30

出演:銀杏BOYZ / Ken Yokoyama / ザ・クロマニヨンズ / ハルカミライ / 空気階段

料金:全席指定8,800円(税込)
チケット情報はこちら:
https://w.pia.jp/t/stayrock-2022/

イベントオフィシャルサイト:
https://stayrock.jp/

関連リンク

ウェブサイト:
https://gingnangboyz.com/

Twitter:
https://twitter.com/GingNangBoyz_MV

YouTube:
https://www.youtube.com/GINGNANGBOYZofficial

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