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東京公演間もなく開幕! 安田章大の○○気質がキャラに乗る、『閃光ばなし』黒木華×片桐仁インタビュー

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左から、片桐仁、黒木華

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9月26日に京都・ロームシアターにて開幕、10月8日より東京公演がスタートする安田章大(関ジャニ∞)主演の『閃光ばなし』。

脚本・演出を福原充則が手がける本作は、不条理の中で正義を模索する兄妹の物語。終戦後、高度成長期の日本を舞台に、あと先考えず権力へ立ち向かう人々の姿が描かれる。安田は、父親から受け継いだ小さな自転車屋を営む兄・佐竹是政役。その無鉄砲な妹・佐竹政子にキャスティングされたのは、福原組初参加、安田とは初共演となる黒木だ。片桐は、政子の夫・柳英起に扮する。

自分たちの暮らす街を分断する巨大な用水路を何とかしようと、渡し船代わりのバイクタクシー会社を始めた兄妹。そんな彼らの前に、自ら率いるバス会社の利用客を増やそうとする会長(佐藤B作)、バス会社に利益が流れる政治活動に熱心な区の議員(みのすけ)らが立ちはだかって──。

共演の黒木華、片桐仁が現在進行形の想いを語った。

安田くんの懐の深さ、面倒見のよさが是政のキャラに乗っている

──台本を拝読して、「プラスでもマイナスでもいい、ゼロから離れて生きていたい」という公演キャッチコピーは政子のセリフだと知りました。黒木さんはそういうセリフを発する政子の人物像を、どのように受け止めていらっしゃいますか?

黒木 『閃光ばなし』に登場する女性はみんな強いんですよね。その中でも、政子はより前のめりに生きている人だと思っています。悲しいことやツラいことを飲み込んで、そこから必死に離れようとしている。そう簡単に離れられないのはわかっているけれど、振り払いたい。バイクタクシーもそうですよね。「みんながやらないなら、じゃあ私が兄ちゃんとひと肌脱ぐよ」ってタイプ。破茶滅茶な人だけど、裏にはそういう感情があるんじゃないかな。

片桐 無鉄砲で乱暴だけど、高潔さみたいなものも感じるよね。ジャンヌ・ダルクみたい。

黒木 安田さん演じる兄の是政と「対」になっている側面があるんですよね。政子にないものを是政が持っていて、是政にないものを政子が持っている……みたいな。兄妹ってことに意味があると思って演じています。

『閃光ばなし』メインビジュアル

──安田さんの兄貴ぶりはいかがですか? 公演発表時のコメントで「僕自身、嘘で固められた時間と時代をただやり過ごすより、『こいつ、痛いな』と思われてもいいから馬鹿正直に生きたい」とおっしゃっていたので、おそらくご自身と是政を重ねて役づくりをされるのかな、と感じたのですが。

片桐 安田くんの懐の深さや面倒見のよさ、リーダー気質みたいなものが、是政のキャラクターに乗っている気がする。

黒木 たしかに。終盤に「僕はみんなを背負って別次元へ連れて行ってやるよ」みたいなシーンがあるんですが、まさにそれを体現しているな、と思いました。お客さんも一緒にいま抱えている問題の向こう側へ連れて行ってもらえるんじゃないか、と思わせてくれるようなお芝居をされるんですよね。

片桐 でもさ、政子とふたりっきりのシーンは思いっきり「小さい」よね(笑)。妹の前でだけ自分の素を出す、みたいな。そのギャップがおもしろい。大勢の前と身内の前で取る態度に違いがありすぎる!

黒木 たしかに。トーンが違いますよね。

片桐 とにかく自信がなかったり、気を使いすぎて変な空気になっちゃったり。妹のこと、好きにもほどがあるでしょ? シスコンが過ぎるのよ、是政は(笑)

是政はスーパーマン、政子はジャンヌ・ダルク

──先ほど、黒木さんがおっしゃっていた「政子にないものを是政が持っていて、是政にないものを政子が持っている」をもっと具体的にするなら?

片桐 「この街に住む人が不満に感じている交通の利便性は、自分がなんとかする!」みたいなリーダーシップや当事者意識は、政子にはないよね。そこまで背負っていない。

黒木 政子もそう思ってはいるんだけど、もう少し現実的ですよね。ちょっと冷めているといいますか、「助けられない人もいるでしょ」と突き放すところがある。ものごとを俯瞰的にとらえる癖がありますよね。

──でも是政には、そういう客観性がほとんどないんですね。

黒木 そうなんですよね。まっすぐバカ正直に突っ走って、斜に構える妹のことも「そういうところも含めてお前を全肯定するよ」ってタイプ。それってすごいパワーじゃないですか。並大抵の人にはできないと思うんです。さっき片桐さんから「政子はジャンヌ・ダルク」と言っていただきましたが、是政は鋼のメンタルのスーパーマンだなって。

──片桐さん演じる柳も、兄と一緒に突き進む政子ジャンヌを大切に想っている描写が見受けられます。どんな人物と考えて演じていらっしゃいますか?

片桐 最近になって気付いたんですけど、政子ってまだ「佐竹」のままで「柳」の姓を名乗っていないんですよね。だから一緒に暮らしてはいるけど入籍していないんじゃないかな。事実婚なのかもしれないし、戦後の混乱で戸籍自体がないのかもしれないけど。政子を自分のものにしたい気持ちはありながらも、手が出せない……というか強く出られないのは、是政が自分のできないリーダーを買って出てくれているからなのかな、と。彼に対する嫉妬と尊敬の気持ちがないまぜになっているんじゃないかと思いました。他力本願なんです、柳は。

──是政にも言われていますよね。「毎日、愚痴や文句は言うくせに、何も変えようとしないのは、意外と今の暮らしと自分が好きなんですね」って。

片桐 そうそう。「こんな現状イヤだ」と思いつつ、「これはこれで」って楽しめちゃう人なんですよね。とっても日本人的というか。現状に不満はあるけど、それを変えるほどのエネルギーはない。あと矢面に立ちたくないし、責任を取りたくない。……僕もそういうとこあるんでね。旅行の計画とか絶対にしたくないくせに、あとで妻に文句言うんだよ。

黒木 え、やだ!(笑)

片桐 でも、政子は「私は私が嫌いだから、一瞬でもこのままでいるなんて我慢がならない」って突き進むでしょう? ジャンヌ・ダルク、高潔でまぶしいんだよね。是政を含めた環境を歯がゆいとは思いつつも「ま、こういう関係だから」って受け入れて、なぁなぁにしている。波風を立てようとしないのって、とても日本人っぽいですよね。結果、プラスでもマイナスでもない「ゼロこそよし」とする人なんだと思います。プラスでもマイナスでもいいから、とにかく「ゼロから離れて生きていたい」政子とは正反対なんですよね。

──福原さんの当て書きなんでしょうか?

片桐 当て書きだと思いますね(笑)。週1でやっているラジオを聞いてくださっているので、僕のこずるい面もご存知でしょうし。自分を棚に上げる能力が卓越しているので、そういうところも脚本に反映されているんじゃないかな(笑)。

福原さんってロマンチストなのかな

──稽古を経て、おふたりは是政・政子兄妹の関係性をどう形容されますか?

片桐 他人の目を気にしない兄妹だよね。

黒木 最近は何でもジャンル分けしようとしますが、いま目の前にいる人がどのジャンルに該当するかなんて関係ないと思うんですよね。その人はその人だし、生きているわけですから。『閃光ばなし』に登場する人たちも同じです。役名は「空き巣」「売春婦」「偽警官」となっていますが、どん詰まりの吹き溜まりに生きている人たちは肩書きや生業、暮らし向きを見て人となりを評価する人はいないんです。

──そうですよね。終盤にも「立ちんぼのヨシコです! 偽警官の山下です! 空き巣の竜史です!」と名前を挙げながら、「こんな顔してるんだよ、俺達は」と権力者に呼びかける是政のセリフがありますね。

片桐 はいはい、ありましたね。

──あのシーン、胸に迫りました。そういう脚本を書く福原さんの魅力を、おふたりはどのように感じていらっしゃいますか?

黒木 台本を読んで「ロマンチストな人なのかな」と感じました。用いる言葉もそうですし、音楽もお好きだし、セリフの語感をすごく大事にしていらっしゃる。演出も細やかで「ここは詰めてください」、「もうちょっとたっぷりやっていいですよ」などとわかりやすく指示してくださいます。

片桐 今回の『閃光ばなし』も、「昭和三部作」シリーズの最終作なんでしょう? 一億総中流になる前の、みんなが貧乏だった時代。そんな昭和30年代だからこそキラキラ輝くものに憧れて、安田くんとタッグを組んで芝居をつくっていたっていうんだから……やっぱりロマンチストだよ。あとセット壊すの好きだよね、福原さんって(笑)。現状打破する勢いや熱みたいなものを感じられるのが、福原作品の魅力だと思うな。

──本作にはアクションもありますしね。黒木さんは、安田さんと歌うシーンも。

黒木 そうなんです。舞台で歌うのは初めてだから緊張していて。

片桐 え、そうなの!? 全然そんな風に見えなかったよ。

黒木 政子が無鉄砲なんで(笑)

片桐 堂々としたもんですよ。

黒木 そういうときに安田さん、慣れていらっしゃるから「全然大丈夫やで」みたいな感じでドーンと大きく構えていてくださるんですよ。

──お芝居を一緒にしていて、安心して試行錯誤やチャレンジができるお相手なんですね。

黒木 私が何かやったら必ず返してくださるし、その状況を楽しんでくださるので心強いです。私は福原さんとご一緒するのが初めてなので、「大丈夫ですかね?」と不安を打ち明けたら……「まだ時間もあるし、自分の思う通りにやったらええんやで」と答えてくださって。

片桐 優しいね。さすが「昭和三部作」の座長を長いことやってるだけのことはある!

──黒木さんには「踊り」も待ち受けています。

片桐 踊りも得意だもんね? 高校演劇でやってたでしょ?

黒木 やってないです! なんでそんな適当なこと言うんですか!?(笑)

片桐 え? でも踊りやってたでしょ? 高校演劇で。

一同 (爆笑)

黒木 やってないです! なんですか、自分だけ楽しくなっちゃって(笑)

片桐 ダンスじゃなくて「踊り」だもんね。「そんな盆踊りある!?」って二度見するレベルの。

黒木 台本上は「右が東京音頭、左が炭坑節」と書いてありますが……蓋を開けてみたら、そのどちらでもないっていう(笑)

片桐 コンテンポラリー的な、ちょっと現代舞踊みたいな感じだよね。でもリズムは盆踊りなんです。

──これまで見たことのない黒木さんの姿が拝見できることを楽しみにしています。最後にお客さまにメッセージをお願いします。

黒木 ご覧になった方がパワーを受け取って帰っていただけるお芝居になっています。心配ごとは少しだけ脇に置いてご来場いただけたら、力を抜いて楽しんでもらえると思います。がんばります!

片桐 稽古場でみんなとコミュニケーションを図りながら毎日同じことを積み上げていくと、やがて結晶化するんですよね。それが演劇の魅力だし、他の芸術ジャンルにはないものだと思います。『閃光ばなし』をきっかけに「お芝居っていいな」と思っていただけたらうれしいです。

取材・文=岡山朋代

『閃光ばなし』チケット情報
https://w.pia.jp/t/senkoubanashi/

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