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前田公輝が振り返る『ちむどんどん』砂川智の恋「暴走でした、本当に(笑)」

インタビュー

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前田公輝 撮影:友野雄

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沖縄の海を見て、僕も自然体でいいんだって気持ちになれた

『ちむどんどん』、『HiGH&LOW THE WORST X』と話題作への出演が相次ぐ前田公輝。30代になった彼の今を切り取った2nd写真集『ちゅらたび』が10月5日に発売される。ロケ地は、朝ドラの舞台となった沖縄。ページをめくると、大切な人と大好きな土地を旅するような姿がおさめられている。

「沖縄はどこも本当に良かったですけど、意外とめちゃくちゃ良かったのが残波岬公園にある巨大シーサー。スタッフさんに『どこに行きたいですか』って聞かれたときに一発目に名前を挙げたのが、ここだったんですよ。本当、今にも動き出しそうで。スケジュールの関係で、ものの5分10分しかいられなかったんですけど、日本一大きなシーサーと相対せたのがめっちゃうれしかったです」

そう切り出すと、前田公輝は溢れる想いが止まらないかのように、沖縄愛を語ってくれた。

「あとはもう食がおいしすぎて。沖縄の野菜ってミネラルやビタミンが豊富なせいか、食べても全然喉が渇かないんです。瑞々しくて、歯ごたえもいいし、甘みもある。朝ドラに携わる前から沖縄料理は好きだったんですけど、現地で食べる本場の沖縄料理は衝撃でした」

もし沖縄を訪れることがあればぜひ食べてほしいとオススメするのが、ゆし豆腐ソーキそば。『ちむどんどん』で豆腐店の息子を演じた前田公輝らしいチョイスだ。

「ゆし豆腐はドラマの撮影を通して知ってたし、ソーキそばも大好きだったんですけど、その2つを合わせた料理があることは知らなくて。これがまたおいしいんですよ。そのまま食べてもおいしいし、コーレーグースという唐辛子を泡盛に漬け込んだ調味料を入れると、またうまいんです。あとは海ぶどうとかもずくといった海のものはやっぱり現地で食べた方がいいですね。それこそゴーヤが苦手な方っていると思いますけど、ぜひそんな人ほど現地で食べてほしい。苦味がちょっと薄くなっていて瑞々しいから食べやすいんです」

前田公輝のお喋りは軽快だ。まるで音符みたいに声が弾む。身振り手振りも大きくて。この感じを何と表現したらいいんだろうと言葉を探っていたら、「そうだ、生命力があるのだ、前田公輝には」と思い至る。そして、そんなこちらの胸中を見透かすように、前田公輝の口からも「生命力」という言葉がこぼれ出した。

「フクギ並木もすごかったなあ。東京では考えられないぐらい葉っぱが大きいんですよ。茂みから恐竜が出てきそうなぐらい生い茂っている木々を見ていると、やっぱり力をもらえますね。あの自然の生命力は、沖縄の魅力のひとつだと思います」

そう眩しそうに目を細めながら、前田公輝は自然の中で感じたある気づきについて話しはじめた。

「沖縄の海って毎日綺麗ではないんですよ。天候によって海の色も変わるんです。ピーカンの日は何層にも渡ってグラデーションが広がっているけど、曇り空のときはグラデーションが2色3色だけになる。それが、なんかいいなと思って。こんなに綺麗な沖縄の海にも、いろんな表情がある。空だって満天の星空もあれば、雲に覆われて何も見えない夜もある。自然だっていい日もあればそうじゃない日もあるんだから、僕も自然体でいいんだって気持ちになれました」

暢子にフラれたときは、視界が真っ黒だった

そんなふうに肩の力を抜くことができるようになったのは、彼がひとつ大きな山を乗り越えたからかもしれない。準備期間を含めれば1年もの間携わり続けた『ちむどんどん』。すっかり沖縄弁も体に染みついている。

「(沖縄のイントネーションで)でーじ身につきましたね。ずっとこのまま喋っていられるくらい本当喋れるんですけど、沖縄弁を喋れるようになったら、関西弁ができないことになって、それがちょっとネックというか。沖縄弁も関西弁も習得できたって思っていたのに、どっちかしか使えないってなると、なんかちょっともったいない気がするなとか思ったり(笑)」

「まさかやー」「あきさみよー」といったフレーズもすっかりおなじみに。「リハーサルのときに、まさかそんな演出だったんですかっていうときに、キャストのみんなで『まさかや~』ってギャグで言ったりしてます」と笑う。前田公輝は、よく笑う人だ。

そしてその笑顔が、演じた砂川智と重なる。智もよく笑う人だった。

「智は、苦しいことはあんまり人に見せない男。それこそ恋愛編でもだいぶ苦しかったと思うんですけど、それ以上に自分自身を信じていて。自分を信じて、有言実行できる力があるから、独立してもうまくいった。『ちむどんどん』の中でいちばん成長が見えるのが智なんじゃないかと思っています。ただし、恋愛以外は(笑)」

そう付け加えて、ちょっと気恥ずかしそうに、暴走気味だった智の片想いを振り返る。

「暴走でしたよ、本当に(笑)。周りが見えなくて、暢子は自分のことを好きだと過信して突っ走って。でも、暢子は何にも意識していない。和彦と愛ちゃんは付き合ってるから、まだ成立してるんですよ。僕だけステージが違う(笑)。4人でいるときも、僕1人だけ浮いてる芝居をしないといけなかったのは辛かったですね」

もしも智が友人だったとしたら、何とアドバイスをしましたか。そう尋ねると、「アイツ、言っても聞かないと思いますよ」とまるで無二の親友について語るように手を横に振る。

「言って聞くようなやつだったら、まず付き合ってもないのにプロポーズしない(笑)。僕だったらまず『付き合ってるのか?』『手はつないだのか?』って確認します。手もつないでないのにプロポーズするとか、どういう神経してるんだよってツッコみたいですけど。たぶん仕事がうまくいっていたのもちょっとあるかもしれないですね。これで仕事が停滞してたら、もうちょっと恋愛にも慎重になったかもしれないけど、順風満帆すぎたのがプロポーズするきっかけのひとつになった気がします」

智について語る口調は、少し呆れながら、でもいとしそうだ。困ったところもあるけど、まっすぐで優しい。前田公輝が演じた智は、そんな男だった。終盤では歌子との恋も描かれたが、やはり最大の見せ場となったのは海辺のプロポーズシーン。渾身のプロポーズを断られた智は「ダメなわけよ、暢子じゃないと」と言葉を絞り出す。そのとき、目に涙をいっぱいためながら、智はかすかに笑う。智は、辛いときほど笑う人だった。

「あのシーンは、本当は3日後くらいに撮る予定だったのが、その日の海が綺麗だったから急に撮ることになったんです。しかも、夕日が沈むまでには30〜40分しかなくて。台本4ページ分をその時間で一気に撮り切らなくちゃいけなかったのが大変でしたね」

人生のすべてだった暢子への恋心が砕ける場面。前田公輝は「僕の役者人生の中で5本の指が入るぐらい辛かった」と明かす。

「これからの人生で何か報われることがあるのかなって思うくらい、智にとって未来が閉ざされた瞬間。『うちは嫌』とか『ごめん』とかいちばん暢子から言われたくない言葉だったと思うんですよ。目の前であんなにも神々しく海が夕日に照らされているのに、アイツの視界は真っ黒だった。智みたいに8年以上も1人のことを想い続けた経験が僕にはなかったので、演じるには自分の中にある好きというボルテージを2倍3倍にしていくしかなくて。それはもう本当に想像でしかなかったんですけど、ありがたいことにうれしい言葉をいろんなところからいただけるシーンになったので、本当に良かったなと思います」

終わった恋を振り返るように前田公輝は、暢子に対する智の想いを代弁した。

「歌子に暢子のことが好きなんでしょって聞かれて、智は『ガサツでおてんばで食い意地張ってるし』って否定するんですけど、あれは全部裏返しなんじゃないかなって思ってるんですよ。ガサツっていうのは、今よりも女らしくいろよみたいな目線が強い時代で自分を持って輝いているという意味だし、おてんばなのは破天荒だけど天真爛漫で明るい証拠。そして何より幸せそうに食べてる暢子の姿が好きだった。そういう暢子を見ていると、智は貧しい家のこととか一瞬忘れられたんじゃないかなって。あの台詞に、智が暢子を好きになった理由がすべて詰まっている気がしました」

朝ドラを経て、アクがとれた感覚がある

朝ドラは、前田公輝の大きな夢だった。出演が決まったときからクランクインの日を心待ちにし、今まで培ってきたすべてをぶつけるつもりで撮影に臨んだ。

「よく喉に心臓があるとか言うじゃないですか。僕、撮影初日の日は、唇に心臓がありました(笑)。台詞がちゃんと言えるか心配になるぐらい頭が真っ白。何でこんなに自分の中で憧れを強くしたんだろうって。逆に自分の首を絞めてるだけじゃないかなって思いました」

「ゆし豆腐とかこんなでしたよ」と言って、ゆし豆腐の入った木箱を持つ手をブルブル震わせるようなジェスチャーをしておどけた。プレッシャーを乗り越え、やり遂げられた実感があるからこそ、テンパっていた頃の自分も笑い話に変えられる。

「それだけ憧れた場所だからこそ、乗り越えたあとにもらえる贈り物もすごくある。1年間、本当にいい時間を過ごさせてもらったなって。その人の生涯を若い頃から年をとったところまで描けるのは朝ドラならでは。他の作品ではなかなかできない経験をさせてもらいました」

そうしみじみと噛みしめる顔は、なんだかとてもすっきりしていた。沖縄の海を見て自然体でいいんだと思ったときも、きっとこんな顔をしていたんだろう。

「なんだろう。今はアクがとれたっていう感覚があるんですよね。自分に必要なものが見えてきたというか。もちろんもっとやれることを増やしたいという気持ちはあるんですけど。20代の頃、あれもこれもといろんなことに手を出して。それが今は自分のやるべきことに集中できているというか。整っているっていうのが近いかな。仕事に対してもプレッシャーを感じづらくなったし、全部に全力投球するんじゃなくて、ちゃんと力の配分ができるようになった。今、とっても心地いいんです」

俳優は、いろんな作品との出会いで変化していく。きっと前田公輝は大きな転換点を曲がり終えた後なのだろう。視界が変わり、進むべき道もクリアに見えている。だから、焦ったり迷ったりしない。

朝ドラという夢を現実にした前田公輝は、今、次なるチャプターへ進もうとしている。

取材・文:横川良明 撮影:友野雄
ヘアメイク:松田蓉子 スタイリング:千葉良(AVGVST)

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