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劇場公開から1年を経て復活上映中! 帰ってきた『くじらびと』、その理由を監督に聞く!

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手造りの舟とたった銛(もり)1本を手に、命懸けで巨大なマッコウクジラに挑む! 名著『白鯨』の世界のさらに上をいくようなラマファ(銛(もり)打ち)とクジラの命のやりとりを記録したドキュメンタリー映画『くじらびと』。昨年公開されると話題を集め、国内外の映画祭や映画賞でも受賞を重ねた本作が、その反響を受け、公開から1年を経た今、復活上映中だ。

今回、このような上映の場を設けたことについて石川梵監督はこう明かす。

「昨年、『くじらびと』が公開されたのは、新型コロナウィルスによる緊急事態宣言の真っただ中。観たくても観られない方が大勢いらっしゃった。この映画をクラウドファンディングで支援してくれた方々ですら、劇場に足を運ぶのに二の足を踏むような状況でした。

“行きたいんですけど、ちょっと状況が……”といった声が僕のところにも多く届いていたんですね。ですから、コロナの感染拡大が落ち着いたら、新たに上映の機会をもって、ひとりでも多くの人にこの作品を届けたい気持ちがありました。

そして、コロナによりまだまだ萎縮したり、閉塞感の感じられる社会に今現在もあると思います。その中で、大海原で鯨を追うロマンに満ちた世界に思いを馳せることで、気が晴れたり、前を向いてもらえるのではないかという思いもありました。

そういう僕の思いがようやく叶って実現したのが今回の復活上映です。こういう上映ができて非常にうれしく思っています」

インドネシア・ラマレラ村。ガスも水道もないこの村で400年にわたって続いてきた伝統のクジラ漁を、世界で初めて撮影した本作は、先ほど触れたように、国内はもとより海外でも受賞を重ねた。その中で、こんな声が多く寄せられたという。

「日本では日本映画批評家大賞のドキュメンタリー賞、JSC(日本映画撮影監督協会)賞、キネマ旬報文化映画2位などの賞をいただきました。海外でもグアム国際映画祭のドキュメンタリー賞、観客賞を始め数多くの賞をいただくことができて光栄に思っています。

寄せられた声といえば、一般の方々はだいたい見終わると“言葉がない”“すごいとしかいいようがない”といったような感じで。映像に圧倒されて、なかなかいい表す言葉が見つからない方が結構多かったですね。

個人的には“良かった”とか、“あそこが素晴らしい”とか簡単に言われたくはなかったので、僕としてはうれしい反応として受け止めています。

それから、日本映画批評家大賞ではこんなコメントをいただいたんです。

“本作からはまたドキュメンタリー作品の神髄というものを強烈に感じた。ナレーションや説明はほとんど入らない。雄弁かつ美しい映像と、そして“今そこに生きる”生身の人間の言葉で紡がれた『くじらびと』。作家の存在を極限まで排しつつ、逆説的に作品の核へと観客を導いていく。スクリーンには石川監督が伝えたかったであろう、生の本質が結晶となってきらきらと輝いてみえた”

このコメントに集約されていることは、正にこの映画の目標としていたことなので、この講評はとてもうれしかったです」

今回の上映ではゲストを迎えてのトークイベントを実施。ドキュメンタリー監督の岸田浩和、フォトジャーナリストの安田菜津紀、サバイバル登山家の服部文祥らその道のエキスパートと言える人物との対談が毎日予定されている。

「今回のゲストは私と同様に世界をフィールドに活躍されている、その分野に精通した方をお招きすることにしました。

鯨に跳ね飛ばされた経験をもつ水中写真家もいれば、1年365日山に籠って熊や猪、森の生態を追い続けている人もいる。サバイバル登山と称し、食糧を持たずに山で狩りをしながら登山する冒険家もいます。

全員に共通しているのは、誰もが命と真正面から向き合っていることと言っていい。

そういう方々にとって『くじらびと』の生き方はどのように映るのか、聞きたいですし、大自然とともに生きる“共生”という意味を、そうした語り合いから深めていくことができればと思っています」

なにやらここでしか聞けない話も飛び出しそうな、エキサイティングなトークイベントになりそうで期待が高まるが、最後に石川監督は今回の上映についてこう言葉を寄せる。

「『くじらびと』の映像の迫力とスケールは、劇場で観てこそ存分に堪能できると思っています。孤独に耐え、命をかけて鯨に挑む男たちの姿は江戸時代の勇魚獲りを彷彿させ、あなたの心をきっと鷲掴みにすることでしょう。

全編に流れる大自然と人間との美しい調和の世界は、ラマレラの海のように深く、啓示に富んでいる。おそらく最後となるであろうこの『くじらびと』の劇場上映を見逃さないでください。優れた音響設備と画質で観ることのできる東京都写真美術館に足をお運び願えれば幸いです」



取材・文:水上賢治



『くじらびと』
10月14日(金)まで東京都写真美術館1Fホールにて13時/15時20分 2回上映
(10月6日、11日休映)
15時20分回上映後にアフタートークイベントあり

(C)Bon Ishikawa

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